2009年03月01日(日)
55年前の真実:ブラボー・ショット~隠されたヒバクシャ

 
55年前の今日、アメリカによる水爆実験が行われました。多くの人々が何も知らされないままに被爆をしました。付近で創業していた日本の漁船も被爆しましたが、当時は逆にスパイ活動とまで疑われ、何の保障もなしに放置されました。

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(自著「平和」より抜粋しました。


広島市立大学広島平和研究所助手の高橋博子氏が米公文書から明らかにした事実は衝撃的だった。1954年3月1日の核実験ブラボー・ショットの写真とともに出てきたのは、その2日後、「プロジェクト4・1 放射被曝した人間に関する研究」用に、米医師が被ばくした子どもを検査している様子を写した写真だった。子どもの髪は被曝により抜け落ちている。
 
 実験当局者である米原子力委員会は、ロンゲラップ島の住民や米兵が「非常に高レベルの放射能」で被ばくしていた「事実」を把握していたにもかかわらず、「若干のような放射能にさらされた」と発表している。(『隠されたヒバクシャ』より)
 核実験による非難勧告は行われなかった。行われていないどころか、被ばくの影響を研究する「人体実験材料として住民が扱われた」疑いが強い。高橋氏が開示請求した資料は、このことを物語っている。
 第一次世界大戦後の1914年、日本は赤道以北のミクロネシアドイツ領をすべて占領。1919年に国際連盟は、この地域が委任統治領「南洋諸島」として日本の統治下に入ることを正式了承した。
 第二次世界大戦後、米軍がビキニ環礁を日本軍から奪取。「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」(ハーグ陸戦条約)で言う占領地である。ビキニ環礁の住民は200キロ東のロンゲラップ環礁に有無を言わさず移住させられ、ビキニ環礁はその後、12年にわたって米核兵器の実験場となった。
1997年10月、米国の国立がん研究所および疾病予防センターが、50年代から60年代初めにかけて実施された大気圏核実験(ネバダ核実験場で120回以上実施された(⇒ データを確認 )影響で放射性物質が大気に放出され、汚染された牛乳を飲んだ子どもが発ガンの危険のある数値を超える被ばくをしていた可能性が高いことを発表した。
この調査は1983年に米議会の決議により開始されたもので、米国内に核実験による隠れた被ばく者が多数存在する可能性を示した報告書として世界的な注目を浴びている。
報告書によると、汚染牛乳を飲んだと見られる3カ月から5歳の子どもの被ばく線量は高く、相当数の子どもが1グレイを超える被ばくをした可能性があることがわかる。放射性同位体ヨウ素131などが風で飛散したものと推定される被ばくの影響は深刻で、被ばく線量が1グレイを超えた場合、甲状腺ガンや機能低下症につながるとされている。

 1954年3月、ビキニ環礁で行われた米水爆実験「ブラボー・ショット」により発生した放射性降下物は、ロンゲラップ環礁を始めとするマーシャル諸島北部の住民多数と第五福竜丸の乗組員に「死の灰」を降り注いだ。 
1997年に公開された1954年米上下両院合同原子力委員会の文書によると、実験後に住民が非常に高いレベルの放射能を浴びて被ばくしたと記されている。しかし、同じ日に同委員会は「おもいがけなく若干の放射能にさらされた」と発表した。米ソの東西冷戦下では、核実験による放射能被ばくが東側のプロパガンダに使われることを恐れたのではないかと考えられる。
このような軍事実験における「隠蔽」は、国防・外交機密という鉄のカーテンの向こう側で歴史の彼方に忘れ去られる傾向が強い。しかし、民主主義国家の健全性を担保する情報公開の仕組みが、隠された事実を今、再び問いかけてきている。
第五福竜丸の被災・被ばくに対しても、当時の米政権は責任を認めようとはしなかった。それどころか、第五福竜丸乗組員のスパイ疑惑を示唆してCIAに極秘調査を依頼し、これに当時の日本政府も協力していたことが機密解除された米公文書によって明らかになった。
開示された「EYES ONLY」の最高機密文書でも、第五福竜丸が核爆発を偵察したり、記録する目的で危険区域またはその近くにいたことを示す直接的・間接的証拠はないことが明記されている。第五福竜丸の無線長であった久保山愛吉氏は、明らかに死の灰を浴びた犠牲者であるにもかかわらず、彼の死と被ばくの因果関係は未だに認められていない。

「私も夫もアメリカの核実験が意外な結果を生んだことに驚いていません。アメリカの科学者たちも知らなかったとか驚いたとかいって言い逃れをすることはできません。私たちの知っていることは彼らもやはり知っているのです。…原・水爆の場合、放射能の雨はアメリカも含めて何処に降るかわからないのです。このことをアメリカ国民に知らさなければなりません。太平洋をまるで自国の内海であるかのように禁止区域を設けたということだけで恥知らずなことですし、彼らが国民を無視している証拠です。」(レイヌ・キュリー博士)。