2009年04月20日(月)
直轄事業負担金 参考人質疑準備

 
明日の参考人質疑に際して国会図書館に問題意識を伝えて論定整理資料を作成していただきました。上田知事、橋本知事、二井知事、神野先生。このうち3人は師・親友と言える人たちなので、日ごろの議論や交友から何をおっしゃるか予想がつきます。
 参考人質疑の質問時間は15分と限られています。しかも参考人の陳述を聞いてからの質問です。反射神経とともに、事前の準備がものを言います。

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直轄事業負担金に関する最近の議論


1.今年に入って発覚した問題

・国土交通省が出先の事務所庁舎を建て替える際などに、自治体に説明せずに費用負担をさせていたことが明らかになった。
 ⇒平成20年度に建て替えを行った44の事務所すべてで行われていた。事業費は389億円で、うち118億円を34の自治体が負担した(平成20年度の負担額は29億円)。

・国土交通省の出先事務所の維持費や人件費の一部についても、直轄事業負担金として県に負担が求められていたことも明らかになった。
 ⇒平成20年度の香川県の直轄事業負担金約46億円には、香川河川国道事務所の職員80人や四国地方整備局の一部職員の人件費約3億1千万円が含まれていた。

・従来、直轄事業負担金については、事前協議が不十分で、地方は国から請求された額を支払うだけという手続の不備や、管理主体である国が本来は負担すべき施設の維持管理費を地方が負担していることの不合理等の問題が指摘されていた。


2.地方自治体側の動き

◇都道府県知事、政令市長の考え

・読売新聞が行ったアンケートでは、直轄事業負担金制度について、47都道府県知事と17政令市長の6割に当たる40人が「廃止すべき」と回答した(3月12日『読売新聞』)
 ⇒直轄事業負担金制度の廃止が、国直轄事業の縮小や公共事業全体の減少につながることを懸念する声もあり、地方も完全に一枚岩ではないとの指摘もある。

◇全国知事会の要求

【直轄事業負担金問題プロジェクトチームの設置】

・直轄事業に関する意見交換会に向けて設置した直轄事業負担金問題プロジェクトチームの第1回会合を3月16日に開催し、全国知事会としての考え方の検討・整理を行った。

【直轄事業に関する国との意見交換会(4月8日)】

・制度見直しを要求
① 直轄事業負担金に係る情報開示:補助事業と著しく均衡を欠いている対象経費の見直しを含む。
② 現行制度の早急な改善:建設事業の採択・着手段階を始め、各段階で地方が関与し、その意見を反映させることができる仕組みや、事務費の抑制を求めた。
③ 維持管理費負担金の早急な廃止:将来にわたって継続し、地方財政にとって大きな負担となっている維持管理費に係る負担金は、本来、その管理水準を決定する管理者である国が負担すべきで、早急に廃止すべきとした。
④ 直轄事業制度の根幹の見直し(最終的には制度自体の廃止):地方に移譲すべき事業を拡大するとの観点に立って、国と地方の役割分担を明確化することを求めた。国が担うべき事業は、国の全額負担により実施し、地方が担うべき事業は、権限と財源を地方に一体的に移譲した上で、地方が自らの判断で自主的、主体的に実施できるようにすることを要求。
⇒ 新聞の社説(4月8日『読売新聞』、4月16日『日本経済新聞』)も、建設費の一部を地方が負担する現行制度には一定の合理性はあるが、地方の負担割合は高すぎるため、今後、国の直轄事業は、幹線道路や拠点空港など、幅広く経済効果が見込めるものに限定し、それ以外は権限と財源を併せて地方に移すべきだとしている。
⇒国土交通省は、制度自体の見直しは必要ないという立場を取っており、財務省も、主要な直轄事業を国の全額負担に改めるには、財源の手当てが必要になるが、国の財政事情は地方以上に厳しいと反論。


3.政府側の動き

◇国土交通大臣、総務大臣の発言等

【金子一義国土交通大臣】

・国直轄の公共事業での地方負担のあり方について「いずれ見直しをしていかなければならない状況に来ている」と発言(2月13日の閣議後の記者会見)。
・直轄事業負担金について「中身を全然知らせず請求を回すのは橋下知事が『ぼったくり』と言うのも無理がない」と開示不足を認め、事業費明細などの情報開示を進める姿勢を示したが、制度の見直しには言及しなかった(4月8日の意見交換会)。

【鳩山邦夫総務大臣】

・直轄事業負担金について「直轄事業を減らすのが必要だ」と指摘し、国が直接関与する公共事業を極力減らし、地方自治体の裁量に任せたほうがよいと強調(2月24日の閣議後の記者会見)。
・国直轄公共事業について「基本的にうんと減らせばいい。ほとんどは直轄事業である必要がない」と発言し、直轄事業で費用の3分の1を地方が負担している現状について「事前によく相談がなされていない場合がある。負担金の積算や明細はあまり透明でなく不満も随分出てきている」と指摘(2月25日の衆議院予算委員会)。
・直轄事業負担金について「一番おかしいのは不透明(である点)だ。事務所、庁舎、退職金まで地方の負担になっている」ことを問題視し、国の道路の維持管理費も地方が一部支払っていることについては「全部国が支払うべきだ」としながらも、「国と地方の役割を整理して(事業の)大部分は財源と共に県に移すべきだ」との認識を示した(3月27日の閣議後の記者会見)。

◇政府・与党の動き

【全国知事会との意見交換】

・全国知事会の要請を受け、国土交通省が、全国知事会と制度見直しに向けた協議を行うことを表明した(2月16日)。
⇒全国知事会と国土交通省等が直轄事業について意見交換を行った(4月8日)。

【新交付金制度の創設】

・追加景気対策として、公共事業の地方負担分を大幅に軽減するため、新たな臨時交付金(国の直轄事業や国庫補助事業、地方単独事業で地方負担分の9割程度まで、実質的に補えるようにする)を創設する方針を決めたと報じられた(4月4日)。
⇒ 平成21年度補正予算案にも盛り込まれる見通しで、規模は1兆円以上と見込まれている。ただし、直轄事業負担金を使途の対象とすると、地方財政法等の改正が必要となるため、制度変更には踏み込まず、交付額の算定基準に直轄事業分を加えることで、事実上、直轄事業の負担分の軽減につなげる。
⇒地方側は、この一時的な対策とは切り離し、制度自体の見直しを求めている。

【地方分権改革推進委員会の動き】

・平成20年の第1次、第2次勧告では、国道や1級河川の地方移管と、それに伴う国の出先機関の統廃合を促した。
・地方分権改革推進委員会の3月25日の委員会に泉田裕彦新潟県知事を、26日の委員会に橋下徹大阪府知事を招いて意見を聴取した。
 ⇒丹羽宇一郎委員長は、今後まとめる第3次勧告で国に見直しを求める考えを示した。


【参考資料】
① 全国知事会ホームページより、「直轄事業に関する意見交換会について」2009.4.8
② 新聞記事
・「公共事業の地方負担 国交相「見直す時期」」『日本経済新聞』2009.2.13夕刊.
・「公共事業の地方負担金 知事会長、見直し要請 国交相は機関設置を検討」『日本経済新聞』 2009.2.17.
・「国の直轄事業「まず削減必要」自治体負担巡り総務相」『日本経済新聞』2009.2.24夕刊.
・「時時刻刻 負担1兆円 地方の反旗 国の直轄事業」『朝日新聞・東京本社』2009.2.27.
・「国直轄事業 地方負担「廃止を」6割超 知事・政令市長」『読売新聞』2009.3.12.
・「地方負担金 見直し難航 分権委、直轄事業で意見聴取」『日本経済新聞』2009.3.27.
・「総務相「地方負担金は不透明」」『日本経済新聞』2009.3.27夕刊.
・「四国整備局 人件費も要請 国直轄事業負担、県に」『朝日新聞・香川全県版』2009.3.27.
・「直轄負担金って何だ!?」『四国新聞』2009.3.29.
・「国交省 説明せず地元負担 出先庁舎改築費 昨年度44カ所」『毎日新聞』2009.4.1.
・「国の公共事業 一定の地方負担金は必要だ」『読売新聞』2009.4.8.
・「直轄負担金、知事会と初協議 国、制度見直し言及せず」『朝日新聞』2009.4.9.
・「[社説]国の直轄事業の見直しを先送りするな」『日本経済新聞』2009.4.16.
・「基礎からわかる直轄事業負担金」『読売新聞』2009.4.16.
・「国直轄事業の負担金 知事側強気」『産経新聞』2009.4.20.