2009年06月05日(金)
環境の日に

 
今日は環境の日です。
もう一度、自著「平和」から中川さんとの対談を再掲してみたいと思います。 

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きれいな電力と汚い電力

原口 綺麗な電力と汚い電力とよくおっしゃいますが、その意味はどういったものですか?
中川 CO2や放射性廃棄物を出さない、物質の循環を妨げるようなことをしない太陽エネルギーのみを使うという意味であれば、きれいな電力。有機農薬の野菜とおんなじこと。
原口 CO2も放射性物質も出さない。
中川 出さない。運用時においては。つくるときは物質循環は変わりますよ。ただそれは、化学的な反応くらいまででしかないから、物質の根源的な、核反応は使わないという意味ではきれいだと思います。だから、核の問題ってのは人間がコントロールできないからやめといたほうがいいと思うんですよ。
原口 確かにコントロールできないならそうですね。振り回されて、恐怖のどん底にいきますからね。
中川 未来だったら何とかなるかなって。それは、火を燃やす化学反応までじゃないですか。核分裂反応はやっぱりレベルが違うんですよ。太陽だから究極ですよ。どうするのこんなもんって思いますよ。今の核の問題って、話はちょっと飛んじゃうんですけど、お金の不良資産みたいな感じがする。「返せない」、「わかった」じゃすまないわけよ。二人でどうしようって話しになるわけ。
一番怖いのは、核廃棄物の不良資産ができていくこと。これは、我々の管理の範囲を超えてる。まるで古代ローマの状態だと。ローマが水道つくりすぎて、メンテナンス費用が払えなくて体力が落ちていったのとおんなじことになる。安い化石燃料があるから今まで「どんどんやれ」って言ってこれたのが、それがいずれなくなるわけですよ。それで、科学的なものとか、自然がもとに戻してくれるかなって、そういう方法はありますよ。
原口 自然は簡単にもとに戻してくれませんね。放射能は無毒化されるのに半減期がある。
中川 何万年という時間が必要になる。それでしか安全なものに変わっていかないよね。
原口 そんなのつくっちゃってどうするんですか?
中川 それが、地球ができて43億年の間に核の毒がどんどん減っていって、それがない状態で生きてるのが当たり前の状態だから。わざわざそんな危険なもんつくっちゃってばら撒かないでくれよって話でしょ。
原口 昔は自然界にいっぱいあったわけですからね。
中川 そうそう。なくなって初めて我々が登場したと。
原口 ある間は、その毒で生き物は生きられなかったと。そういうものを一生懸命つくってる。それは、地球の軸を反転させるようなものです。
中川 まともじゃないし、フェアじゃないよね。メリットを受ける人間とペナルティを受ける人間が同じじゃないっていうのが、僕はすごい嫌なんですよ。
原口 そうですね。今の時代の人間、特に先進国の人間はメリットを受けるでしょう。だけど、後の世代の人間のほうがよっぽどペナルティだと。
中川 そう。冗談じゃない。誰がつくった、じいちゃんか、おまえのじいちゃんかって孫まで非難されるよ。核のことをどうしてくれるんだって。

 新しいエネルギーの仕組みを目指して

原口 そうなんですよね、そんな議論ってほとんどないですよね。もうひとつ、あの、アーヘン・モデルってよくおっしゃいますね、あれについて教えてください。
中川 あれはね、要するに社会の資金をどうやったら自然エネルギーの設備投資に振り向けることができるかっていう、お金の流れを簡単なモデルにしただけの話ですよ。
原口 うーん、ちょっと難しい。
中川 いってみれば自然エネルギーに対する総括原価方式。
原口 私はわかりますけど…エネルギーを知らない人にはわかりにくい。
中川 損するものに人は金を出さない。で、よく考えて、太陽光発電とか自然エネルギーは、プラスになるよね。今まで使えなかった太陽エネルギーを、人間の文明圏の中にとり入れるんですよ。いいことやってるんですよ。なんでその人たちが損しなきゃいけないわけ? 変だと思いません?
原口 変ですね。
中川 お金ってものはどういうものか。必ず、今のお金の仕組みは、儲かることにしか投資されないんですよ。奉仕的な精神だけで、おれはちょっとお金出してあげようかってゆうのはあるけど、社会の流れを変えるようなお金は絶対動きません。だったら、お金は人間同士を結びつける仕組みですね。自然エネルギーを社会全体に取り入れたほうがいいよね。じゃ、自然エネルギーで儲かるようにしちゃえよ。やりました。市民共同発電所。
俺はお金がない、屋根あんだけどさ、俺にできるかな。できるよ。どうすればいい? 銀行から金借りて、金利の部分も含めて返して、プラスアルファでちょっと残るなら、やるだろ。これですよ。事業ってのはみんなそうでしょ。事業ってのは、お金借りても儲かって、プラスアルファで残るからみんなやるわけですよ。そういうことによって社会の仕組みが回っていって、社会がみんな豊かになってきたわけだから。自然エネルギーが増えたほうがいいと思ってるんだったら、そこに設備投資がされて、それによって地球環境が改善される。お米つくるのと同じ発想。そこにお金が流れ込む仕組みを作ればいいわけ。
原口 いいことにお金が流れる仕組みってこと。
中川 誰が反対するの? 反対する人たちは官僚さんたちですか。環境問題って儲けちゃいけないって本当ですか? それはお金は汚いものだって思ってることじゃないですか。金は汚くないですよ。お金を使ってる人が汚いだけで、お金は必要なんですよ。
原口 日経新聞に太陽電池載っていましたね。
中川 大規模な太陽電池だと。なんで大規模にする必要があるのって思いません? 別に、一カ所にドンとつくらなくていいんですよ。
原口 そうですよね。一カ所につくればその分送電効率が落ちる。
中川 運ばなきゃなんないから送電線が必要じゃないですか。使えるところで使えればいいじゃないですか。自分のところでつくる電気で家電製品が動いてくれればいいわけだから。なんでわざわざ遠くで電気をつくらなきゃいけないの?
原口 ユビキタスとかいう時代にわざわざ一カ所に集中させてって。
中川 昔は電気つくるっていったら、発電機まわすしかなかったけど。
原口 電気は設備がでかければでかいほどいいっていう、そういう先入観ですね。昔儲かったから今も同じことやろうっていうんですね。
中川 だからどう考えてもおかしいと。太陽光発電ってね、すごい有効なんですよ。0円の太陽光の電気、90円で買ってくれてもいいでしょ。そう変えてくだけの話なんですよ。
原口 簡単な話ですね。ためになるお話をいただきました。ありがとうございます。

アーヘン・モデルと佐賀市民共同発電所

ドイツ西部のアーヘン市は、人口24万人。6年前に市民団体が提案した制度が、今ではドイツ全土に広がりつつある。この制度は、アーヘン市の名前をとってアーヘン・モデルといわれている。
ドイツでも、自然エネルギーを利用した太陽光発電の普及を目指している。アーヘンの制度提案では、設置費用を20年間の発電量を割ったものが売値として決定される。市民は、この売値で電力公社に電気を売ることができるのだ。
これにより自然エネルギーを選択した市民は、設置費用が20年で回収できるようになっている。20年間で必ず取り戻せるように制度が保障されているため、設置が増加し続けている。算定された値段による電気の買取が電力公社には義務づけられている。
市民が費用を負担して、自然エネルギーを普及させるこの試みは新しい。補助金ではなく、市民が支払う電気料金に1%上乗せして徴収されているのだ。今ではドイツ全土に広がっているという。
中川さんの市民共同発電所の試みは、宮崎で市民共同発電所「ひむか」としても続けられている。しかし、その活動は未だ棘の道だという。