2010年11月03日(水)
「外交の罠」にはまらないためのインテリジェンスの重要性

 
 今回のロ大統領の国後島訪問に関して政府は、駐ロ大使を一時帰国させ事情を聴取する決定を行いました。この問題の重大性・深刻さを考えても当然のことだと考えます。

 事前に正しい情報を掴み明確なメッセージを発することが外交の基本です。しかし、政権が事前にロシア側から発せられる様々なメッセージに戦略的に対応できたのか政権を支える側からひいき目に見てもきちんとした総括が必要です。

 尖閣諸島に対する中国船事案についての対応は、政権の側にもあったと考えていますが、今回のロシア大統領の事案は、それ以前の対ロシア対応を司る外務官僚の劣化を懸念せざるをえません。

 この心配が杞憂に終わることを希望しますが
 「報道によるとロ大統領が国後島を訪問したようだが」などというコメントからしても理解できません。ユジノサハリンスクに領事館を置くことを決定したのは、2000年の始まりの頃でした。当時、私は末次一郎先生を先頭に日ロ賢人会議で北方領土返還を強くロシアに働きかけていました。その中でもこの決断はとても大事な決断でした。

 国後島に行くには、ユジノサハリンスクで小型機に乗り換えなければならないはずです。日本の領事館は、ロ大統領が政府専用機で当地に降り立つことなど気づいていなければなりません。外務官僚は国益を背負い日々を懸命に活動しています。優秀で志が高い人物に私も多く出会いました。

 しかし、今回のロシアの件では不信を拭えません。
 旧政権時代からの長い間の劣化を総括しなければならないとも考えています。それは、外務官僚に責任を押し付けることではありません。カウンター・インテリジェンスも含めて実効的な措置を十分とってこなかった政治の問題を総括しなければならないと考えます。


 ロ大統領の訪問はないと政府に言っていた一部の官僚の存在が伝わってきます。どうすれば、ここまで読み違うのでしょうか。外交官の情報収集能力を最大限にする努力を政治が怠れば、そのつけは国民に返ってきます。

 外交の罠にはまり国益を逸することほど深刻なことはありません。



 政治家には、「事を冷静に運び抗議などするべきではないなど」と言って保身を図るのかもしれません。きちんと総括して明日に備えることが重要です。