2004年1月29日
原口一博国会通信(117) DIGITAL SYOKASONJYUKU
イラク自衛隊派遣本会議質問
自由と人間の尊厳を求めて
1月27日、衆議院本会議で民主党・無所属クラブを代表して総理に質問を行いました。総理の答弁に誤りがあり、その後、予算委員会で紛糾。1月29日の本会議で異例の訂正となりました。安全と補正予算の根幹が崩れています。復興支援の受け皿となるサマワの統治評議会が24日には、委員が辞任して解散していたことを総理は知らずに答弁されていたのです。
質問原稿の全文を掲載いたします。(一部、本会議場で加えたものもあります。)
下線がさらに詳しい答弁を求めなければならないところ、赤字が答弁の問題部分です。
なお、質問作成にあたり内田さんを始め政調スタッフの素晴らしいサポートをいただきました。心から感謝を捧げます。
「イラク特別措置法に基づく自衛隊派遣の国会承認問題」 対 総理
民主党の原口一博です。民主党・無所属クラブを代表いたしまして、「イラク特別措置法に基づく自衛隊派遣の国会承問題」に関して、質問致します。
先遣隊は、委員会理事も知らないうちに再出発しており、国会は参考人として聞く機会すらないことに断固抗議します。
「日本は国民の合意も覚悟も血を流してまで国際貢献するとはなっておらず、憲法上の制約もある。日本の国際貢献には限界があるということを心得なければならない。欧米と一緒になってできないことをあえてしようというのは、間違っている。危険だったら引揚げるというのも一つの選択肢だ。」「日本国民は自由とか平和の重要性は十分認識している。しかし平和のために、よその国民を救うために、日本は、日本政府は、日本の青年の血を流してまでよその国の自由と平和を回復するつもりはありません。」
このPKO論議の時、憲法9条と前分の間のぎりぎりの判断とも述べていますが、総理の考え方は、この10年でどう変わったのかお応えいただきたい。
(重大な政策転換の意味について)
総理には、日本国民の平和的生存に関わる重大な政策転換をしたという自覚がおありですか? 紛争地域に武装組織である自衛隊を送ることに歴代内閣は、何故、慎重な姿勢をとってきたか、総理の認識を問います。
(大量破壊兵器の問題)
調査団団長のデビット・ケイ氏が、大量破壊兵器がイラクに「あったとは思わない」と発言しました。総理は、昨日も発見される可能性があると答弁していますが、調査団は縮小・撤収の傾向ではありませんか。大量破壊兵器の脅威に基づいて、イラクへの武力行使を支持された判断を、今も正しいと言い切れるのか?過ちであったと確定した場合、どのように責任をとるおつもりか。そもそもイラクは独自に大量破壊兵器生産の技術を自己開発したのか。他国からの供与による疑いはないのか?他国からの供与だとすれば、どの国が供与したとお考えですか。
(情報開示と説明責任)
自衛隊の占領地への派遣という極めて重い判断を求める時、出来るだけ詳しい判断材料を国会に提供するのが、政府の責務のはずです。先遣隊報告書は提示されたものの承認の判断とするには不十分です。また、航空自衛隊は、すでに本隊も派遣されているのに、その根拠となるべき先遣隊報告書もないとの答え。いったいこれでどう国会が判断すればいいのか。
イラク特措法では、基本計画の派遣期間中、確実に戦闘行為がないと認められることが必要と定めていますが、報告書にも「深刻な失業問題による住民の不満が反連合軍活動に結びつく可能性」「(アルバイン100万人規模、 アジュラ )巡礼など大規模行事に伴う移動等が治安に与える可能性」を挙げています。外務省の最新報告にも「イラクにおける治安情勢は全般に予断を許さず」と明記しているではありませんか。
派遣期間中の状況の変化について、どのような報告をもとに派遣を決断したのか?国会及び国民を納得させられる資料・説明を提示する姿勢があるのでしょうか?
(イラクの安定化と民主的政権樹立について)
イラクの安定化を図るうえで、治安問題とともに重要なのは、イラクを特定の政治制度の下で一つにとりまとめる方法を見いだすことができるかどうかです。イラクにおける安定は、「占領軍と反占領軍勢力の間の戦闘がやむこと、政治勢力間の合意が成立すること」の二つの意味を持つ。どのようにして憲法を制定し、どのような道筋で主権をイラクに返すかを決めない限り、問題の根本的解決はあり得ません。大切なのはイラクの諸集団が共生のための合意を見出すことで、丁寧な対話と長期にわたる政治交渉が必要だと考えます。このプロセスの見通しについて問います。
また、総理特使はどのような話し合いを行ったのでしょうか。仏、独はイラクの治安維持活動に参加する意思を示したのか?国連はイラクから撤収していますが、この事態を打開するために日本として、どのような努力をするかお示しください?
(イラクの真の安定とそれに向けた支援のあり方)
現在、イラクは軍事占領下にあるのに加えて、全土で戦闘が行われ、国際法上の戦争状態と認められるのではないか認識を問います。非対称性の戦争が継続しているのであり、イラク全土に広く薄く展開している現況で米軍ですら襲撃を回避できない状況ではありませんか。
既成事実の積み重ねで慎重な議論が妨げられることに大きな危惧を抱きます。
サマワでも、失業率が70%にも達しています。仕事を求めてデモが暴徒化し、死傷者が出ました。失業問題が治安状況に及ぼす悪影響は、深刻化する一方です。
サマワでは、自衛隊が雇用を生んでくれるという期待感が強まっていますが、浄水活動等での生み出される雇用創出効果は限定的ではないか。雇用創出につながる復興支援策を急いでいるようですが、プロジェクトを吟味すると、今、イラク国民が緊急に必要としているニーズなのか、首を傾げたくなるものがあります。 小泉総理は、イラクへの自衛隊派遣でどれくらい雇用効果を見込んでいるのでしょうか?雇用効果と治安の見通しをお尋ねします。
文民の行う電力供給は、国全体として供給網が十分に機能し得る状況にないとしながら、実際に実行に移されるのは、まだ先のこととなるようです。ODAの手法・経験をいかしての電力支援が必要ではないか?電力がなければ恒常的な水の浄化もできないではないか。
マドリッドのイラク復興支援会議で我が国は世界銀行(交戦国英国ですら9億ドル)さえも上回る50億ドルの拠出を約束しましたが、国民生活が厳しく、しかも財政赤字が拡散する中で、どのような根拠に基づいて拠出を決めたのでしょうか。突出した額を供出する合理的説明を求めます。
有償援助では予定入札価格は設定されず、無償援助で予定価格は非開示ではないですか?またイラクへの我が国債権をいくら放棄するつもりか、その根拠はなにかお尋ねいたします。
(基本計画と承認について)
「基本計画に定められている対応措置の実施に関して既にその全体について実施命令がだされていることから、一つの国会承認を求めることは適当である」という答弁ですが、一括承認であれば、この間、延々と報じられた与党の空自、陸自の承認手続きさえも、茶番になってしまうのではないですか。
今回のイラクでは、どのような状況をもって、任務が終了したとするか、或いは、どのような事態が起これば撤退するとの判断となるのか、お答えください。自衛隊の「出口戦略 」を明確に示すべきです。
(憲法9条とイラク特措法の9条問題)
憲法9条2項交戦権の行使に占領行政への支援が含まれるのではないか。政府は、我が国が、交戦国ではないという理由で憲法違反ではないと強弁していますが、従来の法解釈を大きく踏み出すものではないでしょうか? 憲法に抵触する疑いはなお消えていません。
また、イラク特措法の9条の観点からも、現時点での自衛隊の派遣は問題です。9条には、安全の確保の義務が明記されています。最近では、「危険が伴う任務。」「必ずしも安全ではない。」と公言して憚りません。総理は自ら、法律に定められてある条項をないがしろにしていることを認めているのではないですか。
イラクで起きているのは「見えない敵」と「見える占領軍」との戦いです。テロリストたちは、もっとも弱いところに狙いを定めて、奇襲をかけてきます。例えこの間、ずっと治安の良かった地域も、一瞬にして交戦の行われる地域に変わってしまう危険を排除できません。バグダッドからサマワはわずか、250km。東京から福島の距離です。 憲法の観点からも、イラク特措法の観点からも、現時点でイラクへの自衛隊派遣は行えないと判断すべきです。
(我が国の国際貢献と役割について)
我が国の国際社会への貢献と役割について、政治の側に認識の違いと誤りがあるのではないでしょうか?日本の国際社会に対する貢献は資金面だけではありません。青年海外協力隊の例を持ち出すまでもなく、日本は、非軍事分野における人的貢献の最大の国の一つであるということを想起すべきだ。「金は出すが人的貢献はしない」「汗は流すが血は流さない」という批判は全く見当はずれではないか総理の見解を問う。
(結び)
調査報告を求めるにも困難を極め、先遣隊報告書も必要な事項が抜けています。法案審議で具体的な中身を問えば、その時になってから判断する話をそらし、既に部隊が派遣されてからは、部隊の危険に関わることなのでと説明を避けます。これで何を根拠に、どう判断せよというのでしょうか?実際に部隊がでてから議論していたのでは、人命にも関わるからこそ事前承認が必要ではなかったか。
政治が議論を怠ってきたツケを自衛隊員におわせてはなりません。他国の軍隊とは、全く異なる制約のもとで任務を遂行させようとしていることを自覚しているのでしょうか?危険を回避する能力があるからお願いするということだけでは説明になりません。自衛隊員の安全を確保する義務は首相が負うと考えますが所見如何。
自由と人間の尊厳を脅かすものと我々は戦っています。しかし、そこには価値や原則の一致がなくてはなりません。パートナーシップとは他に対応を委ねることではない。情報の共有と法執行の妥当性確認についての不断の努力がなければ議会制民主主義は成り立ちません。
劣化ウラン弾やクラスター爆弾の惨禍に苛まれる子どもたち、イラクの現状を何度訴えたことでしょう。その声には耳を貸さず、人道復興支援のもと自衛隊派遣を強行する政府の姿勢に疑問を禁じえません。
主は多くの民の争いを裁き はるか遠くまでも、強い国を戒められる
彼らは剣を打ち直して鋤(すき)とし 槍を打ち直して釜とする
国は国に向って剣を上げず もはや戦うことを学ばない。
圧倒的な力の行使が突きつけたものについて、省みる叡智が必要であることを指摘して質問を終えます。
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