2009年08月10日(月)
国づくりの基礎は教育にあり~明治の近代的学校制度構築に学ぶ
世界から見た佐賀
国づくりの基礎は教育にあり~明治の近代的学校制度構築に学ぶ
明治5年(1872)8月2日、「学制」が頒布されました。
これは、我が国初の近代的学校制度を定めた基本法令です。全国を8つの大学区に分け、その下に中学区、小学区を置き、各学区にそれぞれ大学校・中学校・小学校を1校ずつ設置することとされました。フランスの制度をモデルにしたと言われています。
「人々を自ら其身を立て其産を治め其業を昌にし以て其生を遂るゆえんのものは・・」という書き出しで始まる太政官布告が発せられました。学制頒布に当たり発せられたこの文章を読むと、明治政府が教育の目的をどのように考えていたか、人生や社会、国家の基礎となる教育の重要性をどのようにとらえていたかがわかります。
その前年、廃藩置県が行われ、中央の行政機構が作られ教育行政の府として文部省が設置されています。初代の文部省長官として佐賀出身の江藤新平候が文部大輔となり、間もなく同じく佐賀出身の大木喬任侯が文部卿となり、文教行政の首脳部を構成しました。「旧来の因習を破り」「知識を世界に求め」ることを国の根本方針とし「万機公論」の精神を尊重しつつ、国を挙げて近代国家の建設に力を尽くします。(お二人とも佐賀の7賢人です。)
明治政府は、優れた教師の養成のために師範学校をつくり卒業生を学校に派遣しました。
初等教育については、国民のすべてが就学すべきことを定め、発布からほんの数年間に全国で2万校以上の小学校が整備され、約40%の就学率が達成されました。佐賀が生んだ先達の教育に対する情熱は並々ならないものがあります。強い意志と改革の断行に多くのものを学びたいと思います。
現代の日本では、格差が広がり親の年収の違いで学力に違いが出ています。経済的理由で学問を諦めなければならない高校生が7%もいます。国づくりの基本は人づくりです。全ての子どもたちに教育を行き渡らせることこそが、今の閉塞した日本を改革する大きな手立てです。
高等教育の無償化は国際人権規約でも定められている大切な権利です。しかし、日本は1979年に人権規約を批准していますが、その内の「中・高等教育の段階的な無償化(第13条)」については留保しています。このような国はわずかです。もう一度、教育に向かう資源を大幅に拡大して人づくりから国づくりの基本を再構築しなければならないと考えます。
====参考====
第13条
1 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2 この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。
(d) 基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を終了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化されること。
(e) すべての段階にわたる学校教育制度の発展を積極的に追求し、適当な奨学金制度を設立し及 び教育職員の物質的条件を不断に改善すること。
(条約加盟国157カ国で留保しているのは日本、ルワンダ、マダガスカルの3国だけ)