本会議

平成10年3月13日(金曜日)

○議長 原口一博君。

                        〔原口一博君登壇〕

○原口一博君 私は、民友連を代表いたしまして、ただいま提案されました沖縄振興開発特別措置法の一部改正案について質問申し上げます。
 佐賀が生んだ偉人江藤新平公は、司法制度の礎を築くとともに、立法府の行政府からの独立に力を注ぎました。人権擁護の視点から数々の改革を行い、人身売買の禁止、女性の解放、教育制度創立などに努めました。この立法府の原点に立ち、沖縄問題を国民主権、人権という角度からお尋ねをしたいと思います。
 まず、総理並びに関係大臣にお伺いしたいのは、沖縄の痛みと平和の貢献をどのようにとらえておられるかということです。
 沖縄を訪れたときに、ある方が私にこうおっしゃいました。同じ軍用機の音でも、米軍機の爆音と自衛隊機のそれでは同じ音には聞こえないのです。神経に直接こたえるのは米軍機の爆音です。この言葉は、沖縄の置かれた立場を象徴的に示していると思います。
 自分たちの手の届かないところで物事が決められ、それが何年も続く。命にかかわる問題であるにもかかわらず、日米安保条約の前に過重な負担を強いられる。国民主権の長期にわたる空洞化と申しますか、人権の侵害ともいうべきこの事態を早急に解消することが政治の務めではないでしょうか。
 総理は、この痛みをどう受けとめ、そしてその解決をどう図るのか、御自身の言葉で語っていただきたいと思います。
 一昨年の米兵による沖縄少女暴行事件について、クリントン大統領は遺憾の意をあらわし、沖縄の人々の気持ちをきちんと考慮し、柔軟性を持って最善を尽くすことを約束されました。また、米議会の上下院においても決議がなされました。上院は、沖縄の人々は日本における米軍基地の負担の不相応な部分を負担してきたとし、同じく下院は、沖縄の人々が行っている貢献は特別の承認及び恩恵を受けるに値すると言っております。
 外務大臣は、二つの決議をどう受けとめ、沖縄の痛みにどうこたえていこうとされるのか、決意をお尋ねします。
 戦後、長期にわたり我が国の施政権外に置かれた沖縄は、著しい格差を抱えて復帰しました。自立的発展を可能とする基礎条件を整備し、沖縄が我が国経済社会の中で望ましい位置を占めるように努力することは、長年の沖縄県民の労苦と犠牲に報いる国の責務であります。
 沖縄の振興開発については、数次にわたり施策の推進が図られてまいりましたが、沖縄の産業経済の現状は、主に公共投資、基地収入、観光のいわゆる三つに支えられており、経済的自立はまだ達成されておりません。また、完全失業率は六・五%と全国平均の約二倍に達するなど、厳しい状況にあります。特に、新規学卒者を中心とする若年労働者の高い失業率などが大きな社会問題となっております。
 このように、当面する緊急かつ重要な課題として、経済の活性化、自立化に向けて抜本的な対応策の検討が急がれているところであります。
 自由貿易地域制度や税制上の特例措置、そして、レベルの高い空港、港湾、情報通信等のインフラ整備などにより、国内外の企業を誘引し得るための条件整備を沖縄県は要望してこられているところであり、沖振法改正案では、振興策の切り札となる特別自由貿易地域制度の創設、所得控除制度や投資特別減税、免税売店の設置などを図ることとされています。しかしながら、改正法案は、あくまで優遇税制の骨格を示しただけで、特別自由貿易地域への入居条件や関税の対象品目、あるいは免税店の取扱品目など、具体的な中身は政令に委任されており、これら実施細目の規定が厳しくなれば、改正法案は絵にかいたもちになる可能性があります。
 また、今回の法改正に当たって、例えば、特別自由貿易地域制度の適用地域の問題、この地域において所得控除の適用を受ける要件である最低雇用人数制限の問題等について、県としては、ハードルを低くして、地域内で操業したい企業の入居を期待していますが、実施細目で最終的に決定される内容によっては法案改正の目的が果たされない可能性があり、沖縄の経済社会の現状に照らし、今回の法改正の効果が実効あるものとならなければなりません。この点についての総理の見解をお聞かせ願いたいと思います。
 また、今回の改正案は、一国二制度的側面を持つ一方で、その効果が発揮されるためには、水資源の確保や環境への配慮、さまざまなインフラの整備に万全を期する必要があります。農業などの一次産業や地場産業への配慮とあわせて、担当大臣として鈴木大臣の姿勢を伺います。
 次に、沖縄振興策と米軍基地問題との関連で、政府の見解をお尋ねいたします。
 さきの大戦における、住民を巻き込んだ、鉄の暴風と表現されるような熾烈な戦い。戦後も、銃剣とブルドーザーによって強権的に土地を接収、基地を強化、拡大し、沖縄は、あの美しい沖縄の島は、まさに基地の島へと変貌したのであります。そして、沖縄本島において基地はその面積の約二〇%を占め、とりわけ人口や産業の集積が著しい中部地域に集中し、これは、住民の居住地域とまさに隣接をいたしております。また、これは陸だけではなくて、水域や空域にも多くの制限区域が設定されており、県の振興開発にも大きな阻害要因となっております。さらには、広大な米軍基地から派生する事件、事故は県民生活に多大な悪影響を及ぼしております。
 そこで質問でございますが、普天間基地問題について、大田知事と関係省庁の審議官らが一昨日、六時間にわたり協議をしましたが、その協議の内容はどのような内容だったのでしょうか。平行線に終わったのは、きのう下地さんは決裂とおっしゃいましたが、沖縄の兵力展開について政府が具体的な説明をできないからではないでしょうか。なぜ沖縄だけかという問いに、沖縄基地は地理的に日米安保上重要だなどという漠然とした観念論では、とても県民の納得は得られません。
 アメリカのブルッキングス研究所は、この四日付のロサンゼルス・タイムズで、海兵隊の海上基地の約三分の二をオーストラリアと韓国に分散する論文を発表いたしました。基地負担を軽減しながら朝鮮半島の和平を視野に入れた地域安全保障の強化を図るというこの論文は、強い説得力を持っております。有事対応、米軍のプレゼンス維持という面からも、海兵隊の沖縄常駐は説明が成り立たないとアメリカの政府与党である民主党のシンクタンクが論じていることは、見逃せない事実であります。なぜ現有兵力が沖縄に必要なのか。政府として、現行兵力とそれにかかる費用を具体的に示した上で、なぜ米軍のプレゼンスが必要なのかを丁寧に説明すべきであると思います。国会に資料として提出すべきだと考えますが、総理、外務大臣の御所見を伺います。
 沖縄の基地問題は、本来、政府が対米交渉の中で責任を持って解決すべき事柄でありながら、判断が、県、名護市と順送りに地域の人々に押しつけられてきたことによって、そこに混乱の原因があるのだというふうに思います。名護市は現在でも、海兵隊キャンプ・シュワブ基地などにより、過重な基地負担を強いられております。それに加えて海上基地建設となると、住民に強い懸念があるのは火を見るよりも明らかだというふうに思います。
 総理は、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるか痛感していると述べられましたが、しかしながら、その後のSACOの最終報告合意における土地の返還では、そのほとんどが県内移設を条件としており、痛みを国民全体で分かち合ったものではなかったのであります。そしてこのことが、海上ヘリポート問題に代表される沖縄の米軍基地問題の行き詰まりを生み出す根本原因となっているのであります。
 私は、ここで総理とSACOの見通しの甘さを指摘しておかなければなりません。
 GAOは、去る三日、アメリカの会計検査院でございますが、SACO最終報告に関するレポートをまとめ、議会に報告しました。それによると、一つ、移転に伴うアメリカ側の負担は十年間で一億九千万ドルにも上ること、二つ、ヘリポートの建設費を四十億ドルとすると、年間の維持費は二億ドルにも上ること、三つ、有害物質の除去も加えるとさらに費用が増大し、工法上も困難な上に、最後には、環境問題も発生するおそれがあるとしています。
 総理のサンタモニカでの会談での詰めはどうだったのか。十分に練られた結論だったのか。もしそうだとすれば、政府もヘリポート建設に関する具体的なデータを示す報告書を国会に提出すべきだと考えますが、総理、防衛庁長官の御所見はいかがでしょうか。
 ここに一冊の論文があります。フォーリン・アフェアーズのブレジンスキー氏の論文であります。その中でブレジンスキー氏は、日本は事実上のアメリカの保護国であるということを主張しています。
 カーター政権の元大統領補佐官が、日本をアメリカの保護国、従属国と指摘しているのを見て、私たちは感情的な反応をするつもりはありません。ただ、自国の国益に関することや安全保障に関することが、十分な情報の開示もないままに、真摯な議論も経ずに、他国のヘゲモニーのもとで決まっていくような印象を与えるとしたら、それこそが、保護国、従属国であることの証左であるというふうに思います。(拍手)
 鈴木沖縄開発庁長官は、特別委員会の私たちの質問において、沖縄の駐留米軍の撤退時期について、国際情勢が変化すれば、沖縄県が基地返還アクションプログラムで要望している全面撤去目標である二〇一五年よりも前倒しでそれが可能である、そういう認識を示されております。政府全体としても、中長期的視点から、兵力削減の必要性を米国政府に明らかにしていくことがぜひとも必要であると考えますが、いかがでございましょうか。総理及び関係大臣の明快な答弁を求めます。
 私たち民友連は、さまざまな多元的な価値観の差異を認めながら、明確で透明性の高い合意形成の仕組みを持つ、連立時代の新しい政治のコンセプトに挑戦いたしております。
 その特徴は、一部の支持母体や既得権益が決定権を持つ縦社会ではなく、組織を超えた緩やかなヒューマンネットワークが幾重にも重なる横社会であります。人材の流動性が高く、自己責任と自由な発言環境のもと、それぞれの個性が遺憾なく発揮できること、競争システムと相互互助機能が調和していること、情報がオープンで共有意識が高いことなどでございます。
 国民主権の空洞化を許さず、弱い立場の人の声を最も重視する政治を創造していきたいと思います。
 我が国の司法制度を確立し、人権のために闘った江藤新平公の没後百二十四年が過ぎました。明治七年四月十三日、きょうは命日です。四十一歳でございました。
 あめとむちのような政策は言語道断でございます。沖縄県民の人権と自立を最大限に尊重し、沖縄の美しい環境を重視した経済自立を進めることこそが最も重要であることを強く指摘して、質問といたします。(拍手)

                       〔内閣総理大臣登壇〕

○内閣総理大臣
 原口議員にお答えを申し上げます。
 沖縄の痛みということについて自分の思いを語れと言われました。私が沖縄県の問題というものに具体的にぶつかったのは、大学の三年生、まさに対馬丸事件というものを初めて知ったときからであります。そして、国会議員として最初に私が取り組み、解決に努めた仕事も、この対馬丸事件の遺族の方々への補償の問題からでありました。それ以来、随分長いかかわりになります。
 そして、米軍施設・区域が集中して存在しているために沖縄県の方々にかけているその負担というものは、私は十分、少なくとも本土の人間の一人としては理解しているつもりでありますし、だからこそ今日まで、何とかこの問題に少しでも前進をと努力をしてまいりました。
 この内閣は、そのような認識の中で沖縄の問題というのを国政の最も重要な問題の一つとして、今後とも、米軍の施設・区域の問題あるいは経済社会の振興に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
 また、沖振法の改正案についてお尋ねがありました。
 この法案は沖縄の振興開発にとって重要な法案であります。今後、沖縄県において、特別自由貿易地域制度を中心とする特別の措置がそれぞれの制度の趣旨に沿って有効に活用され、特色のある産業や貿易の振興による経済の自立化に資するとともに、沖縄の雇用促進につながるよう、適切な運用に努めていきたいと考えています。
 また、沖縄の基地というものにつき、国民が納得できる説明を政府が責任を持って行えという御指摘をいただきました。
 政府といたしましては、在沖縄米軍は、国際社会に引き続き不安定な要因の存在する中において、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与していると考えておりますし、日米安全保障条約の中において、我々はその責任もまた負うております。
 そうした中において、日米両政府として最大限の努力をSACOの最終報告に向けて払ってきました。例えば、普天間飛行場の海上施設案、これは現時点で私は最良の選択肢だと考えておりますが、経費等詳細は、地元の理解が得られた後に鋭意検討することになります。こうした点を含めて、政府は国民の皆様の理解を得るよう適切な説明に努めてまいります。
 なお、サンタモニカでの問題の詰めという言葉をお使いになりました。サンタモニカの会談は私とクリントン大統領の初めての会談でありましたし、この問題を初めて提起した場でありましたし、普天間という基地を具体的に取り上げた最初の場でありますから、詰めといった状況ではございません。その詰めというのは、あくまでもSACOの最終報告であります。
 次に、一定の論文を引用されながら、沖縄の米軍基地の全面撤去について御意見がございました。
 政府としては、日米安全保障条約というものの必要性、そしてその遵守義務というものを今後とも日本のために必要なものだと考えております。その上で、沖縄に所在する米軍施設・区域の整理、統合、縮小の問題を政府の最重要課題の一つと位置づけて、沖縄県から伺った御要望も踏まえながら、米国政府とともに最大限の努力を払った結果としてSACO最終報告を取りまとめたものでありまして、今後ともその実施に最大限努力をしてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)

                         〔外務大臣登壇〕

○外務大臣
 お答え申し上げます。
 まず一点は、米国における上下両院で決議がなされたことにつきまして、どう受けとめるかということでございましたが、御指摘の決議につきましては、米国議会上下両院で、日米安保条約が日米両国並びにアジア太平洋地域の安全保障に不可欠であると認識した上で、米軍基地の不相応な負担を負っている沖縄県民の方々に対し特別の謝意を表明したものと理解しております。
 政府としては、沖縄県民の方々の負ってこられた大変な御負担について、これを痛切に認識しておりまして、これまで沖縄の問題を国政の最重要課題として取り組んできたところであります。今後とも沖縄県初め地元の御理解と御協力をいただき、SACOの最終報告の実施に向けて最大限の努力を行ってまいりたいと思っております。
 次に、普天間の基地につきまして、大田知事と関係省庁審議官の協議につきましてでございますが、残念ながら、六時間の長きにわたりまして協議が行われましたが、その結果は平行線で終始をしておるわけでございます。政府といたしましては、普天間飛行場の返還が可能になるため、海上へリポートの実現に向けまして、大田知事を初めとする地元の理解と御協力が得られますように、さらに今後とも粘り強く取り組んでいく考え方であります。
 第三は、米軍のプレゼンスにつきまして、これを具体的に説明せよということでございますが、先ほど総理からも御答弁申し上げましたように、現在、国際社会におきまして引き続き不安定要因が存在する中でございますので、沖縄米軍部隊の有する高い機動力、即応性を通じまして、在日米軍の重要な一翼を担っており、我が国の安全及び極東における国際平和と安全の維持に寄与しておると認識いたしております。
 可能な限り、国民の理解を求めるように努力をいたしてまいりたいと思っております。
 以上でございます。(拍手)

                        〔防衛庁長官登壇〕

○防衛庁長官
 海上へリポートの建設について、GAO報告書のような具体的なデータを国会に提出すべきとのお尋ねでございますが、このGAOの報告書は、GAOの独自の調査に基づくものでありまして、政府としてコメントする立場にはございません。
 昨年十一月に地元に提示した海上へリポート基本案は、現地調査の結果及び米軍運用所要についての概略的な調整結果を踏まえ、工法を含む同ヘリポートの概要やヘリポートの設置、運用が市民生活に与える影響、自然環境に与える影響等につき検討を行い、作成したものであり、その内容は一般に公開されております。
 なお、維持経費等については、今後、地元の御理解が得られた後、工法等を決定する過程で精査することといたしておりまして、現段階で具体的なことを申し上げることは困難であります。(拍手)

                      〔沖縄開発庁長官登壇〕

○沖縄開発庁長官
 法案の効果を上げるための関連施策の推進や既存産業への配慮についての御指摘をいただきましたが、御指摘のとおり、沖縄の産業の力強い発展を実現するためには、あの良好な環境の確保を図りながら、産業の基盤となる各般のインフラ整備をも推進することが極めて重要であると思っております。
 特別自由貿易地域の発展基盤となる港湾の整備、また観光振興地域へのアクセス道路の整備など、必要なインフラ整備は今後とも幅広く推進してまいる所存であります。
 また、農業や地場産業の振興につきましても、引き続き積極的に取り組み、沖縄経済の全般にわたる振興の実が上がるよう力を尽くしてまいる所存であります。
 なお、昨日の衆議院沖縄・北方特別委員会における私の、国際情勢の変化があれば前倒しもあり得べきという発言でありますけれども、これは正確に言わせてもらいますと、二〇一五年、沖縄の知事さんがアクションプログラムを出されました。そのアクションプログラムに沿って最終合意を見たのがあのSACOの報告であります。十分あのSACOの中にアクションプログラムが入っているのであります。ですから、SACOの最終報告を着実に実施することが、まずは基地の整理、縮小、統合につながりますと。
 同時に、国際情勢の変化にあっては、我々政治家は、前倒しもあり得るのだ、そのような強い決意を持って取り組む、さらには努力をする、それが政治の責任でないかとお答えしたような次第であります。