2002年10月1日
原口一博国会通信(89) DIGITAL SYOKASONJYUKU
スウェーデン障害者対策 −受難者から市民へ−
今年5月にスウェーデンのヘルシンボルグ市に派遣されました。福祉の現場を視察して、2000年の障害者福祉改革について議論をしました。アメリカにもADA法(包括的な障害者法)がありますが、スウェーデンの改革は、「受難者から市民へ」というテーマのもとそれぞれの行動計画まで踏み込んだ注目すべき改革です。
国会図書館調査室の皆さんの協力をいただいてその概要をまとめていただきましたのでご紹介いたします。私は、この基本的な考え方を強く支持しています。実際に日本の中で活かしていきたいと考えています。
「受難者(患者)から市民へ:障害者政策に関する国家行動計画」について(メモ)
国立国会図書館
スウェーデン議会は、2000年5月31日、政府の提案「受難者(患者)から市民へ:障害者政策のための国会行動計画」を承認した。スウェーデン議会のこの決定は、スウェーデンの障害者政策に、重要な基本的な改革をもたらすものといわれる。この行動計画の概容は、以下の通りである。
資料:この行動計画の原タイトルは、Fran
patient till medborgare―en nationell handlingsplan for handikappolitiken (1999/2000:79)であるが、ここでは、スウェーデン保健社会問題省作成の英語要約 版From patient to
citizen : a national action plan for disability policy(a short version of
government bill 1999/2000:79) 及び説明リーフレット( Fact sheet on the
Government Bill 1999/2000:79 From patient to citizen - a national action plan
for disability policy)に依った。
1.障害者政策の国家目標
(1)目標
・社会的コミュニティは、多様性に基づくこと。
・社会は、障害を持つ全ての年齢の人々がコミュニティの生活に完全に参加できるように設計されること。
・障害を持つ少年少女及び成人の男女にとって、生活上、機会均等が保障されること。
(2)障害者政策で、特に焦点を置くべき任務
・障害を持つ人々が社会に完全に参加できるよう、障害になるものを確認し、除去すること。
・障害をもつ人々への差別を防止し、差別と闘うこと。
・障害をもつ児童、青年及び成人が、独立した生活をし、自分自身の生活に関し自ら決定することを可能とすること。
(3)優先順位が置かれる分野(今後2―3年)
・障害者の視点が社会の全ての部門に確実に行き渡るようにすること。
・よりアクセスしやすい社会の構築。
・障害者の待遇方法の改善。
2.社会全体に関する障害者政策
(1)責任
@ 政府機関の責任
・政府機関は、障害者の視点をもって日々の業務を行う。出発点は、国連の基準規 則であり、障害者政策の国家目標である。政府機関は、また、その施設、活動、情報への障害をもつ者のアクセスの確保に責任をもつ。
・アクセス可能であること、機能的であることが、国の建築計画に行き渡るようにすること。
・障害者の利用が多く重要な機関は、その施設、活動及び情報への障害者のアクセスを可能にするため、遅くとも2001年12月31日までに、行動計画を提示すること。
・障害者オンブズマン局は、施設、活動及び情報へのアクセス可能性が何を意味するか、より詳細に定義する任務が課せられる。
A 特別な機関の特別な責任
・特別な責任をもつ機関は、障害者政策の国家目標の実現を確実にする特別な責任を有する。これらの機関は、中間目標をたて、遅くとも、2010年までに、それが達成されるべきこと。その責任は、政府が各機関に出す指示により、詳細が定められる。
・障害者問題に特別な責任をもつ機関には、以下のものを含む。
職業安全・保健庁、労働市場管理局、スウェーデン鉄道管理局、住宅・建築・計画庁、スウェーデン消費者機関(Agency)、民間航空管理局、郵便・テレコム機関、文化遺産庁、海運管理局、国立教育機関、保健・福祉庁、文化審議会、道路管理局
・国家行動計画の実施及び中間目標の報告書が、2002年春までに議会に提出される。その後の継続する改善に関する報告書は、3年毎に定期的に議会に提出される。
B 政策の実施に関すること
・政策の実施に当り、障害をもつ人々が、社会の他の構成員と同じ物及びサービを確実に利用できるようにする目標を追求するべきである。従って、アクセス可能性と機能性に留意すべきである。
・活動に財政上の援助が行われる場合、障害者の視点が考慮されるべきである。必要な場合には、政府から補助金を受けるための規則を、この観点から、より厳格 にすべきである。
(2)「よりアクセスしやすいスウェーデン」
@ 施設等へのアクセス
・一般公衆が利用する建築物及び公共建築物において、移動障害等をもった者のアクセスの障害となるものを簡単に除去できる方策が講じられるべきこと。
・住宅・建設・計画庁は、計画・建築法(1987年)中の、公共建築物の建築及び改築の場合のアクセス可能性に関する現在の要件を明確にする任務が付与されよう。
・今後数年間、住宅・建設・計画庁は、高齢者及び障害者のためのアクセス可能性の問題を優先する。
Aアクセス問題に関する国のセンターの設置
・アクセス問題について助言するため、アクセス問題に関する国のセンターが設置されるべきこと。
・このセンターの役割は、障害者オンブズマン局が、現在の任務に加え、担うべきこと。
B 「全ての者のためのデザイン」
「全ての者のためのデザイン」のコンセプトは、日用品、建築物、建物の内外の環境、IT製品及びITサービスが、全ての者にとって、アクセス可能であるべきということであり、国は、これらの分野において、「全ての者のためのデザイン」のコンセプトを行き渡らせるべきこと。
C 交通機関へのアクセス
・交通機関へのアクセスは、継続的に改良されるべきであり、インフラ、交通手段
その他のサービスに関連する全ての計画策定等において、アクセス可能性が考慮
されるべきこと。
・アクセス可能性を高める業務は、2010年までに障害者の公共交通へのアクセスを
可能とする目標に沿って行われるべきこと。
・異なるタイプの交通に用いられる乗物への障害者のアクセスに関する現行の法規
の再検討が必要である。
D 代替の通信方法
・代替電話・通信技術が、新テクノロジーに対応して発展されるべきである。その
ための資金が用意されるべきこと。
E 投票―民主主義のための権利
・投票所は、障害を持った人々がアクセス可能であるべきこと。
・障害者は、地方の民主主義の構築に参加するよりよい機会が与えられるべきこと。
F アクセス権に係る法規の調査
障害者のアクセスに関する規定を欠いている分野を詳細に調査するため、調査委
員会が設置さるべきこと。
(3)より良い待遇
@ 県の役割
県の執行委員会(county administrative board)は、市・県の議会(council)に、「機能障害者への支援及びサービス法」(1993年)に定める支援及びサービスのための将来の要件に見合う計画、及び「社会サービス法」(1980年)第6章第F条による援助の将来のニーズに見合う計画を発展させるよう促すべきである。県の執行委員会は、これらの法律のいずれかに従った一定の施策に関する個人の権利を認めた法的に拘束力のある判決に従い、市又は県の議会に、罰金刑について指示することができる。
県の執行委員会は、これらの新たな任務の準備として、スタッフの教育及び研修のために、新たに200万クローネが交付されよう。
A 現行法制の検討
現在の法制が、障害者の社会参加の機会をどの程度、支援しているか調査すること(例えば、憲法の規定の検討)が必要である。そのため、憲法に関する調査委員会にその 検討を行う任務を付与。
B 関係スタッフの教育・研修
・障害者政策に含まれる原則と関係する国のプログラムは、地方・地域レベルにおいて、継続的な専門性の発展のための基礎を築くべきである。プログラムの全体的な計画及び責任は、国立特別教育支援機関が担う。
・国立特別教育支援機関は、質及び発達審議会と協議の上、障害者政策問題を担当する行政府により利用される教育教材を改良する。
・障害者に関わるスタッフの専門性の向上の今後数年間にわたる施策のため、特別資金が支出される(900万クローネ)。国立特別教育支援機関には、新たな任務のために、300万クローネが増額支出される。
B 調査
社会的なオリエンテーションに関する障害者調査に、新たに500万クローネが支出される。
C 偏見と闘う知識と文化
演劇、文学、映画、美術等による文化的表現により、障害者への偏見を減らし、態度を変化させ、また障害者がいかに遇されているかを明確にすることができる。このような努力の達成を目指すプロジェクトは、文化遺産基金から資金を受ける場合に、配慮される。
(4)文化及びメディア
・目標は、全ての者が文化を享受し、自ら創造的活動に携わることを可能にすることである。アクセスを改善する行動計画の実施及び拡大のために、文化審議会は、更に750 万クローネを利用できる。
・「スウェーデン・話す本と点字の図書館」は200万クローネ、「ニュース及び文学を簡単に読む基金」(センター)は50万クローネ、資金が増額される。
(5)教育
障害をもつ生徒は、他の児童・青年と同様に、両親とともに又は両親の近くで生活し、 自宅の近くの学校に通えるようにすべきである。
@ 生徒の法的権利
政府は、教育法に関する検討委員会に、状況を調査し、生徒の法的権利の拡大の方法を提案するよう指示した。また、国立教育機関は、特別学校へ通う生徒が増加している理由、後期中等教育等を中退する理由等について、調査する任務を担う。
A 障害をもつ生徒のためのIT
障害をもつ児童の教育援助の発展のための特別基金があり、現在実施されている施策は、教師の専門性の強化に重点が置かれている。
B 成人教育
障害をもつ成人の学生等のための条件が改善されるべきである。政府は、2000年末に、障害者成人教育に関し議会に点案する予定である。
C 教育における技術的援助
教育制度における障害のある生徒・学生への技術的援助の措置を調査し、必要に応じて方策を提案するため、特別な研究者が任命されよう。
(6)労働
雇用者が障害者を雇用する際に障害となると考えるもの、障害者の雇用の可能性についての研究が2000年に実施される。
(7) 社会適応教育及びリハビリテーション
保健・福祉庁は、異なる障害をもつ異なる年齢の児童及び青年のための、県の児童・青年社会適応プログラムへのアクセス可能性を調査する任務を担う。
<政府の提案>
・保健・福祉庁は、「機能障害者の支援及びサービス法」に定める個人の計画に関する市及び県による業務に関し、また、「保健・医療法」に定める社会的適応及びリハビリテーションの分野に関し、その双方の発展をフォローする。また、この分野の業務と関連する分野の活動との共同業務をモニターする。また、同庁は、この二つの法律に定める個人の計画をいかに作成し、何をモデルとするかについて、責任を有する機関に対し、相談サービス及び情報サービスを拡大・強化する任務を担う。これによって、その計画が現在より広範に作成されるよう援助する。
・障害者オンブズマン局は、情報に関するその責任の範囲で、障害のある児童・青年及びその家族が利用できる支援施策に関する報告書を出す。
・障害者団体への補助金は、2000年7月1日に、1400万クローネ増額される。2001年1月1日には、更に、1400万クローネが増額され、年に2800万クローネが増額される。
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