2011年05月21日(土)
もう一つの光の道改革法案 ~光の道「規制改革」法案
私が総務大臣そして指示をした光の道3法案は、2015年までに全ての世帯に超高速ブロードバンド網の活用を今の電話と同じような料金でできるようにすることを柱とするものです。
そのための様々な施策を法律で書き込んでいます。ただし、大臣退任後、大きく抜け落ちたものがあります。それが光の道「規制改革」法案です。
日本の法律の中にはその源泉を明治時代に遡るものも少なくありません。
インターネットなどなかった時代には、全く予想だにしなかったことができるようになりましたが、今なお、当時の法律では想定してない事態を変えられずにICT活用そのものが阻害されている事例も多くあります。
先日、私は岩手の被災地を総務常任委員会で視察をしました。復興・新生に向けた予算や法案、人的支援を被災地の皆様とも約束して今いりました。その中で特にICTと災害についての多くの課題を安心安全の政策に結びつける議論をして参りました。
災害情報の伝達は、まさに生死を分ける情報の伝達です。救助や復興についても適切な情報共有がとても大切です。
今回の大震災でも私が進める「緑の分権改革」を積極的に進めている自治体の被災地への支援が目立ちました。慶応大学の金子先生を中心に進めてきたICTを使った遠隔医療支援。岩手県遠野市は、そのモデルとなった市でした。いち早く遠野市が自らも庁舎を地震で壊されるなどの被災を受けながらも三陸海岸の被災地への後方支援の核として大きな役割を果たしていることは、まさに驚異的であり心から感謝を捧げたいと思います。
不足するマンパワー。広範な被災地域。的確な医療を支援するためにも遠隔医療の被災地への支援はとても大切です。ただし、この遠隔医療についても光の道規制改革法案は、肝心な部分に踏み込めていません。
医師法は、その第二十条において対面診療を原則としてきました。
「 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」
最も当たり前のことが規定されている法律ですが、「自ら診察」「自ら出産に立ち会わない」「自ら検案」という記述から「対面を原則とする」というふうに解釈されてきたことで、この条文を基に遠隔医療が医師法20条に抵触するのではないかという点が問題視されてきたのです。
そのため遠隔医療技術により診療として認められているのは7つの疾病
(在宅酸素療法を行っている患者」「在宅難病患者」「在宅糖尿病患者」「在宅喘息患者」「在宅高血圧患者」「在宅アトピー性皮膚炎患者」「褥瘡のある在宅療養患者」での遠隔医療事例が例示された(医政発第0331020号 平成15年3月31日 これはあくまで例示なのですが)のみと狭く解釈する傾向もありました。。
専門医が現場の医師を支援する場合、サポートする側の専門医に対する報酬がないなどの問題があり、安全性・有効性が認められた遠隔医療技術にすいて適応範囲を拡大するとともに診療報酬を見直すべきだと私は主張してきました。
しかし、今回は、7疾病に加えて癌などの2疾病を加えて、あくまで例示にすぎない旨を明確化することが議論されたものの安全性等のエビデンスについて診療報酬は引き続き検討となってしまいました。
処方箋の電子化についてもe文書法の適応対象外であり、これでは処方箋の電磁的な保存等ができません。被災地で特に制約された中で避難所に暮らす方々にとっては、移動にも様々な障害が伴います。遠隔医療とともに病院等に行かずに処方箋の申請や受領が可能になれば、どんなに助かるかわかりません。業務上の効率化と言う観点からも大切ですが、処方箋発行については23年度中に結論を得るということいになっています。
過去に取得した医療情報の疫学的目的への2次利用などについても対象となる患者数が一定程度増加した際に検討と言うことになっています。
自治体クラウド・霞が関クラウドや教育へのICT利用における規制改革、匿名化された統計情報の利用・国税関係帳簿の保存など・・・。私たちが目指していたものの結論が先送りされています。
光の道は、ICTという単なる道具の改革ではありません。
教育そのものを協働型にして医療や福祉までをも国民の立場にたって大きく支援するものです。
日本社会、経済そのものを新生させるための鍵を錆びつかせてはなりません。