
■ 予算委員会 |
平成12年2月24日(木曜日) |
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| ○予算委員長 これより会議を開きます。 平成十二年度一般会計予算、平成十二年度特別会計予算、平成十二年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。 ○原口委員 民主党の原口一博でございます。 四人の先生には、きょうは大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。 私は、大きく分けて二点について御質問をさせていただきます。 一つは、あるべき金融の姿ということでございます。 糸瀬先生にまずお伺いをいたしますが、この間の金融の制度改革、このことが一体どういう状況をもたらしたのか。私は、金融再編のやり方が逆であったのではないかというふうに思っています。 委員長のお許しを得て、資料とパネルを使わせていただきます。 ○予算委員長 どうぞ。 ○原口委員 きょう、簡単なパネルを持ってまいりましたが、本来であれば、問題銀行を特定して、経営権を掌握して、経営責任を追及して、それから、それでも足りなければ公的資金を導入する、こういうやり方をやるべきであったはずですが、我が国の場合は残念ながらこうなりませんでした。むしろ、公的資金の導入が先にあって、経営責任の追及や経営権の掌握は非常に後ろに来てしまいました。このことが国民全体に対して、銀行に対する不信やあるいは政策運営に対する不満をつくってしまった。私は、これを早期に解消することが日本の経済あるいは財政の再建にとっても大変大きなポイントだというふうに思います。 今回、ペイオフが延期をされました。その政策目的は一体何だと先生は思われるのか。そして、きょう御陳述いただきましたように、八兆円問題、私も二回にわたってこの場で取り上げさせていただきました。日本のマーケットというのは非常に特殊なんだ、競争していても、だれかが出てきて、政府が出てきて助けてもらうんだ、こういうメッセージが送られるとすると、これは大変不幸なことであります。このことについてどのようにお考えなのか。 そして三点目は、預金保険法の改正を今政府は考えておられますが、実質、システミックリスクが起こる場合については、一定の制限を設けて、また政府の裁量でもって救済ができる、そういう法律の内容になっています。これは、実質、まだこれから審議がされますけれども、ペイオフを無限延期したこと、大きな銀行であれば、システミックリスクがあったら必ず政府は助けてくれるから、そこに資金が流入するのではないか、こういうことを考えておりますが、三点について、糸瀬先生の御見解をお伺いしたいと思います。 ○公述人(宮城大学事業構想学部教授) 金融の話でございますので専門分野なのですけれども、基本的に原口先生の御指摘に賛成する部分が多うございまして、金融システム克服のためのプロセスがどこかでボタンのかけ違えがあったのじゃないかという気はしております。 私も個人的な立場で、九六年、七年ぐらいから、まず検査があるべきで、それで問題銀行を峻別して、本当に再生の見込みがある重要な銀行については救うけれども、そうじゃないところは市場から淘汰してもらう、そういった意見を展開しておったのですが、結果的には公的資金の導入が先になりました。 これはある意味でやむを得なかった事情もあると思います。当時は、野党三会派は民主、自由それから新党平和だったと思いますけれども、ここの共通認識、それから自民党の共通認識も、ここまで危機的な状況である以上は公的資金導入を先にやっても仕方がない、これはその意味で仕方がなかったんだと思います。 ところが、その時点で二つ約束事があったのがほごにされておりますのが、十分に存続できる強い銀行に公的資金を導入するというはずだったのですけれども、結果的にほとんど横並びの状況で、本来ですと市場から退出してしかるべき銀行を含めて横並びの注入がされたというのが事実だと思います。この辺の峻別がなされなかったことは、反省点として残すべきだと思います。 それからもう一つ、長銀もそうですし日債銀もそうですけれども、国有化した後にどういった借り手を保護するかというところについても、健全な借り手については保護するということだったのですが、これも現実問題としてそこの峻別が行われておりませんで、ほとんどの借り手をそのまま保護しております。 今般、長銀のリップルウッド・ホールディングス社への譲渡において三兆六千億円の公的資金が投入されたということが国民的関心事になっておりますけれども、その一つの言われ方は、例えば東京都知事の石原慎太郎さんなんかは、三兆六千億円も公的資金をつぎ込んで長銀みたいな銀行を救って、あげくの果てにアメリカのわけわからぬ会社に持っていかれていいのか、そういった言い方をしておりますが、この三兆六千億円がなぜ必要だったかというと、長銀を救うためではなくて、長銀の借り手を保護するために必要だったわけですね。しかも、リップルウッドへの譲渡においては、リップルウッド社が今後の二次損失を負担しなくて済むように預金保険機構がその補てんをする、そういった特約までついております。 一事が万事、日本の金融システムの危機対策というのは、実は銀行を救っているようで借り手を救っているというのが現実だと思うのです。ここにこれから何らかの基準を持っていく必要があるというのが、まず第一の問題意識です。 それから、モラルハザードの問題があります。 この間の石原都知事の問題提起、個人的に問題提起として私は高く評価しておるのですけれども、非常に一市民として驚いたのが、一般国民の銀行に対する批判が非常に根強いということですね。これだけ銀行が悪者扱いされて、銀行を悪者扱いすれば東京都知事がリーダーシップを発揮したように見える、これは非常にいびつなことだと思うのです。 その一つの理由が、やはり銀行側の努力が非常に乏しいというのがあると思います。本来、公的資金を投入されるのであれば、現経営陣は少なくとも全員退いて責任をとるべきなのですが、そういった経営責任を明確にしている役員陣はおりません。この辺が非常に大きなモラルハザードになっております。 それと、あえて付言させていただきますと、最近合併報道が相次いでおります。みずほ銀行もそうですし、それからさくら、住友もそうなんですが、合併の計画さえ発表すれば何とか危機を乗り越えられるだろうというところで玉石混交の合併が行われて、実はその後の具体的な合併に向けたプロセスがほとんど滞っている。この間の中央信託と三井信託の合併が破談になりかけた、そういった報道もありましたけれども、この辺でも銀行の経営者の現実に対する認識は非常に甘いのじゃないかと思います。 それから、預金保険法の改正が十八日の閣議で通ったと思うのですけれども、これはあらゆる問題を含んでいるという認識が正式だと思うのです。金融危機対応会議というのが、今度首相を議長に、それから監督庁長官とか日銀総裁とか大蔵大臣で構成されるのですけれども、運用が、ここに客観性、透明性がもし担保されないとすると、システミックリスク発生という大義名分のもとにありとあらゆる銀行を救いかねない、そういった危険性はやはりあると思います。 そこで、アメリカでも確かに、大き過ぎてつぶせない、ツービッグ、ツーフェールという原則はあったのですが、これは過去形で、かつてはあったのですけれども、その後否定されております。これをやるとモラルハザードが蔓延するということで、九一年度の預金保険公社改革法で一たんこれを否定して、原則禁止にして、例外的に大統領が財務省の提案に基づいて救うということがあるわけですけれども、この例外部分の適用にどれだけ客観性、透明性を与えていくかというのが今後の課題です。それがないと本当に安易なペイオフの無限延期につながりかねない、そういった認識を持っております。 ○原口委員 全く同じ認識を持っています。国民の中に不満がたまり、そして不公平感がたまるときに、そこに起こってくる結論は非常にわかりやすい結論に飛びついてしまう。これは民主主義の一つの危機だというふうに思います。政治の側も、銀行やさまざまなものとの癒着を指摘されることのないような襟を正した姿勢が、モラルハザードを正す私たちの大きな自覚につながるものだというふうに思います。 次に、財政構造改革、財政の問題に入っていきたいと思います。 財構法が制定されて一番痛んだ、一番不利益を得た人たちはだれなのか。そしてその中で、財構法が凍結されても、医療やあるいはさまざまなセーフティーネットの部分は、結果的には、国の財政としてはもとに復活していません。そして、今の低金利の中で最も痛んでいるところはどこなのか、また、今度の年金改悪で最も不安に駆られているところはどこなのか、そこを明らかにしなければならないというふうに思います。 そこで私は、金森先生がおっしゃるように、ストップ・アンド・ゴーの財政政策をいつまでも続けるべきではないというふうに思います。しかし、先ほど糸瀬先生がお話しになりましたように、今お手元に委員長のお許しをいただいて資料をお配りしていますが、これが平成十二年度予算案です。実際に公債発行額が三十二兆円に上り、政府がいわゆる公債を発行しないとすると、実際に使えるお金はもう二十三・四兆円ということでございます。一年間で借りるお金を百年で返しても返し切れない。税収の弾性値の資料がその次の資料2でございます。この昭和から平成にかけての税収の弾性値、つまり財政の規律や財政の計画を持とうと思っても、なかなかアップ・アンド・ダウンが激し過ぎて厳しいというのがここに出ています。 そこで、私は、お二人の公述人がお話しになりましたように、もう財政再建のターゲットを示すべきだというふうに思います。単なる赤字の削減を財政再建と間違えているから、そこにはやはり、金森先生がおっしゃったように、また不況のどん底に落ちてしまうという恐怖があるわけでありますが、例えば、冒頭、これは吉野先生がお話しになりましたように、インフラの整備をするためにも空港の使用料を安くしたい、そう思ってみても、そこに予算をつぎ込む手だてはないわけでございます。 実際に日本の経済を再建させるためには、財政構造の改革にしっかりと踏み込むべきだというふうに思うわけでございますが、糸瀬先生と吉野先生の御意見をお伺いしたいというふうに思います。 ○公述人(宮城大学事業構想学部教授) 実は、吉野先生の資料の五ページに、人様の資料をお借りするわけではないのですが、これまでの政府の景気対策の一覧表がございます。既に九次にわたる経済対策を打ってきまして、それに打ち出した金額が百二十兆を超えているというのが今の現実なわけですね。この間の、一時細川政権もございましたけれども、政府の考え方の基本にあるのは、公共事業を中心とした業界にてこ入れすることによって、そこで経済の波及効果をねらって景気を何とかよくしよう、そういった願いがあったわけです。 これを九回にわたって繰り返して、その結果我々の手元に何が残ったかというと、二つの事実が残りました。その一つが、二〇〇〇年度末ベースで六百四十七兆という公債発行残高ですね。それから、もう一つの何が残ったかの事実ですけれども、景気がよくならなかったという事実が一つ残ったわけです。そうすると、今までのやり方でよかったのかどうかというのは、やはりどうしても考えざるを得ない時期にもう来ているんだと思います。 それを考えていく上では、六百四十七兆をほうっておけば、多分二〇〇六年ぐらいには国と地方合わせると一千兆円という数字になるわけですけれども、これをどう解決の道筋を示すのかは、やはり示さなければいけない時期になると思います。 先ほどの陳述のときと繰り返しのコメントになって恐縮なんですが、確かにアメリカは、百七カ月に及ぶ景気回復によって財政の危機的な状況を脱することができましたけれども、それは、アメリカの財政の赤字の規模がGDPのたかだか六三%という水準だったから可能なことであって、既に対GDP比で一二〇%を超えている水準から、景気回復だけでやるのは非常に難しいと思います。 これも繰り返しになりますが、バブルのピークで税収が六十一兆です。それに対して、今、八十五兆使っているわけです。今、税収が五十兆を切っている。これを景気回復だけで六十兆に持っていくことだけでも非常に至難のわざで、そこだけに依存することはできないわけですね。 それと、国民が実はこのことに気づき出したというのが、政治家の立場にとっては非常に重く受けとめていただきたいことだと思うんです。 私ごとで恐縮ですが、特に地方に講演に行く場合に、つい一、二年ほど前までは公共事業を懇請するような空気が強かったんですが、明らかに公共事業依存度が高いような地域においても、市民の関心がここに移ってきております。我々が消費にお金を使えないのは、国がどうやってこの問題を解決するかが見えないからだという声が実際聞こえてきます。 そうすると、私は決して、今すぐ緊縮財政に持っていくべきとか今すぐ増税をとるべきとは言っているわけではなくて、使うお金の中身をきちんと考えた上で、それで財政再建についてももう少し具体的な道筋を示すことが必要だと思います。 ○公述人(慶應義塾大学経済学部教授) 今原口先生の御指摘のように、やはり日本で必要なことは構造改革、特にいかにフレキシブルに予算を配分できるかということであると思います。 アメリカとかイギリス、先ほども申し上げましたけれども、いろいろなところで規制緩和をいたしておりまして、それがやはり、規模の問題ではなくその中身、そしてそれがいかにフレキシブルに行われるかということが重要ではないかと思います。 ○原口委員 お二人の公述人からお話しになりましたように、私たち、政策はやはり構想力だと思います。そして、そのタイミングと説得力だというふうに思います。 財政構造改革をやったときには、まさに世界の経済の歩みを、あるいは日本経済の状況を見誤りました。それは、金森先生初め皆さんがお話しになったとおりであります。そして、糸瀬先生がおっしゃるように、あのときの状況と今の国債の比率、これも大きく違います。とすれば、新しいフェーズでもって議論をしていかなければならない。 私は、二兎を追うというお話をされましたけれども、やはり、この二つの命題を相反する命題だと思ってとらえてきたところに日本の混迷の大きな原因があるというふうに思います。私たちは一刻も早く財政構造改革のプログラムを出すべきだ。しかもそれは、少しロングレンジの、長いレンジでもって財政構造改革のプログラムを出すべきだ。 今中心にやられています景気対策は、吉野先生がお話しになりましたように、従来型のものが非常に多い。それに対して私たちは、例えば競争が今倍になっています。企業の寿命も短くなっている。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、働く人たちはその間を移動しなければいけない。 日本において離職者のリスクというのは、大変、そのリスクも高いし、コストも高い状況であります。私たちは、住宅や年金や賃金の問題、さまざまなそういう問題に投資をすべきである。さらに、金森先生がおっしゃったように追加が必要だとするのであれば、そこにこそ投資をすべきだ、セーフティーネットを張ることにこそ投資をすべきだというふうに思います。 そこで、神野参考人にお伺いをいたしますが、スウェーデンのモデルをお話しになりました。スウェーデンに私もこの間行ってまいりました。私は、人が大切にされているなというふうに思いました。 サムハルというスウェーデンの企業に参りましたら、人口九百万人のスウェーデンで三万人の雇用がされている。三万人のうちの二万八千人は障害を持った人たち。チャレンジドと私は申します。神様から挑戦する課題をもらった人たち。その方々がお互いに協力をし合って、精神障害、身体障害、知能障害の方々が協力をし合ってお仕事をされていました。一般のスウェーデン人の所得の約九割の所得を得ておられました。ですから、五千億補助金をつぎ込んでいますが、六千億売り上げがある。一千億のリターンが来ている。この形に日本の政府支出も変えていかなければいけない。 日本の場合は、今、各企業に行くと、この基準に来ない人はどうぞ帰ってください、もうやめてください、そこに多くの不安があります。私ごとで恐縮でありますが、私の師匠である松下幸之助は、どんなに厳しいときでもただ一人の離職者も出さない、解雇者も出さない、そういうことを宣言いたしました。そこに安心が生まれ、そこに次なる躍動が生まれる。これは先生のおっしゃるとおりだというふうに思います。 そこで、質問でありますが、世界の中でこれほどパラダイムチェンジが行われているときに、教育の予算をかくも削減し、そして教育について確たるビジョンがなく、むしろ逆に、公的な教育はエージェンシーという形で揺らしている。これは教育の基本を少し誤っているのではないか、スコラというものの基本を誤っているのではないか。むしろ、先生がお話しになるように、今ある人材をどうやってリカレントしていくのか。 私は、橋本内閣のときに、金森先生と同じ議論を橋本さんとやりました。つまり、右のポケットと左のポケットが違うだけだ、だから余り心配する必要はないんだと。これは、私はひとつ検証すべき必要があると思います。 ただ、左のポケットに入っている政府が持っているお金が、やはりその中で劣化していることも事実でありますし、世界経済がグローバル化し、金融がグローバル化していくと、国内だけの移動で済まなくなる。先ほどお話しになりましたように、国債が大量発行されると、いつまでも日本にそのお金がとどまるという保証はありません。 ですから、質問に入りますが、教育に投資をする、セーフティーネットに投資をする、そのことについて神野先生がどのようにお考えなのか、お話を伺いたいというふうに思います。 ○公述人(東京大学経済学部教授) 私がこれから申し上げたいことは、先生と同じようなことだと思いますが、パットナムというハーバード大学の教授が、イタリアの南部と北部を研究して、南部よりも北部の方が人間の協力関係がきちっとしていて、今お話しのような、スウェーデンでごらんになったような、助け合いのメカニズムがきちっと働いているから繁栄をもたらすんだということを実証しております。つまり、協力こそ繁栄をもたらすということを実証いたしておりますので、私も、先生がおっしゃるとおりだと思います。 教育も、教育を完全に市場に任せますと、どうしても所得間格差が広がります。重要なことは、だれもが今起こっているIT革命にアクセスできるような能力をつけさせることだと思います。先ほど来の繰り返しになりますが、学校教育だけではなくて、再教育がかなり重要になってくるだろうというふうに考えています。 それから、日本はともすれば職業教育というのは見忘れがちですけれども、もちろんこれも重要になってまいります。それから、そういった教育や研究開発の成果、例えば、スウェーデンは世界で一番GDP比で研究開発費が高いわけで、三・九%だと思いましたが、日本は、私の記憶に間違いなければGDP比で二・八にしかすぎません。こういう研究開発から、できる限り中小企業を中心とした企業にシフトしてあげて新しい産業構造に乗れるようにしてあげる。重要なことは、新しい産業構造に乗り外れると結局景気回復というのはあり得ないということだろうと思います。 そのキーポイントというのは、人間が活力を出すこと。ごらんいただいたと思いますけれども、スウェーデンでは、経済力を強めるために環境をよくすれば、結局病気もせずに人間が一生懸命働けるんだということで打っておりますので、重要なことは、人間がやる気を出し、活性化しないと経済というのは活性化しないんだという本質を見忘れないで政策を打つことだろうというふうに考えています。 ○原口委員 アメリカの大統領選挙においても、公約の第一に来るのは、どういう人材をどのようにしてつくるかということであります。私は、そこにこそ、今先生がお話しになりましたように、政策の重点があるべきだというふうに思います。 さて、やはり新しい産業は情報と知識を中心としたものだというふうに思います。この産業を育成するためにボトルネックとなっているものは一体何なのか、そしてそれをブレークスルーするための政策は何なのか、これを吉野先生、そして糸瀬先生、お二人にお伺いしたいというふうに思います。 ○公述人(慶應義塾大学経済学部教授) 昔の産業政策の場合には、政府がこういう産業を興そう、追いつけ追い越せ型でやってきたと思うんですが、今後の産業政策は、やはり市場の中から強いものが生き延びていく、そういう形の産業政策であるべきだと思います。 そのためには、金融の構造が、陳述の中で申し上げさせていただきましたけれども、銀行から流れるということばかりでなく、リスクをとりながらそこにお金を流せるような市場型間接金融、そういうものをつくっていくという資金の流れで、やはり情報通信産業そのほか、市場から成長しそうな産業にお金が流れる、中小企業にも流れる、こういうシステムが必要ではないかと思います。 そのためには、まず一つは、金融の制度を今までの銀行中心から、やはりもう少しマーケットに密接した投資信託そのほかの商品が日本人の手元で買うことができる。我々は今まで、多くの場合には近くに店舗があるところで預金あるいは貯金をしておりました。ですから、そういう我々の身近な店舗でいろいろな金融商品を売ることによって、個人がそこから選択し、それのお金がリスクテークとしての産業に流れる、こういうことがまず一つ必要ではないかと思います。 それから二番目は、今原口先生が二番目に御指摘された人材も関係すると思います。それは、アメリカのような国ですと、非常にいい大学を出ても自分で企業を起こす。日本ですと、大学を出るとやはり大企業に就職する、こういう形でそれぞれが今までの仕切られた中でやっていたわけでありますが、アメリカの情報通信産業を見てみますと、有能な方が自分で会社を起こす、企業を起こしながら新しい産業をつくっているわけです。ですから、人材の育成と同時に、そういう人にお金が流れるような金融システムにするということではないかと思います。 〔委員長退席、町村委員長代理着席〕 ○公述人(宮城大学事業構想学部教授) 情報産業を日本において育成していくIT革命を推進するためには何が必要かという御質問と理解いたしましたが、三つ必要だと思います。 一つは情報教育の部分で、これは繰り返しになりますので簡単に申し上げますが、今この分野をきちんと教育できる教員は、大学においても高校においても非常に少ない状況でございますので、この分野において現役のこの世界の人たちをさらに活用する方法が一つ必要だと思います。 二つ目は、今吉野さんの話と重なりますが、ファンディング、資金調達の話ですね。これは、幸いマザーズもできましたし、それからナスダック・ジャパンもできておりますので、かなり道筋はついてきたと思います。ただ、マザーズについてはいろいろな問題がありますので、この辺は各論になりますけれども、ここの上場基準等についてはきちんと見直す必要があることも事実です。 三つ目が、情報コストを劇的に下げる必要がやはりあるということです。NTTがかなり下げてきてはいますけれども、日本の情報通信のコストがアメリカに比べて大体四分の一と言われていますけれども、同じ時間に伝達できる情報量を掛け算すると、まだ四十倍ぐらいアメリカに比べて開きがあるわけですね。これを劇的に下げないと、ビジネスの世界においても、それから個人でやるインターネットの世界においても、ショッピングの世界においてもできないわけです。 なぜ下げられないか。これも釈迦に説法ですけれども、NTTの雇用の関係があるわけです。かつて三十万人いた職員が今十三万人台まで減っていますけれども、その減った十七万人というのはNTTの関連会社できちんと雇用されているわけですね。ここに、メスを入れるという言葉は適切ではないと思いますが、トレードオフになっているのは、NTTにおける雇用と情報通信革命の進展が両てんびんにかかっているという事実は、やはり認識を持つべきであります。 NTTの株主はだれかというと、五三%は国なわけですね。国が株主なんです。過半数の株を持っている国が、日本の将来にとって本当に必要な政策は何かということを考えていくと、もしかすると、国も、郵政省とNTTに対して、もっと劇的に下げる方向に議論を持っていって、そのかわり雇用は別の角度で支援しましょうという方向に切りかえていく必要があるんじゃないかと思います。 以上です。 ○原口委員 お二人に、ITに向けての隘路とブレークスルーの方法を教えていただき、本当にありがとうございます。 私は、雇用という問題は、やはりセーフティーネットがあってこそ雇用の流動化というものが行われるべきであって、先に雇用の流動化が来て、そしてセーフティーネットがなければ、日本のような均質な社会においては大変な社会混乱をもたらすというふうに思っています。一円教育費を削ると七円分、社会不安としてそれが七倍分の悪い効果を出す。私は、日本の社会の本質を見きわめながら構造改革をやっていくべきだというふうに思います。 時間が限られていますので、財政健全化に向けてのプログラム、きょう糸瀬先生出していただきましたが、私は、単なる赤字削減を目標にすべきではないというふうに思います。単なる赤字削減が目標になってしまうと、そこには将来の大増税が来てしまいます。そうではなくて、私たちは、五年間ぐらいはむしろ増税をやらずに、歳出構造、歳入構造の改革、規制の緩和、これでもって経済を立ち直らせる、このことが必要であるというふうに思います。 アブハチ取らずという日本のことわざを引いていただいて、大変勇気をいただきました。神野先生に、最後、あるべき健全化のプログラムについてお話をいただきたいというふうに思います。 ○公述人(東京大学経済学部教授) 私は、また繰り返しになりますけれども、あえて増税をしても構わないというぐらいの気持ちで臨んでいいんだろうというふうに思います。 ただし、その場合には、支出をどういうふうに打つかということが一つ重要になりますし、どういう税金で増税をしていくのかということが問題になってくるだろうというふうに思います。現在ですと、消費を萎縮させてしまうような形で増税をすべきではないということですね。 それからもう一つ。現在の税構造でいきますと、これは、高橋是清が昭和恐慌のときに一番苦労したことでありますけれども、その当時は、法人税とか所得税のウエートが小さかったものですので、景気が回復したときに自然増収で税が上がってこないのですね。そうすると、どうしてもそれぞれのことに増税に打って出ざるを得ない。これはかなり至難のわざになります。 ですから、今の場合に、残念ながら日本は既に法人税と所得税を減税しておりますので、景気が回復したときに、税制の所得弾性値が低くなっておりますから、自然増収に頼って財政再建ができるかというと、これは甚だ疑問なんですね。 そこで出てくるのは、どうしても消費税に頼るということになるわけですが、これは多分至難のわざでしょう。というのは、私の調査では、国民は、一番増税すべきではないという税金を消費税だと考えているわけで、これを説得するというのはかなり難しくなるだろう。そこで、どういうふうな構造を考えながら歳入を考えていくのかということが一つだと思います。 それから、おっしゃるとおり、重要なのは歳出でして、お手元のスウェーデンの産業構造を見ていただければわかりますが、明らかに知識集約的な産業は伸びているのですね。そういうところが伸びるような政策を打って歳出構造をがらっと変えるということが重要だと思います。 ○原口委員 ありがとうございます。終わります。 |
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