2002年6月18日
原口一博国会通信(83)                         DIGITAL SYOKASONJYUKU

        日本・EU議員会議―日本経済再生 −日はまた昇る−

 日本・EU議員会議の日本経済についての議論の一部分をご紹介いたします。


(ハーバー議員)
 議長ありがとうございます。
 昨年の秋、竹中氏と平沼氏にお会いし、改革案に関し英語版を読ませていただきました。分厚いものでしたが、その中で4点要約させていただきたいと思います。

 「日本の経済は世界第
2位なんだ、まだまだ成功しているんだ。」とよく同僚に言われます。貯蓄率も先進国中トップ。技術的にもかなり蓄積があり、優良企業が集まっています。例えばトヨタなども世界有数の企業であります。やはり、日本の経済は基盤には強みがあります。膨大なる資産、とくに資本面でも知的面・組織面・マーケティングでも非常に大きな強みがあります。

 まだ使われていない資産、例えば貯蓄を活用して新規雇用を創出できるのではないかと、そして、新規事業を創出できるのではないかと思います。
国家の独占企業は近代社会にはそぐわないと考えます。EUもエネルギー・ITの民営化を進めています。日本においてもそれが重要です。もちろん、今日本でも話題になっている様に、普遍的サービスが提供できるかは問題です。即ち、地方でも十分サービスが提供できるかという問題。しかし、スエーデンでは郵政事業の民営化では非常に成功を収めています。ここは、かなり人口が分散した、過疎地域の多い国です。小泉首相は民営化推進派なのだから、反対も多いだろうが大胆に民営化して欲しい。しかし、欧州の例を見ても民営化の効用は非常に大きい。

 日本の銀行制度、不良債権の問題も挙げられます。銀行制度が動けない状況になっています。ベンチャー事業が資金を得ようと思っても融資を受けられない。この問題を解決することが、経済のダイナミズムを推進する鍵になるでしょう。
日銀の問題もあります。経済を再び膨張させる場合に、インフレターゲットを行い、流動性を緩和するのか。
最後に、競争の問題を挙げます。欧州では、単一市場を作るに当たっては、単一の競争政策を取ることが重要でありました。競争政策について、日本の意見を聞きたい。日本市場も、外資に解放するつもりがあるのか伺いたい。特に通信分野について、欧州企業は多大な資本を投下している。日本市場で、無差別的な扱いを受けたいと思っています。

 結論として、日本の規制緩和が促進されて、直接投資が増加すれば、欧州のノウハウを提供することができ、日本の求めている経済のダイナミズムが得られると考えます。年金・金融サービスにおいても、市場開放を促進すべきです。
日本とEUは協力していくことでお互いのプラスになります。日本は、ポテンシャルを発揮できるようになります。


質疑応答
(池口議員 参議院 民主党)
 日本の雇用情勢についてアドバイスを得たいと思います。2001年夏以降悪化の傾向が強まっています。完全失業率は昨年末には5.5%に上っています。欧州から見れば低いかもしれませんが、日本にとっては高い。今後も、設備投資が引き続き抑えられていき、少子高齢化・産業構造の変化も進みます。

 このような流れの中で、従来の日本型雇用賃金体系、終身雇用・年功序列制が崩れています。従来のライフスタイルを見直す必要があります。また、私自身も昨年まで労働組合の役員をやっていましたが、民間企業の労働組合も、従来と違った働き方を模索しているところです。そのような流れの中で、昨年の12月に政労使ワークシェアリング検討会議が結成され、失業率改善のための検討を行っています。今後、更なる構造改革・不良債権処理進展の中で、雇用情勢のさらなある悪化はありえますが、失業対策を早急に実施し、不安を取り除く必要があります。

 日本の失業率の高さが故に将来不安を呼び、高い貯蓄率にもかかわらず、そのお金が消費に向かいません。それに対し、欧州では高い失業率にもかかわらず経済成長が高いのは何故でしょうか。また、欧州各国ではワークシェアリングが盛んだと聞きます。そこで、この制度が失業率改善に対してどの程度有効なのかお聞かせください。


答え (ハーバー議員)
 もしこの質問に対する答えを知っているならば、私は大変な人気者になっているでしょう。明確な点は、経済成長がなければ何も達成できない。また、スタートアッププログラムなども考えなければならない。また、中小企業を設立して運営していくようなプログラムも考えなければならない。雇用は中小企業が提供している面が大きいからです。大企業は、常に合理化を率先してやります。故に、中小企業を育成することが大切です。

 逆にお伺いしたいが、日本も中小企業を支援していると聞いていますが、最終的な問題は銀行が何処までリスクを取る用意があるかです。
100%の担保を取らないと融資しないこともあると思います。だから、ヨーロッパでは新たな企業を設立する時には、ローンファシリティーの優遇措置も採っています。
EU
では、加盟国中で労働法が統一されていないので、改正・修正の必要があります。
それから、中国とも話している点ですが、前に勤めていた企業から年金を受け取れなくなっています。年金もEUの各加盟国中の問題ですが、今後は労働者自らが資本を積立ていき、保険のようにする必要があります。中国の場合には、国営企業を近代化・分割民営化するときに、この年金の問題がボトルネックになって実現が難しいことが多い。年金の可動性があれば、労働者がその年金をもって他の企業に移れるので雇用の柔軟性がもてます。

 日本に尋ねますが、景気後退を克服しうる心理的要素はどのようなものがあるのでしょうか。



答え (原口議員民主党 衆議院)
 ハーバー議員の最後の問いに対して専門が心理学でありますので、その立場からも若干発言させていただきたいと思います。

 心理学の実験に次のようなものがあります。小学校1年生に1割出来ているパズル、5割出来ているパズル、9割出来ているパズル、どれでもいいから選んでごらんといって課題を与えます。伸びる子供は1割のものを選びます。自分の力で問題を解く力、これを知的なコンピテンツ(潜在能力)と私たちは定義しております。

 一言で言えば日本経済は、このコンピテンツが阻害された状況(9割のパズルの状態)を長く続けています。このことが低迷の一義的な原因です。ここを克服できれば日はまた昇ります。


 先ほど午前中にも話しましたが、GDP500兆の国で310兆の政府歳出がある国は、どういう国でしょうか。この政府歳出の構造に1つ大きな問題があると考えています。日本経済の現状は、同僚議員のお話のように決して悲観すべき状況ではありません。ただ、少なくとも2つのブラックホールを閉じなければ非常にクリティカル(危機的)な状況にあるとも考えることができます。

 1つは不良債権のブラックホール、右手に膨大な財政赤字、そして左手に膨大な不良債権を抱えて、綱渡りをしているのが現状です。先日、大手行に対する金融特別検査を実施しましたが、新たに大手行だけで8.7兆円の不良債権が発覚しました。

 やはり、処理の仕方を立て直さなければいけません。今まで不良債権処理をしてきた国ではあるスタンダードがあります。それは、問題の銀行を特定し、そして、リストラクチャリングを行って、その後公的資金を投入する。これが普通のやり方です。しかし、日本ではこの10年間逆のことをやってきました。特に、ペイオフ解禁をこの4月に行いましたが、マネーベースで要求払い預金(普通預金)がこの短い期間で82兆増えています。それに対して定期預金は53兆円減っている。20兆くらいの大きなメガバンクでも1日の資本移動で吹っ飛んでしまう。そういう状況を、私達は無視するわけにはいかないと考えています。

 第
2は、歳入と歳出の構造に入っているパワーブローカーのブラックホールです。税の様々な特別措置があって、業態ごとに様々な優遇措置があります。これが私達の産業の活力を奪ってしまっています。GDPデフレータと生産性の統計を採ってみると、生産性の低いものに過大な投資をするためにここで競争が起こらない。私達の目の前を大きな古びたダンプカーがのろのろ運転しているのです。このダンプカーを取り除かなければ、私達の経済の活性にはなりません。

 一方、ハイテク企業は自分達の得た利益を、そののろのろの方に取られてしまっている。このことが、日本の二重の制約になっています。故に、このブラックホールを閉じることが最も喫緊の課題です。

 先ほどのパズルの心理学実験に則して申し上げれば、日本は官が9割のパズルを作りつづけていること。これが自由を奪い、日本がポテンシャルを発揮できない原因となっていることを指摘しておきます。

 第二は、ポテンシャルが十分あると申しましたが、700兆の政府赤字を持っていますが、実は資産は、1、100兆円持っています。知的資産も世界最大級です。その中で政府が管理している知的財産は86億円です。知的財産の部分が完全に寝ています。この部分を起こすのが、私達はナレッジエコノミーに向かう大前提であると思います。

 私は、民主党の規制改革PTの座長をしていますが、ひとつだけ例を挙げましょう。

 2020年までに通信の90%はインターネットになると予測されています。80万テラバイトが送れるでしょう。それは、今のような電話回線ではなくて全てがIPの上に乗ってくることを意味します。

 しかし、日本にはまだ様々な規制があります。例えば無線LAN一つとってみてもアメリカはUN NIIつまり800メガヘルツのところを全部あけています。欧州では580メガヘルツの電波帯を2つに分けて管理しようとしています。日本では、今後主流になる無線LANの中核であるこの帯域4.9メガ〜5.85メガの帯域を細かく分けてしまっています。しかも、ここにはレーダーが入ってしまって、そこにはアクセスできません。(大きて広い高速道路をわざわざ誰が細かい車線に切り刻む必要があるでしょうか。これでは普通車はおろか、バイクも通れません。)私達はまたここでも古いストラクチャーで塞いでしまっているのです。こういう規制の改革を積極的に進めていけば、日本経済再生全く心配要らないと考えますが時間はなくなりつつあります。

 最後に
1点だけ。私達はスエーデンのサムハルという企業に注目していることを申し上げます「。安心なくして改革無し。」「一人一人のタックスペイヤーとしての権利が守られる」ことが多くの産業の基礎になるだろうと思います。

 私達は、規制を3つに分けて考えています。1つは競争政策を阻害している規制。もう1つは社会で人が人であるために必要である規制、ここでは逆に規制の強化です。環境の規制も強化です。しかし、社会的規制で弱者の顔をした強者に先ほどのパワーブローカーがたくさんの資源を投入しています。このところについて大胆な規制改革をしていきたいと戦略的な規制改革を提言しています。

 結びに一言、私はドイツのミハエル・エンデさんという方の遺言を取り上げたいと思います。ヨーロッパの知恵とは何か、現代ではインターネットの世界では瞬時に無限大の情報が行き交います。マネーの世界でもそうです。実体経済の数十倍のマネーの流通。そしてグローバルとは何なのか、アメリカの資本のグローバル化が何を生んでいるのか。そこには、エンデさんが言っている様に、資本・お金というのをもう一度定義しなおす必要があるのではないでしょうか。実体経済と10倍以内の規模であればヴァーチャルのマネー流通は許されるのか。20倍では貧富や紛争を引き起こしてしまうのか、負の遺産になってしまうのか。このこともいま金融セクターで議論しているところです。

 2年連続予算組換え案を提出し、日本の莫大な予算を効果的に使えるように構造改革を進めていきたい。そのためには欧州の知恵がヒントになると確信しております。ありがとうございました。


(五十嵐議員民主党 衆議院)
 ハーバーさんから不良債権問題・インフレターゲット論の指摘がありましたが、日本の今の問題は、マネタリーポリシーが効かないことです。日銀は流動性を豊富に供給をしているが効果をあげていません。

 1つは、金利低下が日本の国民には別のビヘイビア−(態度)をもたらします。金利が低ければ低いほど貯蓄に回ります。

 1つは。銀行が土地担保がなければ金を貸さないという特殊なビヘイビアーを持っていることです。日本の貯蓄の中に生命保険が入っていますが、この生命保険会社は0金利のために大変な逆ザヤに悩まされていて、大手の生保会社も数年を経ずに破綻が近い状況に追い込まれています。これが、国民の消費者心理を冷やしています。

 量的緩和も限界にあり、金利も実質マイナスに達していることが、逆に日本の景気のテイクオフを妨げている状況です。私達はこの状況に別の観点から検討を加える必要があります。

 国際産業の立地競争を妨げている障害を取り除く政策を集中して行う必要があります。とくに、税制を改革する必要があります。個人消費につながる税制にすべきです。ヨーロッパ北欧所得で実施されている、ローン利子に対する所得の控除を提案しているところです。


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