予算委員会

平成10年1月21日(水曜日)

○予算委員長 これより会議を開きます。
 平成九年度一般会計補正予算(第1号)、平成九年度特別会計補正予算(特第1号)、平成九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。
 原口一博君

○原口委員  民友連の原口一博でございます。
 三人の先生方には大変示唆に富んだ御指摘をいただきまして、本当にありがとうございます。私は、きょうお三人に御質問したい点は二つでございます。
 まず第一に、先ほど三人の先生からお話しになりました、昨年の暮れ通りました財政構造改革と、景気対策の問題でございます。石先生は両にらみでやる、そして笹森先生、金森先生については、まず日本の経済を軌道に乗せて、それからやるべきだ、そういう御主張でございました。
 きょう、ちょっとパネルを用意してまいりました。
 私たちは、昨年の四月から、特に後ろのお二人の先生がお話しにたったようなことを国会の中でずっと議論してきました。まず日本の経済成長をもとに戻して、その中で財政再建をやるべきだ。政府案のアプローチは歳出抑制で、結局、このことは大きな失業の増大、あるいは、先ほど金森先生がおっしゃいました、対米貿易の摩擦やあるいは金融不安のリスクにまで広がってしまう、このことを採用すべきではないんだ。
 私たちは、直接税の大型減税やさまざまな規制緩和を同時にやることによって、しかも先ほど金森先生がお話しになりましたように、公共事業は効率化によってその事業量を確保するんだ、そして民間投資を活性化させて、内需主導による3.5から4.0の成長を遂げる、その中で財政再建をやっていくべきだという主張を旧新進党の中でやってまいりました。
 そして、きょうお尋ねをしたいのは、まず、この財特法の処理スキームが崩れてしまっているのではないだろうか。
 昨日公表されましたところによりますと、国民負担率はもう既に50%を超えている。これは財特法が予定していなかったことであります。また、この金融不安によるさまざまな公的支援,そういったものを入れると、とても2003年にGDPの3%に持っていくことはできない。逆に、歳入歳出ギャップは、歳出が抑制されるどころか広がってしまうんだ。昨日いただいた資料では、経済成長率が1.75%のときに、実に最大8.1兆円もの歳入歳出ギャップが生まれてしまうんだ。
 これは、また国民の皆さんに御負担をお願いしなければいけない。本来だったら、後世の皆さんに対する負担を減らそうと思ってやったことが、むしろ逆の劾果を生んでしまっている。この処理スキームが壊れてしまっているということを、私は御指摘したい。
 そこで三人の先生におお尋ねをしたいのですが、橋本総理が御決断になった二兆円の特別減税、これをどのように御評価なさるのか。これが、財特法との関係で、私は大きな政策転換であるというふうに思いますが、このことについて、いや、これは臨機応変の措置であるとおっしゃるのか。
 例えば、財特法の特別委員会の中で、石先生、こういうふうに私たちに教えていただいています。財政構造改革と景気対策というのはトレードオフの関係にある、両立しないんだ、どっちか片方なんだということを、これは平成九年十月三十日におっしゃっています。きょうは、そうではない、両にらみできるんだということでどざいますが、私は、まず三人の先生方にお尋ねしたいのは、政策転換をしっかりやったのか、やらないのか。そこを三人の先生がどのようにお感じになっているのか。
 また、公共事業についても、例えば先ほど金森先生がお話しになりました。私は、政府歳出、不透明な歳出については思い切って切り込まなければいけない。これは特に金森先生にお尋ねをしたいのですが、例えばこの公共事業の7%、15%のカットが経済全体にどのような悪影響を与えるのか。私の九州では、ことし大体二万四千人もの雇用の喪失を生むというような試算もございますが、このことについてどのようにお考えになっているのかお尋ねをして、まず一番目の質問にしたいというふうに思います。

○石弘光一橋大学教授 大変重要なポイントを御指摘いただいたと思います。
 私は、前回、十月の段階で申し上げましたように、基本的には、構造改革と景気はトレードオフの関係にたっていると思います。つまり、短期的に見ますと、構造改革というのは、歳出力ットであるとか、あるいは、まだ議論にたっていませんが、恐らく国民負担を上げるとかという今後の話を含めますと、どうしてもやはりデフレ効果を持ちます。そういう意味で、どっちか、スキームをつくるときに、思い切ってそれをしなきゃいけないという趣旨で、原点、出発点の議論をしたわけであります。
 そこで、言うなれば、財政構造改革法案は国会を通り、2003年のあるターゲットを目指してスタートしたわけですね。そこまでは、景気に変更がなければ、恐らくうまく動いたのでしょう。ただ、相手は生き物である経済であります。そういう章味で、恐らくこのスキームが当初期待した、あるいは予定したコースに五年も六年もいくという保証は、恐らく当初からなかったはずであります。
 と同時に、GDP比で3%にするとかなんとかということ自体、極めてアバウトな目標であります。GDPは変わりますからね。計算の仕方も随分いろいろあると思いますし、時期も変わります。そういう意味で、私は、一たん動き出した後、さまざまな形で微修正なり伸縮的な取り扱いはあり得ると思っておりました。
 ただ、これがこんなに早く来るとは思っていなかったのですね。そういう意味で、恐らくデフレ効果を低く見たという反省はあるでしょう。ただ、予期しなかったアジア経済危機があったり、あるいは倒産が相次いだりという、法案をつくった段階では余り予期しなかったことが起こったというのも事実でございましょう。
 そういう意味で、私は、いわば臨機応変に、ある許容範囲で議論をすべきである。そういう意味では、私は、2003年とか赤字国債等々というのは、もう何か検討が始まっているようでありますが、まだ先の話であります。これから日本経済、五年落ち込みっ放しということもないでありましょうし、いずれ好転する時期もございましょう。そうなれば、そこの期間の伸縮的な取り扱いということにおいて、この当初の出発点、当初のを目標をクリアするべく努力するのが先ではないかと思います。
 ただ、これから何が起こるかわかりません。もう一段深刻な事態になれば構造改革法自体の見直しというのはあるのかもしれませんが、これはだれも今わかりません。そういう意味で、私は、両にらみと言ったのは、一たん出したスキームに基づきつつ、できる範囲で調整しながらという考え方でございます。

○笹森清日本労働組合総連合会事務局長 基本的には、今先生御指摘の内容と全く同感であります。
 私どもも、先ほど申し上げましたように、さらには今お手元にお配りしてある資料も、昨年の春、そして昨年の秋、そして十二月の段階、それから今国会が始まってから、これは政府、橋本総理以下、それから各政党に御連絡を申し上げている内容です。
 特に昨年の暮れの段階で申し上げましたのは、総理官邸で総理に、私は政策転換という言葉は使わなかったのですが、財政構造改革をやらなければならないということは、これは国民もみんな理解しています、しかし今の時期なんですか、でき得れば、こういう状況のときには君子大豹変をしてください、こういうお願いをいたしました。いろいろな政策について検討はすると言ったのですが、そのときに、減税はけんもほろろのお答えだったわけですね。それで、突然ああいう形で二兆円が実行されるということになりました。
 終わった直後に、新しく着任をされましたアメリカのフォーリー大使が連合に表敬訪問に来ていただきました。そのときのいろいろなやりとりの中で、連合は経済政策、特に減税についてはどういうような考え方をお持ちなんですかというフォーリーさんからの質問があったのです。私と鷲尾会長がそれに、今までの政策について説明をいたしました。そうしたらば、非常に選択は正しい、アメリカはその考え方を歓迎したい、こういうことも申された。そのことによって減税が実現をされてよかったですな、こういうふうに言われました。
 しかし、この二兆円という問題は、昨年の春の与党三党合意の中で、玉虫色表現でしたけれども、財源が生じた場合には国民生活に直結をするものの使途にするのですよということは決められたわけですけれども、あの時点で我々が要求したのは二兆円規漠だったわけです。
  しかし、現在の景気の失速状況からいいますと、先生御指摘のとおり、全くこんなものでは足らない。昨日もいろいろな、この予算委員会の質疑の中でも、戦力投入、小出しではどうにもならないよというようなやりとりもあったというように聞いておりますが、全くそのとおりであります。
 したがって、先ほども御説明申し上げたように、今体力をどういうふうに蓄えて、その体力を蓄える場合にどういう栄養剤とカンフル剤が必要なのか。そのための手だては、おくれればおくれるほど取り返しのつかないことになる。したがって、今緊急に実行させなければいけない。そのためには、規模的には、所得税減税で申し上げれば、三兆円の制度恒久化と一兆円の特別減税、合わせて四兆円の城税、これをどういうふうに実行していただけるかという部分が、国民の期待にこたえるものではないか。
 もう一言つけ加えさせていただきますと、景気という言葉の景という字は情景をあらわす言葉ですね。気の字は気持ち、気分なんです。だから、景気を高める、景気を浮揚させるというのは、状況を好転させて、国民の気持ちをどういうふうに明るいものにさせるかというのが景気という言葉だと思うのです。そのことの対策をやはり今の国会が早急に打つことが必要ではないかというふうに考えております。

○金森久雄日本経済研究センター顧問 ただいまお尋ねの件につきましては、いろいろ申し上げたいことがあります。
 私は,長期的に財政構造改革の目標をつくるというのは意味のあることだと思うのですね。ただ、そのやる時期というものがあるわけでありまして、手術をするにも、病人の体力の回復というのを待たなければいけない。ところが、現在は、そういうものを無視して、大幅な支出の抑制をやったという点に大きな誤りがあったというように思います。
 財政構造改革の今の考え方で、私は、二つ問題があると思うのですね。
 これは、余りにも赤字抑制という点に重点が置いてある。もっと内容で、日本の補助金をどうするかとか、むだな支出をどうやって削減するかという問題がいろいろあるはずでありますけれども、財政のバランスをとる、バランスをとるために歳入をふやし歳出を減らすというところに余りにも重点を置き過ぎたのではないかと思うのですね。
 それからいま一つは、やはり弾力性がない。アメリカでもレーガン大統領のもとでこういう法律は幾つも出たわけでございますけれども、財政の歳出抑制も、二四半期間、成長率がマイナスのときにはそういうことは適用しませんとか、いろいろ弾力条項が入っているのですね。日本ではそれが非常に硬直的にたっているのではないかというように思うわけであります。
 現在、情勢を見まして二兆円の減税をやられたことは、実際には弾力的な取り扱いをされたわけでありますから、これは結構だし、特に財政構造改革という長期の目標と、今の二兆円減税という対策が矛盾していると言うには当たらないというように私は考えているわけです。
 それから二兆円の評価、先ほど申し上げましたけれども、これはいかにも小幅であります。そして、一年限りということでは効果がございません。こういう対策というのはやはり心理を変えるのが重要でありまして、小出しに少しずつやるというのは、非常にまずいやり方ではないかというように思います。
 それから公共投資でありますけれども、需要をふやすためには、減税でやっても公共投資でふやしても、どちらでもいいわけでありますけれども、その効果が違うわけですね。現在の日本で考えてみますと、個人の消費をふやすというよりも、一層重要なのは、やはり社会資本の充実ということではないかと思います。
 公共投資、非常にむだだと言われますけれども、むだなのはやめなければならないのは当然でありますけれども、必要な点というのは、例えば災害対策ですね。東京に地震があったらどうなるかとか、あるいは情報通信のインフラをどうするかとか、老人ホームをどうするかとか、いろいろ必要なものがたくさんあるわけであります。そういう意味では、私は、個人消費を高めると同時に、公共投資をふやして社会資本をふやすのが重要ではないかというように考えるわけであります。
 公共投資を仮に五兆円ふやしますと、GNP五百兆円でありますから、仮に乗数効果が全然なくても、それで成具率を1%高めることができるわけですね。乗数効果が全然ないということはございません。公共事業をやれば、それがそこの働いている人の所得になりまして、またその消費をふやすという波及的効果は必ずあるわけでありますので、できるだけむだを省き、能率を高めて、公共事業を確保するというような方向に政策が進むことを私は希望しているわけであります。

○原口委員 三人の先生から本当にありがたい御意見をいただきまして、ありがとうどざいます。
 財特の処理スキームがこんなにも早く破綻したこと、景気を回復させなければいけないこと、この貴重な御示唆をいただきました。特に笹森先生からは、二兆円の特別減税を切り離す、切り離して審議すべきだという貴重な御指摘をいただきましたことを心から御礼申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございます。