2001年9月27日
原口一博国会通信(51)                         DIGITAL SYOKASONJYUKU

   医は国境を越えて  アフガニスタンは今・・・・中村哲医師の報告

 パキスタン・アフガニスタンで医療活動を続けてこられた中村哲医師から現地の様子を詳細にうかがいました。1984年から壮絶という言葉以外には表せないような活動をしてこられた中村医師の肉声は、多くの参加者の魂を震わせました。追い立てられるように「何が日本にできるか」結論を急ぐ「拙速」を反省すべきです。一人一人の命を救う活動に自らを投げ打ってきた人の話は、私達がこれから手を染めようとしていることに強い警鐘を鳴らすものでした。失われた命への贖いは、法と正義のもとで行われるべきです。新たな無辜の人たちの命で贖われてはなりません。

 生存する権利が最も偉大な権利であること。「日本にはしないでいい役割もあること」「この旱魃と飢餓、経済制裁に加えて軍事活動が加われば600万人以上が死に瀕すること」など実践者でなければ知りえない生の情報を与えていただきました。

 世界の中でも最も親日的な国がアフガンニスタンであること。テロの犠牲者を悼み、祈りを捧げていた多くのアフガニスタン人が、無差別攻撃が自国に向かうかもしれないということを聞かされて反英米感情を極限まで高めていること。農業生産の9割以上は打撃を受けており、9割以上の家畜も消えていること。2500kmの長大な国境警備は土台無理であること。10人送れば8人が不適応をおこすような過酷な条件で外国から急に派遣された部隊ができることが何があるかはなはだ疑問なこと。このままでは間違いなくホロコーストになり、その一番の犠牲者は、小さな人たちであること。国連制裁で村が消えていっている。外来で診察を待っている間に抱いている子どもが冷たくなっていく。病気どころではない、まず水だということ。

 カラコルム・ヒンズークシ山脈6,000M、7,000M級というとてつもない巨大な山。広大な山岳地帯を抱えるアフガニスタンは、日本人には馴染みが薄い地域かもしれません。国民の全てがアフガニスタンでは、イスラム教という世界普遍宗教の原則が国家的価値より優先します。一週間歩いた上にさらに馬で3日かかるという移動の困難さ。「旧ソ連軍は、近代化と称して保守的農村を丸ごと殲滅しました。」「日本とアフガニスタンの建国記念日は同じです。」「巨大な帝国主義に打ち勝ったアジアの同朋が日本です。」「93年には水田が復興しましたが、蚊の発生と悪性マラリアの大発生を招きました。」「昼夜をわかたず診療しても一日に診ることの出来る患者は、300名がやっとです。」「不安にかられた住民が診療所を襲撃して二名の殉職者を出しました。客を手厚くもてなす文化と目には目をという原則。二名の命が奪われたら相手の二名の命を奪うのが掟です。発砲する方が発砲しないことより容易です。しかし、私は皆殺しにされても発砲するな。私達が死んでもペシャワールにいる仲間がいる。」「攻撃するものは必ず後悔する。」結果的に中村医師は村の治安回復を谷の長老会議に約束させることに成功しました。

 「体験や情報もないままに物事が進んでいます。」命の尊さに違いがあろうはずがありません。大規模な軍事行動で奪われるであろう側の命についての議論がおこってきました。米国内も冷静さを取り戻しつつあります。

 「人を人でなくする力」の連鎖を止めるのは、威嚇でも軍事行動でもありません。中村医師らの活動に心から敬意を表します。


中村医師とペシャワ―ル会(勉強会配布資料より抜粋)

 1984年パキスタン北西辺境州の州都ペシャワ―ルに赴任。以来17年間に亘りハンセン病のコントロール計画を柱にした主に貧民層の診療に携わる。98年には基地病院PMS(ペシャワ―ル会・医療サービス)をペシャワ―ルに建設、パキスタン北部に2つの診療所もあわせ持つ。

 1986年からはアフガン難民のためのプロジェクトを立ち上げ、現在アフガン無医地区山岳部に3つの診療所を設立して、アフガン人の無料診療に当たっている。また、病院・診療所で患者を待つだけでなく、辺境山岳部へも定期的に移動診療を行っている。現地スタッフ220名、日本人ワーカー5名。年間診療数約20万人。

 現在、アフガニスタンは今世紀最悪といわれる旱魃に見舞われているため、昨年8月より医療活動の一環として水源(井戸・地下水路)600本を確保すべくアフガンで陣頭指揮を執っている。(2001年8月現在550ヶ所が使用可能。現地スタッフ700名、日本人スタッフ5名)。さらに本年3月からはアフガンの首都カブールに、緊急診療所を5ヶ所開設して医療活動に当たる。アフガン内部プロジェクトは9月23日段階で継続中。

ペシャワール会(事務局=福岡 連絡会=東京・名古屋・大阪)
  寄附受付01790−7−6559 郵便為替番号
  詳しくは092(731)2372へ。

 著書 「ペシャワールにて」「ダラエ・ヌールへの道」「医は国境を越えて」(石風社)
    「アフガニスタンの診療所から」(筑摩書房)近刊
    「医者井戸を掘る アフガン
旱魃との闘い」(石風社)



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