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2004年3月8日 原口一博国会通信(125) DIGITAL SYOKASONJYUKU 雇用なき経済成長の危うさ 政策目標を失業率ではなく就業率に求める 民主党予算勉強会で樋口美雄慶応大学教授をお招きし雇用政策・予算について議論しました。(先生のご指摘をまとめたものが「」内です。) 「最近の景況感を見ると、大企業、製造業を中心として悪いから良いと判断した企業が多くなっています。労働市場も過剰感が薄れてきています。ただ、今回、起こっている景気の回復感はリストラにコストの削減よるものが多く、雇用の拡大、特に正社員の雇用増にはつながっていない可能性があります。」JOB LESS、もしくはJIB LOSS RECOVERYの危うさと政策目標について、しっかりと議論を深める必要があります。 「また、臨時雇用・パート労働者・派遣労働者・請負の増加とともに、格差の拡大と社会の階層化が進む懸念があります。都道府県単位での失業率は一昨年初めて発表されましたが、サービス業の多い地域は、労働市場の流動性が高く、摩擦的失業が多く生じます。この地域特性を勘案して5年の平均をとると北海道・東北 関西(九州)の失業率の高さが目立ちます。 失業統計でいう失業者は、調査員が各家庭を月末訪問して無業者であった者のうち、過去、一週間に求職活動を行った人のことをいいます。近年の失業率が落ち着いているというのも、求職活動を諦めているのではないかという見方も成り立ち、雇用情勢が好転しているのではない可能性もあります。」 指標を失業率ではなく就業率において考えてみると別の政策体系が求められていることが見えてきます。景気の悪化だけでなく、構造的影響にまで踏み込んだ政策が必要です。 「高速道路のインターチェンジにはりついた工場が海外に生産拠点をシフトさせたことはよく指摘されます。若年層の職場がない背景は、今まで高卒を大量に採用してきた製造業の海外シフトと女性高卒を大量に採用してきた一般事務がIT化によって派遣で補っていることが大きく作用しています。」 「景気対策で地方の雇用を再生しようというのは限界があることを政策責任者が認知し始めています。公共事業が景気対策として使われてきましたが、これを長く続けると自分の力で立ち直るという自立心を失ってしまう大きな問題があります。 現にGDPに占める公共事業割合は、先進国中、日本が最大です。欧州でも公共事業では地方の問題は解決できないとして雇用政策・雇用戦略を地域自身が考えていくというメカニズムに転換する国が増えてきました。」 「かつて日本では、大都市圏に雇用機会があれば大都市圏に移ってくることがおこりました。しかし、現在、少子化の関係で親が地元に子どもを留める必要も増大し、地元定着率が上昇する傾向にあります。」 「若年雇用の問題も90年代には、フリーター問題は、若者のわがまま論・適職探し論などで片付けられる傾向にありました。若年雇用の問題は働く場がないことによるもので、特に「地方高卒」の雇用機会減少が深刻であることが判明しました。しかも「能力を高めるべき若い時期に能力を高めておかないと雇ってくれない⇒社会の階層化」の問題がはっきりと意識され始めています。」 「失業を固定化してはならない。」「社会的底辺をつくってしまっては、ならない。」「若いときに雇用保険に頼れば、そこから駆け登るには相当の努力がいる。」などの問題意識から法律改正や指針改正が必要になりました。 パートタイマー法の指針改正、労働基準法改正、有期雇用の期限の延長(1年から3年に)、再契約の機会があるのか予め本人に通知する義務、労働者派遣法改正(今までは物の製造について派遣は禁止されていたのが解禁 同じ企業につとめる最大3年)など。能力開発・福利の面でも均衡条件を整備することが求められています。 「雇用機会の拡大では規制緩和・格差是正では規制強化との視点が必要です。パートや派遣は好ましくないものとされてきましたが、今やパート労働や派遣労働における政策を無視して雇用は語れない事態が到来しています。」これからの雇用政策・雇用戦略は、「雇用創出」と「機会均等」の両面から再構築されるべきです。 「保障と拘束の関係にも大きな変化が起こっています。自己責任を重視する傾向が強まり、会社による底上げ教育から個人による能力開発への移行が見られます。 過剰雇用が叫ばれながら労働時間が延びていく傾向は、一向に収まりを見せません。週60時間以上働いている人の数が全体の2割近くなっている現状は深刻です。このような環境でどうして自己開発できるでしょうか。雇用でも社会でもバランスが崩れてかけています。失業して自殺する人が増大する一方で過労死する人も増えています。」 ワークシェアリングが叫ばれて久しいものの、増えていかない現実に政策責任者としてどうむきあえばいいのでしょうか。 「高質な労働市場とは労働者が有効に活用され、意欲と労力を十分に発揮できる機会提供の場と規定することができます。政策責任者は失業率引下げではなく、就業率の上昇を政策のターゲットにしなければなりません。」 「労働者としても失業者としても担保されない人が増えています。就業意欲を失った人は高齢者と10代で増加の一途です。 女性について労働力率は横ばいです。男性社員を減らし、女性社員を増やす傾向が続いています。男性の雇用機会が多い産業構造が転換していることがわかります。性別役割分担が許されていた社会から男女雇用機会均等が当たり前になった社会への構造転換が背景にあるものと思われます。」 パートが自分の年金権を持つべきですし、「持ち歩きのできる年金」を男女の別な区持つことができる制度が必要です。第3号被保険者問題も解決しなければなりません。 事前規制の緩和と事後のチェック強化も課題です。事後チェックが労働基準監督署の人手不足などで不十分だったという反省に立った労働者の権利擁護が急務です。 「これまでの雇用政策を総括すると雇用戦略なくして雇用対策のみと言えるかもしれません。少子高齢化社会における雇用戦略の構築こそが求められています。具体的数値目標の設定は、失業率の低下にあらず、就業率の上昇にあります。産業構造に適さなくなった性別役割分担社会が終焉を迎えています。性別・年齢別格差の縮小を前提とした首尾一貫した総合的政策を打ち出さなくてはなりません。EUのstructure fundの例に見られるように、雇用政策を政策評価・政策の見直しまで一貫したものにすべきです。」 「政府の雇用対策予算を見てみると、5266億円の一般会計予算、2兆642億の特別会計予算(この主たるものは雇用主負担の3事業)です。ほとんどが特別会計で失業手当に回っています。」自由な裁量的政策に一般会計から出ている金は344億円にすぎない現実をどのようにとらえるべきでしょうか。 「受身の雇用政策ではなく、失業をどう未然に防ぐかが大切だ。」「労働市場をどう新規に作るかという政策が必要だ。」との指摘もこのあたりから出ているのではないでしょうか。 「作った法律をきちんと守るということで市場が形成される。」公正なルールが活力を生み出します。 外資系企業の多くは都市型をしていて、5割が東京に集中しています。地方の雇用創出につながらない現状で、波及を日本全体にどうして及ぼすかが重要です。 ワークシェアリングもこれを企業がコスト増・労働者が賃金減につながると思えば、増えません。雇用保険料を払っている労働者とそうでない労働者がいることで雇用保険制度にも歪みが生じています。 労働時間は短くても十分能力が発揮できる企業こそが成長企業です。若年労働者を雇っている企業の多くは新規企業です。新規雇用を増やそうとして、高齢者を解雇しても若年雇用には結びつかない背景が分析されるべきです。 今では雇用政策・立案を全国一律にやること自体が限界に来ています。私は規制改革調査会会長として、雇用、特に就業率を政策ターゲットにした規制改革案をまとめています。雇用は国の責務です。その責務を果たすためにどのような雇用政策が必要か。地域に応じた雇用政策をどのように誰が担保するか。議論をさらに深めていきたいと思います。 ■ DIGITAL松下村塾〜原口一博国会通信 メールマガジン登録
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