2009年07月26日(日)
国連障害者の権利条約委員会アドホック委員会 原口発表内容(草稿)
「国連障害者の権利条約(修正議長草案)」第33条の国内実施及び国内モニタリングに関して、日本政府の実施状況について
     民主党次の内閣総合政策企画担当大臣 衆議院議員  原口一博

 民主党の次の内閣総合政策企画担当大臣をつとめています衆議院議員の原口一博です。障害者の権利に深くかかわり地道な努力を重ねてこられた、すべての友人に感謝を捧げます。私たちは日本版ADA法・障害者差別禁止法の制定にむけた障害者基本法改正を国会で実現しました。ここでは、その改正案をまとめた立場から「国連障害者の権利条約」の国内モニタリングに関し、日本政府の実施状況について意見を述べたいと思います。
 第4回の委員会でもサイドイベントで合理的配慮と労働について意見交換させていただきました。ご参考までにお手元に、当時の原稿を配布させていただいています。


 「国連障害者の権利条約(修正議長草案)」第33条は、条約締約国に当事者の完全参画など5項目を定めています。パリ原則(1993年)の「国内人権機関」の役割、機能にかかわる問題(独立性・当事者性、ジェンダー及び年齢のバランスの確保)などを考慮に入れて国内モニタリングの実効を目指すものです。
① 障害者権利条約の実施に関する事項を取り扱う一つ又は二つ以上の中心的機関を政府内に指定する。
② 多様な部門及び多様な段階における関連のある活動を容易にするための調整機関の設置又は指定を正当に評価する。
③ 必要なジェンダー及び年齢に特有な問題を考慮に入れて、その法及び行政的な制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し及び監視するための独立した仕組みを国内で維持し強化し、指定し及び設ける。
④ その仕組みを指定し又は設ける場合には・・・人権の保護及び促進のための国内機関の地位及び機能に関する原則を考慮に入れる。
⑤ 市民社会、特に、障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、モニタリングの課程に関与し、かつ完全に参加する。

 これに対応する日本の施策の現状は次の通りです。
議長草案①②について
2001年1月の中央省庁再編を機に、関係行政機関相互間の密接な連携を確保するとともに、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官を副本部長、他のすべての国務大臣を本部員とする「障害者施策推進本部」が設置されています。また2005年2月に内閣府に障害者担当特命大臣が置かれたのに伴い、担当特命大臣が副本部長となりました。本部には各省庁の事務次官からなる幹事会を置き、有識者を参与に任命しています。2004年からは、その下に「障害者施策推進課長会議」、「課題別検討会議」が設置されています。
 私は八代元議員とともに2004年の障害者基本法作成に携わりましたが、この法律に基づき「障害者基本計画」が作成され、障害者施策の推進状況に関する報告書(障害者白書)が取りまとめられています。内閣府に共生社会政策統括官がおかれ総合的施策の調整を行っています。
 
議長草案③④について
現在のところ、日本には、障害者の施策の実施を促進し、保護し及び監視する独立の機関(たとえば、障害者委員会、障害者オンブズマン)またはこれに対応する機関は設置されていません。2002年、障害者への差別を含む、各種の差別や虐待の被害者を救済することを目的とする新しい人権救済機関として「人権委員会」を設置するための「人権擁護法案」が国会に提出されましたが、規制の対象としてメディアによる人権侵害を含むこと、委員長及び委員は内閣総理大臣が任命し、法務省の外局であることなど、独立性に問題があること等の批判を受けて廃案となっています。

議長草案⑤について 
上述の障害者基本法により、中央政府の障害者基本計画の策定及び変更について障害者施策推進本部長である内閣総理大臣に意見を述べる機関として「中央障害者政策推進協議会」が内閣府に設置されており、その委員(30名以内)は、障害者と障害者福祉事業従事者、学識経験者から内閣総理大臣が任命する。その構成は、様々な障害者の意見を聴き、障害者の実情を踏まえた協議ができるように配慮されなければならないとされ、委員の半数は、障害者当事者とその家族の代表となっています。同種の推進協議会は自治体にも設置され、自治体の障害者基本計画について意見を具申することとなっています。
 改正に際し「障害者インターナショナル日本会議」から要請がなされたように、障害者基本法見直しにあたり、中央及び地方の障害者施策推進協議会について、障害者基本計画の実施状況について、モニタリング機能(監視、評価、提言)を明記する改正がさらに必要だと考えています。

「障害はすべての人に起こりうる」「障害は障害者その人に属するのではなく、障害者と環境の間にある」「障害は環境因子によって大きく左右される」という観点からより実効的で権利保障の視点に立った国内モニタリングが機能することが必要です。そのためには司法そのものの改革にも立ち入った議論と検討が必要です。
 私たちはここで、差別と立ち向かう力が自らの権利を学ぶことによって結集されたことを想起したいと思います。社会が抱える問題の多くは、権利を学び、人権を教育することによって解決に向かいます。
 障害者の権利条約制定に向けて、多くの連帯と勇気を共有できましたことを感謝申し上げます。私たちの運動を勝利に導くために、この連帯がさらに有意義で力に満ちたものになりますように祈ります。
全ての友人の活躍に祝福がありますように。ありがとうございました。