2005年4月4日
原口一博国会通信(155)                  DIGITAL SYOKASONJYUKU

         20年前に戻されようとしている障害者政策
               「障害者自立支援法」の無惨さ

 政府提出の障害者自立支援法に対して、「人を人でなくする」力を感じます。障害者基本法の起草者・提案者としては、絶対に容認できない内容です。

 障害者は保護の対象ではなく、権利の主体です。バリアは、障害者の中にあるのではなく、社会の中にあるのです。障害者保護基本法にあった「自立」という言葉を削除したのは、全ての障害者が自らの住まう地域において生きる権利の保障をすることが国家のつとめであることを明確にするためです。障害者自身の自己責任に帰していては解決できないことの大きさを世界は学んできたのではなかったのでしょうか?全ての人が「障害」と無縁で生きることは、ありえない高齢化社会が到来しています。インクルーシブな環境の中で、生きるための政策こそが求められている時に、一挙に20年以上も前の政策に逆戻りするのが、政府提出の「障害者自立支援法」です。障害者を分離して、「人が人に寄り添う仕組み」を壊してしまえば、何がおこるでしょうか?障害者の人権は保障されず、社会自体が不安定になります。

 以下、DPI日本会議の皆さんから私にいただいた要望書を記載しておきます。

今国会での廃案・抜本改正を求めて、大きな国民運動が起きています。地方議会からも決議や意見書が出されています。民主党前人権担当大臣として徹底的に戦います。「国連障害者の権利条約」委員会での議論も無視したような法案がどうして提出されているのか。政治や官僚機構における背景も徹底的に調査したいと思います。


 ***要望書****

2005331

衆議院議員  原 口  一 博   様

                          障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動
                                                代表 横山晃久
                          事務局:DPI(障害者インターナショナル)日本会議
                           電話:03-5282-3730 ファックス:03-5282-0017

障害者自立支援法案審議に関する要望書

日頃より、障害者の地域生活確立に向けてご尽力いただき心より感謝申し上げます。

さて私たち障害当事者は、今国会で審議予定の障害者自立支援法に、多大なる関心を寄せています。この法案には、私たちがこれまでねばり強い取り組みの中で拡充を獲得してきた地域での自立生活を後退させると言わざるを得ない内容が盛り込まれているからです。私たちは、この障害者自立支援法案の受益者である障害者の懸念の声に真に耳を傾け、地域生活の実情を踏まえた上で、国会で丁寧な審議をしていただき、法案に修正を加えていただくことを強く要望いたします。障害者自立支援法の実際の運用部分に関しては、政省令・告示に委任され、主な事項だけでもすでに40にのぼっています。そのため、法案のみならず、政省令・告示の動向についても厳しく監視していただき、障害者の地域生活確立のために更なるお力を尽くしていただきたくお願い申し上げます。

 以下に、障害者自立支援法案に関する私たちの懸念事項をあげます。

(1)高齢者向けの「要介護認定」を基にしたサービス尺度と市町村審査会−「非定型」(長時間サービス等)の支給決定への個別審査は大きな問題

 当法案では、「サービス共通の尺度」に従って一次判定し、介護給付を受ける場合に限り、審査会が二次判定をするとなっています。


 「サービス共通の尺度」とは、「介護保険の要介護認定を基本に障害特性をふまえたもの」で、「一次判定は、要介護認定によるコンピューター判定で行う」ことも考えられているようです。これは、高齢者のADLを基軸につくられた介護保険の仕組みをそのまま障害者福祉に導入する考え方で、自立と社会参加を基軸にした障害者へのサービスを充足するものにはなりません。このやり方では現在のサービス利用時間が削減されてしまうという危機感を障害当事者は抱いています。

 また、市町村審査会の委員には、介護保険の審査会がそのままシフトすることを厚生労働省は想定しています。この場合、委員のほとんどが医師・看護師などの医療関係者や学者などの専門家と呼ばれる人となります。多くの医療関係者は病気を治す専門家であっても、障害をもって地域で暮らすということに関しては知識や経験をもっていません。市町村審査会は、本人に会うことも障害者宅を訪問することもなく、書類だけで判断することになります。この仕組みでは、地域で暮らす障害者に適切な支給決定はできません。


(2)義務的経費の問題点
 当法案では、個別給付は義務的経費化されました。厚生労働省は、障害程度区分ごとに設定される標準的な費用額に利用者数をかけて計算される金額を上限と」し、「当該上限額を超えた部分は市町村の負担」になると説明しています。これは、長時間介護が必要な重度障害者にとっては死活問題です。市町村にとっては、国庫補助がつかない部分は単費となり、支給が削減されることにつながります。現在でも、入院中や通学での支援費利用は国庫補助がつかないので、すべて市町村の負担となり、数カ所の市町村を除く多くの市町村で、この部分の支援費利用が認められていません。

 さらに、厚生労働省の案では、障害程度区分内でしか国からの補助金を使えない仕組みも検討されているようで、人口規模の小さな自治体では特に影響が大きく、国の示す「標準的な費用額」が事実上の上限となってしまいます。

(3)風前のともし火:移動支援事業
 「重度訪問介護」「行動援護」以外は、地域生活支援事業での「移動支援(ガイドヘルプ)」になります。地域生活支援事業は裁量的経費なので、予算を超える利用があっても国・都道府県の補助はありません。昨年度は128億、今年度は250億以上の居宅介護支援の予算不足が見込まれており、省内予算の流用をしても不足する分はこれまで市町村が負担してきました。これが、支給決定の時間削減や新規サービス利用者の時間抑制をひきおこし、全国各地で問題になっています。地域生活支援事業での移動支援となれば、同じ現象がおきるのは必然といえます。

 また、今回の変革では、身体介護付きの移動介護がなくなり、行動援護か移動介護のみになってしまいます。行動援護については、「危険回避ができない行動障害を持つ知的、精神障害者」のみが対象とされており、移動介護を現在利用している知的障害者の内、対象になるのはわずか1割程度とみられています。つまり、それ以外のほとんどの移動介護は、地域生活支援事業の中の移動支援に移ることになります。

 移動介護は障害者の地域での自立・社会生活を支える不可欠のサービスであり、個別給付から外れることは極めて大きな問題です。

(4)重度障害者等包括払支援では、サービスが削減される恐れ
 ALSなど極めて重度な障害者が、生活上必要な24時間介助を利用するには、160万〜200万くらいの費用が必要です。しかし、それが重度障害者等包括払支援になると、保障されなくなるのではないかと危惧されています。そもそも、重度障害者への長時間介護の保障は本人の責任とされるのではなく、社会がその自立生活を支える仕組みをもっているべきで、それが自立支援法の本来の姿です。私たちは、重度障害をもつ仲間の介護時間が削減されることがないよう求めています。

(5)グループホームの再編は居住権の侵害
 重度障害者はケアホーム(共同生活介護)、中軽度障害者はグループホーム(共同生活援助)と障害の程度によって住むところが分類され、「障害程度が異なる」という理由で引越しを強要されるのならば、それは居住権の侵害です。また、グループホームでのホームヘルプ利用は認められないなら、グループホームは職員からだけ支援を受ける密室化した入所施設と同じことになってしまいます。

(6)谷間の障害者がどこにも入っていない
 日本の人口に占める障害者の割合は2〜4%、欧米諸国では20%近くと言われています。日本の障害認定の基準が狭いため、対象者が少なくなっているのです。それによって、本来、社会福祉サービスが必要な人が、サービスを受けられないということが起きています。たとえば、現在の障害認定では、難病の人は状態が変動するという理由で障害者認定がされず、生活上必要な福祉サービスが受けられなのです。難病等の慢性疾患者や高次脳機能障害、てんかん、自閉症等の発達障害者の人たちを対象に含めた総合的な福祉制度の実現は急務です。

(7)扶養義務を助長させる「自立」支援法
 福祉サービスの利用については、「生計を一にする家族の負担を勘案し」としています。つまり、世帯の収入を合算して自己負担額を決めることになり、家族と同居している障害者は、サービスを家族の顔色を伺いながら使うことになってしまします。

(8)生活貧困者にさらなる打撃:利用料負担
 定率負担(応益負担)とは、その人の所得に関係なくサービスを利用した分だけ支払う仕組みです。現在議論されている支払い金額の上限は、次のとおりです。

生活保護世帯       負担なし

市町村民税非課税T  15,000円/月 (年収80万円未満)2級年金の人等

市町村民税非課税U  24,600円/月 (年収80〜300万円)1級年金の人等

一般             40,200円/月 (年収300万円以上くらい)

現在支給決定を受けている障害者は、18%が生活保護世帯、77%は収入が年金だけの世帯で、所得があって費用を払える人は5%しかいません。このように支援費を使っている障害者の95%は低所得者層です。月に8〜11万円程度の年金や手当だけで生活しているので、毎月2万5千円を払ったら生活していけないが、払わなければサービスが受けられないという明らかな矛盾がおきます。

精神障害者の通院公費負担についても、現在の5%負担から1割〜3割負担になるといわれています。これは、精神障害者で福祉サービス利用者の42%が生活保護受給者であり、多くの障害者が低所得者層にいるという実情をまったく踏まえていません。所得保障のための施策を実施せずに、負担のみを規定する改革を実施するならば、精神医療を安心して受けることができなくなり、症状を悪化させる危険性があります。

12月の社保審・障害者部会では、生活保護への流入を避けるため、減免措置を講じるということが示されています。しかし、減免措置はこの問題に対する根本的な解決にはなりません。

(9)障害者自立支援法では障害者の権利は守られない
 障害者自立支援法は単なるサービス法で、私たち障害者が求めてきた地域で生活する権利や差別禁止の規定を明記した法律ではありません。支援費の理念であった“自己選択・自己決定”は全く書かれていません。また、この法案はグランドデザイン案の発表からわずか4ヶ月で国会に上程されました。十分な議論も無く、当事者の声も聞かずに推し進められている法案で、到底、受け入れられるものではありません。

                                                      以上


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