2001年8月11日
原口一博国会通信(42)                         DIGITAL SYOKASONJYUKU

       政策評価を行う納税者に提供されるべき会計情報
                  納税者の視点からみた構造改革

 「納税者の視点から、現在の中央集権型官僚統制構造を解体して、成熟した市民型民主主義社会にふさわしいシステムを構築したい。」という声がたくさんよせられています。そためには、現状の分析が何より大切で、納税者の評価の基礎となる情報が公正に開示されていて、しかもそれが誰にもわかりやすくまとめられている必要があります。公会計制度を見なおしと納税者の視点にたった政策評価制度の構築が何よりも大切な理由がここにあります。

 以上のような問題意識にそって今年4月に開示された特殊法人の財務諸表を公認会計士の吉田寛氏に分析をお願いしていたところ、先日、「納税者の観点からみた3道路公団の財務諸表」分析と政策評価を行う納税者に提供されるべき会計情報という論文を届けていただきました。日本JTRの主要メンバーである吉田氏の鋭い論点は、構造改革を納税者の視点から進める上で議論の基盤としたいものです。


(吉田寛氏の論文)

 政策評価を行う納税者に提供されるべき会計情報

 納税者の観点からみた3道路公団の財務諸表

 政府活動のコスト負担者としての納税者

 公会計の対象となる政府においても、企業会計の基盤となった出資と経営の分離に似た現象は観察される。政府と納税者の利害関係の対立である。多くの国は専政制から君主制、君主制から共和制、さらに民主制へと移行している。政治形態が変化しても政府に必要とされるのは徴税である。徴税担当者の主要な関心事は、最小の抵抗で最大の金額を徴収することにあった。民主主義に移行しても、資金調達の方法が総支出の歯止めとして作用すべきであるということがほとんど考慮されなかった。このため「他の人が費用を支払うであろう」という信念を助長する課税方法が多用された。

 最近一部の自治体が特定の業種に課税するという方法で、新たな税目を創出している。これもやはり、多数派を構成する自分達には適用されない課税方法を利用して少数派に課税するものである。

 税目が増え、税に関する規定を複雑化することで納税者はあるべき税を語らなくなる。納税者の目はあるべき税から、そこにある税制度に関心が移り、やがて複雑すぎる税制度を理解することを断念する。徴税担当者の目論見である徴税額を増やすことには成功したが、支出の歯止めは機能しない。

 公会計に対する関心が高まっているのは、政府の財政が破綻しているのではないかという危惧と、その後に続く増税に対する警戒からである。民主制を前提とする政府においては、政府と納税者の利害の対立関係は税に帰着する。企業会計において利益が果たした役割を公会計においては税が果たす。

 政府がその事業に支出をすることを支持する多数派がその支出を承認した後に、財源の調達段階では多数派からの抵抗や怒りを最も少なくする方法が利用される。費用を負担するのは多数派ではなく、誰か他の人がその負担するようになる。

 政府の貸借対照表、あるいは納税者の貸借対照表に記載される将来の税金は、意思決定に加わっていない者も負担する税金であるという特質がある。いずれの国においても、均衡財政が重視されるのは、生れてくる子供の所得の使途を、将来の税金が浸食し、その子供が自分自身の所得の使途を選択する自由を奪ってしまうからである。

 これまでも、均衡財政を損なうことが誰か他の人に責任を負わせているという点への気付きはあったが明確ではなかった。納税者という主体を認識することで、政府から納税者への請求額を負担しなければならないのが誰なのかが明確になる。

 「人民が全体として最高権力を持つ」とされる民主主義だが、同時に「人民はその意思である投票によってのみ君主であり得る。」投票も選択である以上、経済原則に従うべきである。費用をともなう政府の活動に関して合理的な決定が期待できるのは、各人の負担を考慮に入れたうえで投票が可能な場合である。

 経済原則に従って意思決定を行うために、成果報告書は行政成果とその費用の発生と負担を明示するので、政府活動の評価において有用である。政府は利益を目的としない。企業はProfit Centerであり、政府はCost Centerである。政府の成果を説明するための成果報告書に、Profitを前提にする収益(Income)を計上することは適切でない。政府の成果報告書には収益は存在しない。そこにあるのは成果とこれを獲得するために発生した費用とその負担を誰に依存したかである。 

 これに続いて吉田氏は、私がお願いした道路公団の財務諸表についての分析を記しておられます。

 「政府の支出は議会の承認を必要とする。納税者の代表である議員が支出について合理的な決定を可能にするには、納税者の負担が開示されていなければならない。従来の予算は、政策毎の納税者の負担は明示されておらず、無責任にして浪費的な支出を促す誘因を備えている。」と看破した上で納税者の観点から貸借対照表を組替えて、あるべき姿を具体的に提示していただいています。吉田氏はじめ多くのご協力いただいた皆さんに感謝したいと思います。この具体的な諸表をもとに構造改革の全体像を描き出していきたいと考えています。

(道路公団に関する分析、表・データは、紙幅の関係で、私のHPに掲載します。)



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