2004年9月1日
原口一博国会通信(133)                 DIGITAL SYOKASONJYUKU

          消費者基本法について
          新しい政策の方向性


 昭和43年に議員立法で成立した消費者保護基本法の改正を行いました。ここでは、立法責任者としてこの立法過程で法案の中に盛り込めたことと依然として盛り込めず今後の課題として残したことについて触れてみたいと思います。

 与党案と民主党案をそれぞれ持ち寄りかなり厳しい議論を積み重ねながらの改正でした。与党は、岸田代議士をはじめ河野代議士、大口代議士の3名。私たち民主党は、石毛代議士と山内代議士と私が与野党協議の責任者でした。

 その中で私が強く主張したのは「消費者の権利を前面に出した基本理念にするべき。」「権利なくして自立なし。」ということでした。消費者は保護の客体でなく、権利の主体です。消費者の権利は誰かから与えられた権利ではなく自然権的に本来備えている権利です。そこで改正案では、国際消費者機構における「消費者の8つの権利」、@生活の基本的ニーズが保証される権利、A安全である権利、B知らされる権利、C選ぶ権利、D意見を反映される権利、E補償を受ける権利、F消費者教育を受ける権利、G健全な環境の中で働き生活する権利を明定し、国、地方公共団体、事業者の責務を明確化しました。

 「この法律で消費者に権利を与えたのだから、それに伴う責務が生じる」という考え方と私たちの考え方との間には大きな開きがあり「消費者の役割か責務か」という条文上の書きぶりについても多くの議論を必要としました。

 事前規制でだけでは消費者の権利を守ることができません。事後規制で権利保障を積極的に行える社会の仕組みにしていくことを目指しました。事業者と消費者では、市場における力関係に圧倒的な差があり、シャワーのように浴びあせられ消費情報の中で選ぶ権利が公正に保障されることが必要です。

 消費者政策にかかわる意思決定機関やその実行機関がより実効性のある消費者政策を実践できるように条文を幾度も議論しました。消費生活センターの役割や消費者団体の役割の明確化、公益保護通報制度や団体訴権の問題についても白熱した議論を交わしました。地方自治法の規定をそのまま消費者政策にトレースしたのでは、都道府県と市町村行政の狭間で守られない権利があることも『「専門性・広域性」に係らず「多様な苦情に柔軟かつ弾力的に対応するよう努めなければならない。』という規定を置くことでカバーしようと試みました。

 また改正案では、「知的財産の保護」に対する配慮規定が盛り込まれました。しかし、このことによって例えば遺伝子組み換え食品など消費生活の安心と安全に対する情報開示が妨げられることがあってはならないという合意も明示されました。

 現行の「消費者保護会議」を、「消費者政策会議」とするものとすることという条文もいれました。しかし、「消費者政策会議」について、国家行政組織法第8条に定める合議制の機関とすべきではないかという民主党の主張は達成には至りませんでした。毎年12月に15分程度開かれる程度 各省庁にある消費者行政の寄せ集めを追認するだけの機関では、業界団体を所管する省庁がもちよるものそのものの限界がありました。それをより実効性に高い機関に進めることができたのは、一定の前進ですが、消費者の権利保障という視点からあらゆる政策に消費者の声を反映させるためには、まだ課題を残しました。

 与党の公益通報者保護法案が国会審議の混乱の中、通過したことも残念なことでした。国会審議の中で公益通報者を萎縮させる懸念が払拭されるどころか、強まるばかりだったからです。

 これまで長い間、放置されてきた消費者保護基本法。ルールの競争が競争の本質になりつつあります。人間の尊厳と自由、消費者の権利の保障のための作業は、多くの消費者政策や運動に関わってきた人たちの手で新しい一歩を踏み出しました。見直し規定を入れたのも高度化し情報化する社会の中で不断の改正の努力が必要と認識したからです。最後に法案作業部会における民主党の改正案の主な相違点・論点を記して原稿を閉じます。

1.「消費者の権利」に関する相違点
 @民主党案は、「消費者の権利」を基本理念の前に、独立の条として置き、消費者の権利をより強調した規定ぶりとなっている。

 A与党案の6つの権利に、次の2つの権利を加え、8つの権利としている。
  その消費生活における基本的な需要が満たされる権利
  健全な環境の中でその消費生活を営む権利

 B基本理念、国及び地方公共団体の責務、事業者の責務において、「消費者の権利確保のために消費者政策を推進すること」等を明確にしている。

2.「消費者の役割」に関する相違点
 @民主党案では、与党案のような共通見出しとせず「消費者の役割」とするとともに規定の末尾を「努めるものとする」としている。

 A民主党案では、「知的財産権の適正な保護への配慮」を削っている。

3.苦情処理に係る都道府県の役割に関する相違点
  線引き自体は自治法22項に委ねるが「専門性・広域性」に係らず
  「多様な苦情に柔軟かつ弾力的に対応するよう努めなければならない」

4.行動情報通信社会への進展への的確な対応に関する相違点
  民主党案では、「消費者の年齢その他の特性に配慮しつつ」高度情報化社会の進展に的確に対応するために必要な施策を講ずることとしている。

5.国民生活センターの役割に関する相違点
  民主党案では、国民生活センターの役割として、明文をもって、「苦情の処理のあっせん及び当該苦情等に係る相談」を位置づけている。

6.消費者政策委員会に関する相違点
  8条委員会

7.検討規定に関する相違点
  民主党案には、施行後5年を目処として検討規定が設けられている。


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