2001年10月26日
原口一博国会通信(54)                         DIGITAL SYOKASONJYUKU

      国債市場について −先送りのつけと危機の実相−

 日本の財政危機が叫ばれてからどれくらいの時を見送ったことでしょうか?増税無き財政再建、財政均衡化法、財政構造改革法などいくつかの内閣がその存続をかけて挑戦した主課題も、結果から見るとほとんどが失敗に終わっているのは何故でしょうか。「莫大な不良債権を右手に破綻の危機に瀕するほどの巨額の財政赤字を左手に滅びの淵に向かって綱渡りを続けている」状態を私達はどのようなシナリオで回避すればいいのでしょうか?

 世界の発展途上国累積債務の総額は229兆円ですから、私達が抱える666兆円という数字がいかに桁違いの数字かわかります。ここでは、信頼する財政政策責任者のレクチャーをもとに666兆円という数字が何を意味するのか。国債市場は現在、そして今後どのような実相を示すのか、現時点での基本的な認識を整理しておこうと思います。

 まず666兆円という国・地方の債務残高の中身ですが、国(普通国債+長期借り入れ)残高(506兆円)+地方債残高(188兆円)―国と地方の重複分(28兆円)のことです。平成13年度で国の公債残高は約389兆円でそのうち赤字国債累積残高(特例国債)が177兆円、建設国債残高が211兆円です。

 小泉総理の公約である国債発行を30兆円おさえるという数字の意味は、新規財源債のことを示しています。今年度国債発行額は、131.9兆円で、今日現在の新規財源債の発行額は28.3兆円ですから30兆円までは、あと1.7兆円しか「余裕」がありません。131.9兆円の内訳は、この28.3兆円と借換債59.7兆円、財投債(市中発行分)10.5兆円、財投債(7年間の経過措置による郵貯・年金・簡保の直接引き受け分)33.4兆円となっています。今年だけでもマーケットに対する98.5兆円の圧力が加わる勘定です。これがいかに大きな力かおわかりいただけると思います。国債の金利を上げずに、長期的な調達コストをどう削減するか、まさに当局の努力も限界に近づいているのではないかと思えます。

 次に平成13年度国債を消化方式内訳で見てみたいと思います。多少細かくなりますが、前述した98.5兆円のうち公的部門で消化する郵貯窓販(2.45兆円)日銀乗換(6.13兆円)をのぞくと20.4兆円がシ団引き受け(10年国債)で、69.51兆円(短期国債が26.41兆円)が公募入札となっています。シ団引き受けにしても6割が価格競争入札になっていて、しかもその割合は低下しているのが現状です。

 極端な議論の中には、金利の低い今こそ長期の国債を大量に発行すればいいではないかという議論がありますが、マーケットはわざわざそのような損をするリスクを取るはずがありません。逆にTB(短期債)の金利は現在0.1%でこれを次々に借り換えればいいという者もいますが、借換リスクは無視できない大きな要素です。

 この夏までは、株価と長期金利は連動した動きをしています。しかし、これが参議院選挙を境に株が下がっても金利が下がらないという現象が現れています。これは、マーケットの強い懸念がそうさせているのではないかという指摘があります。主要格付会社による日本国債格付も9月6日にMOODY’Sが引き下げ(Aa2⇒Aa3)方向で見直すことを発表、S&Pも2月にAAAAA+に見直したものをさらに「安定的」から「ネガティブ」へとういう見通しを示しています。Fitchも同じような見通しを示しています。これを国際比較してみるとG7のほとんどの国がAAAランクであるのに対して日本の国債格付けはポルトガルやチリと同じランクであったものがイタリアやチェコと同じような位置付けまで見直される危惧も視野に入ったことを意味しています。

 中期財政展望の資料を読んでみるとさらに驚くべきことがわかります。この試算によると新規発行債は、14年度で33.3兆円、15年度で35.4兆円、16年度で38兆円という伸びが必要とされています。借換え債は、さらに深刻で14年度70兆円、15年度76兆円、16年度83兆円、17年度99兆円、18年度107兆円、19年度117兆円、20年度133兆円もの巨額の借換が必要となります。これがいかに危機的で天文学的な数字か政治の理解が進んでいると思えないのも深刻な問題です。

 「先送りしてきたつけが壊滅的な事態を招こうとしています。」という識者の警告が現実化しています。しかも国債の所有者内訳を見ると政府等で36.2%も保有しています。まるで蛸が自らの足を食べながら命をつないでいるような実態です。市中金融機関の33.4%、日銀の14.3%に対して、海外は4.2%、家計は3.3%にすぎません。新たな通貨統合も視野に自由主義経済の枠組み造りを開始すべきときに、その先導役となるはずの日本の状態は危機的です。まさに「無策と先送りの後遺症で「財政の発散=破綻の危機」にある。これが日本国債の実相ではないでしょうか。どのようにこの危機を乗り越えるか、私達は財政再建の道筋を練り上げて発表してきました。プライマリ―バランスを回復させるだけで16兆円もの一般政府歳出削減が必要だとの見地から独自の削減案も提示しました。半年前のことです。しかし、事態はあの時よりさらに悪化しています。まさに時間との戦いです。 

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