2010年03月07日(日)
人間の安全保障 自著「平和」より

 

 「人間は生存を脅かされたり、尊厳を冒されることなく、創造的な生活を営むべき存在である。」
2003年5月1日、国連人間の安全保障委員会の緒方貞子、アマルティア・セン両共同議長は、コフィ・
アナン国連事務総長に最終報告書を提出しました。
 
 まさに報告書が言うように「安全保障の課題が一層複雑化し多様な関係主体が新たな役割を担おう
とする中で、私たちはそのパラダイムそのものを再考する必要があります。安全保障の焦点は国家か
ら人々の安全保障へ、すなわち「人間の安全保障」へ拡大されなくてはなりません。

 人間の安全保障の基礎は全ての人に等しく与えられている自然権としての人権が基礎になっています。

 「あなたの不幸は私の不安」
となる複雑化した社会の中で、全ての人が貧困、困窮、飢餓、投獄、追放、あるいは読み書きや計算が出来ないことに関連して受ける冷遇を回避されなければなりません。

 世界では今でも多くの人たちがこれらの権利をおかされており、避けられるはずの命の危険を回避できず、避けられたはずの疾病にかかり、回復できるはずの疾病により苦しんでいます。より基本的な人権が保障されない社会は、法と正義による支配を忌避した社会です。テロと暴力による恐怖の奥底には、人間としての生存や尊厳を侵されることへの怒りがあります。

 提出された報告書において、以下のことが合意されたことが記されています。
1. 暴力を伴う紛争下にある人々を保護すること
2. 武器の拡散から人々を保護すること
3. 移動する人々の安全確保を進めること
4. 紛争後の状況下で人間の安全保障移行基金を設立すること
5. 極貧下の人々が恩恵を受けられる公正な貿易と市場を支援すること
6. 普遍的な生活最低限度基準を実現するための努力を行うこと
7. 基礎保健サービスの完全普及実現により高い優先度を与えること
8. 特許権に関する効率的かつ衡平な国際システムを構築すること
9. 基礎教育の完全普及により全ての人々の能力を強化すること

「個人が多様なアイデンティティを有し多様な集団に属する自由を尊重すると同時に、この地球に生きる人間としてのアイデンティティの必要性を明確にすること。」として、それぞれの多様性への尊重が宣言され、地球に生きる人間としての尊厳そのものがうたわれています。