2004年5月10日
原口一博国会通信(129) DIGITAL SYOKASONJYUKU
年金制度改革 −改革の本丸はどこか−
年金制度改革論議が迷走しています。私はかつてないほどの大きな危惧を抱いています。政治そのものの信頼が揺らぎ、改革の本丸がさらに遠のく事態が起こっているからです。ここで議論を整理して今後の指針とするためにこの国会通信で経緯をご報告しておこうと思います。
社会保障全体を見回していかに持続可能な年金制度に抜本改革するかとの視点から、私たち民主党は年金制度改革PTや次の内閣で多くの議論を重ねて「日本版スウェーデン方式」法案化を試みました。年金一元化・納税者番号制導入に伴う所得比例年金・税による最低保障年金などがその主な柱です。
そもそも我が国における年金改革は、いかに公平で公正かつ安心なシステムを構築するかという観点とその運用全体を覆う不透明さを払拭する観点と2つの視座が必要です。大規模な構造改革を進めるためには、国民の理解を得ながら、新しいシステムに滞りなく移行させていくことが必要です。その意味で、与野党が共通の話し合いの基盤を持ち幅広い合意を形成する共同作業を行うことは、とても重要です。しかし、その基盤づくりの一方で「パンドラの箱」を開ける作業が平行して行われなければなりません。「官僚機構が基礎的な数字を独占して隠している」との指摘が長年行われてきましたが、未だに数字は出てきていません。制度改革に必要な「バランスシート」が開示されないままに財政の辻褄合せの「改革案」だけが提示されてきました。私たちの使命は、このパンドラの箱、つまり国民の目に触れない「財務諸表」を明らかにすることにあります。
しかし、現在ではパンドラの箱の蓋にも手がかからないのが現状です。相継ぐ年金未納問題は「国民に奉仕する」資格を問うています。内閣官房長官が辞任し政権も大きな打撃を受けましたが、民主党は、自ら言い出した未納問題が代表の進退問題にまで発展して大揺れです。
その様な事態の中で提案されたのが下記に示す自民・公明・民主の三党幹事長による合意です。
*****三党合意************
年金制度改革に関し、下記の通り合意する。
1.社会保障制度の全般的見直しについて
@ 衆議院と参議院のそれぞれの厚生労働委員会に「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般のあり方に関する小委員会」を設置し、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一般的見直しを行い、平成19年3月を目処に結論を得て、平成16年から年金の一元化問題を含めた社会保障制度全般の一般的見直しのための協議会を設置し検討する。
A @にあわせ、与野党により、平成16年から年金の一元化問題を含めた社会保障制度全般の一般的見直しのための協議会を設置し検討する。
B 年金保険料については、社会保障全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化など事情を勘案して、必要に応じて健闘を加えていくこと。
C 上記を踏まえ、5月11日衆・本会議において政府案に別紙の付則を追加する修正を行う。
D 衆・厚生労働委員会において、年金に関する委員会決議を行う。
2.年金の未納問題について
@ 国民年金の未加入者及び未納者に対する通知、督促を適正に行うための措置を講じさせるものとする。
A 錯誤等による未加入、未納者について、今国会において一定条件の下で、事後納付できるようにするための法的措置を講ずるものとする。
B 民間人から登用される大臣等について、今国会において、国家公務員共済年金に加入出来るよう政令改正を行うものとする。
自由民主党幹事長 民主党幹事長 公明党幹事長
****** 国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案*****
国民年金法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
附則第三条を同条第三項とし、同条に第一項及び第二項として次の二項を加える。
1 政府は、社会保障制度に関する国会の審議を踏まえ、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一般的な見直しを行いつつ、これとの整合をはかり、公的年金制度について必要な見直しを行うものとする。
2 前項の公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系のあり方について検討を行うものとする。
*****************
民主党の衆議院における法案対応は、政府提出の原案に反対、この附則部分の修正案にのみ賛成という姿勢です。この合意の承認を「次の内閣」で執行部が求めましたが現時点で了承されていません。政府与党を民主党案に転換させる法的担保をとったという意味で評価すべきとの意見もあります。「政府案+附則修正案」に民主党が賛成するのは、国民を裏切ることだという誤解した発言も次の内閣で見られました。附則修正案のみ賛成ということが理解されていないためです。審議をしている当事者にさえ、わかりにくい急転直下の合意の危うさが、ここにも現れています。数で劣る野党が、法案の附則にここまでの譲歩を引き出したことは、なかなかないことだと私は考えますが、次の内閣での議論が行われず事後承認になったために余計に混乱しています。
三党協議では、錯誤による年金未納等の問題の運用改善策、年金制度改革について衆議院厚生労働委員会における決議も議論されました。
衆議院厚生労働委員会 決議(案 民主党)
年金制度改革について、以下を決議する。
1.公的年金制度の最大の課題は、国民の年金制度に対する不信を払拭することにある。これを実現するために今国会中に、本委員会に「年金の一元化を含む社会保障制度全般のあり方に関する小委員会」を設置し、「公平・透明・持続可能」な年金制度の構築に向けて、速やかに検討を開始するものとする。政府においては、小委員会の求めに応じ資料の提供等特別の協力を行うこととする。
2.年金制度は、2007年度に国民年金を除く他の公的年金及び国会議員年金の一元化を行い、2009年度に国民年金を含めた全ての公的年金の一元化を行うこととする。
3.公的年金の保険料引き上げについては、経済状況、雇用状況等に対する最大の配慮を行い、年金の空洞化加速、不正規雇用の増加等の影響が見られる場合には、政府は速やかに見直しをおこなうこと。
4.年金制度の一元化にあたっては、年金制度に対する国民の不信を払拭するため、誰もが理解できる「受益と負担」の関係を構築すること。
5.国庫負担は定額年金受給者に重点的に投入し、高齢期等における最低限の生活水準確保という公的年金制度の本来の役割を強化すること。またそのための安定的財源を確保する観点から、年金目的消費税について小委員会で積極的検討を行う。
6.小委員会においては、公平な年金制度の構築、徴収事務の効率化の観点から年金給付と保険料徴収に関する一元的番号付与制度及び国税・社会保険庁の統合も合わせて検討を行う。
7.本院議員は、その責務と誇りにおいて、自らの公的年金加入状況を10日以内に公表すること。
この決議案はあくまで民主党のもので、与党はこのうち3つ以下しか飲まないのではないかという観測すら語られました。
「何のための三党合意なのか。」「私たちは、パンドラの箱を開けて、制度設計を根本から仕切りなおすことができるのか。」「政府原案に反対と言いながら、この修正案で本当に賛成していいのか。」
より安心な年金改正に向けての議論が入り口で潰れかけています。
未納の幕引きのための合意などと国民に誤解されているようでは、戦えません。
国会議員個人、もしくはその事務所の基盤は、脆弱なものがほとんどだとの指摘もあります。複雑化する社会に対応して改革者としての「コンプライアンス」を担保する仕組みが十分ではありません。議員の信頼性・公開性を徹底的に高めるシステム・党代表そのものを守るシステムも発展途上です。
「修身斉家治国平天下」との言葉があります。巨大な組織・闇に立ち向かう度に、この言葉をかみ締めてきました。安心な年金制度に向けての改革を潰さないためにこれまで以上積極的に行動していきたいと思います。
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