2003年5月30日
原口一博国会通信(100)                    DIGITAL SYOKASONJYUKU

            日本経済の動向と再生の処方
                経済失政と統制経済危機の乗り越え方

 90年代為替の動向を見ると対米ドル、対元で大幅に円の価値が上がっており、デフレとバランスシート不況・相継ぐ経済失政の荒波に見舞われてきたにもかかわらず、わずかながらの経済成長を果たし企業の収益構造も改善を見てきたことは、日本の持つ中小企業を中心とした努力が懸命に行われた結果だと考えます。日本の株価収益率も30と割高感があると言えますが、逆の見方をすれば日本の経済政策を「自由と可能性への挑戦」に抜本的に変えることができれば、知的財産の集積した勤勉な労働市場に支えられた日本の産業主体への投資は今でも過小であると思います。

 このことを前提にそれでは、どこに問題があり、何を変革すればいいのかを少し考察してみたいと思います。まず現状ですが、この2年で日経平均株価は約半分に 時価総額150兆円が消え、名目GDPは515兆円が499兆円へと縮小するという未曾有の事態をむかえています。完全失業率は、4.7%から5.5%へと上がり高止まりし、自己破産件数も激増しています。不良債権残高 33.6兆円(01.3月決算)が40.1兆円(02.9月決算)と2、3年以内に不良債権問題に決着をつけるという政府の公約とは裏腹に不良債権額は積みあがっています。大手行の20029月期決算における中小企業向け貸し出し状況はマイナス88,144億円で倒産の激増に歯止めがかかりません。デフレ克服も達成目標を当初の2003年度から2005年度に先送りしました。4年連続のデフレが続いており、世界的なデフレを「最先端で下方に引っ張るという」経済情勢は極めて危険です。

 信用のコアであり経済のアンカー(錨)である日銀のバランスシートは急速に悪化しています。異例の日銀株買取枠をこの春に2兆円から3兆円に拡大しましたが買いきりオペなかったことで、市場は失望して反落するという皮肉な結果でした。日銀の総資産は124兆円に膨張し、その3分の2にあたる82兆円が国債です。仮に長期金利が1%上昇ですれば日銀が1兆円の損失を負うと衆議院予算委員会質疑で私の質問に対して日銀総裁が答弁をしました。日銀の自己資本が5兆円ですから、PKO株価対策で日銀にETFや株を買わせる政治圧力が持つ危険性について大きな警鐘を鳴らしておかなければなりません。

 過去3年間に優先株をいくら買ったか明らかにさせる必要があります。日銀が枠を広げて流通株を引き取っても、結果として流動性のない株をどんどん銀行が積み上げるだけで「経済の梗塞状況」を増大させるだけです。これを今から3年間もやるのか これから3年先送りするのかと考えていくと「統制経済的・官僚主導」政策を大幅に転換しない限り一時的に人為的株価上昇を起こした産業から「梗塞」が広がり、ブラックホールの闇が広がるだけになっています。

 銀行の中身はけして良くなっていないことは明らかです。240兆円の株のうち個人が持っているのは約40兆円で、これが仮に1割上がっても消費に結びつきにくい構造です。「むしろ年金資金を使って毎日150億円ほどの株価対策を行っていること、その実態は明らかにされずに従って責任は誰もとらないことが問題だ。」という指摘も事実として受け止めなければならないと思います。

 今月、内閣府から発表された月例経済報告でもアメリカ経済の先行き頼みが明示されていますがそのアメリカ経済は、FRBが異例の対応をしていますがかなり不透明感が高まっています。米住宅ローンは2002年、2.43兆円でこの借り換えにともなっておこるローン(バブル)が年間7000億ドルまで膨れています。米国のGDP10兆ドルですからこれがいかに大きな額かおわかりいただけると思います。実際に住宅投資された金は4164億ドルで、このバブルがはじけようとしているとの指摘もあります。金利が上がると途端に消費者が自己破綻する脆弱さ、日本が90年代におかした間違いを米は避けることができないだろうと指摘する識者もいます。

 日本の金融問題も百家争鳴ですが、過去のストックの問題をフローの収益で処理しようというところにそもそも無理があります。150兆円の不良債権を銀行の収益で処理しようとすれば、銀行年間収益税引き前で10兆円ですから、これでは10年かかることになります。グッドとバッドに銀行を分ける必要があるのであり、責任を明確にし、一挙に、公正に不良債権処理を行うという原則を全く逆様にした現行の処理そのものが経済をさらに痛めつけています。

 日本の経済構造問題は古い時代遅れの政治と不可分の構造を持っています。「20%の効率的な輸出産業と80%の非効率的な国内市場向け産業が作り出す機能不全の混合体」という識者もいますが、この構造は、効率的な輸出産業が国内での高い調達コストを払える限り成り立つのであり、中国市場などの登場を見た持続不能の構造であるといわざるを得ません。企業間の馴れ合いによる談合と方向性を誤った規制が生産性を蝕んでいるだけでなく、極端に高い消費者物価を作り出しています。高い物価が実質家計所得と個人消費を押さえ込むだけでなく国際競争力も蝕んでいます。

 社会保障危機にも触れておかなければなりません。 破産・失業・社会的混乱への懸念が高まっています。雇用こそが主要な社会的安全弁である我が国においては、新たな市場を受け入れるような労働市場の柔軟性がないために職を失うことは、社会的な保障を全て失う恐怖と懸念を国民に与えてしまいます。
 国民負担の最大の部分は社会保障です。各企業は先行き不安と業績悪化から負担に耐え切れずに正規雇用を縮減することを止めません。

 これまで世界経済を引っ張ってきた米景気が悪化すれば、世界不況が避けられない状況です。日本の貿易収支が赤字に向かい、日銀のファイナンスが難しくなれば、日本のゼロ金利の終焉が来ます。「この時に市場経済に向かえばうまくいくし、統制経済では没落だけが待っています。」

 今の日本に必要なのは、一定の成長を織り込んだ長期的自由のビジョンにたった政策運営です。統制経済・護送船団経済から一刻も早く脱却しなければ、投入できる資源が益々枯渇していきます。思い切った規制改革による新しい市場開拓を阻んでいるのは既得権益の連合体です。

 雇用や社会保障に対する信頼が揺らいでいては、消費は冷え込むばかりです。環境・福祉・医療など人が人として生きていく基本的な価値に対する投資、産業構造の転換が必要です。古い経済構造を温存している「依存と分配」の政治を打ち破る変革主体への国民的な支持が明確な形で示されなければなりません。様々な可能性を開花させる政策を持った「自立と創造」の政治主体が古い政治にとってかわることが必要です。

(日本・EU議員会議経済セッションで上記の論をもとに報告を行いました。)


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