2009年06月19日(金)
希望社会の主権者との契約~公共サービス基本法制定に際して

 
公共サービス基本法成立記念集会講演レジュメ
民主党「次の内閣」総務大臣 衆議院議員 原口一博
「公共サービス基本法の目指す社会像と連帯」

今、世界で何が起きているのか
 
 貨幣という記号からの疎外
  「ミハエル・エンデの遺言」の意味するもの
リ-マン・ショックと世界同時不況
  市場万能主義と言う名の搾取

 底割れする日本社会
  増大する日本の貧困
   派遣切りで寮や社宅を追い出され、ネットカフェで寝泊りや野宿生活
   8割くらいが生活保護水準以下の生活をしているにもかかわらず生活保護が受けられていない(生活保護世帯115.9万世帯)
  薄い社会保障を雇用がカバーしてきた日本社会・雇用が失われると住居も社会保障も
  住まいを確保しないと仕事がみつからない

 拡大する公共サービス格差
  所得格差を通して地域サービス格差に(保育料4.7倍 介護保険料2.7倍 水道料金
  7.3倍、下水道料金5.9倍) 保育料(所得税30万円世帯・3歳児は東京渋谷区1万1300円に対して北海道夕張市3万3500円、砂川市が5万2100円)
   
 
 プロテストではなく適応「異常」
   引きこもり165万人の意味するもの
    世間一般で引きこもりは単なる親の甘やかし この甘えと捕らえられている部分
    新たな差別、二次障害、三次障害で家族関係も壊れやすくそれを修復するための取組
 みが(ひきこもり本人の平均年齢 一昨年の段階で30.12歳)
 信じられないような事件・・・福祉でカバーしなければならない人たちが刑務所に

 
歴史からの教訓
格差とファシズム
 「紙の上での利益を人々が現実にお金に換えだすと、肥大化した信用が収縮しだし、多くの投資家が浮かれた夢から目を覚まし、我を取り戻した。そしてパニックが起きた。」「それが何を意味するかなど考慮せずに、各国は現在の戦争という急場をしのごうと多くのツケを将来にまわし、世界の生産的資源を費やしてしまった。」
(エドウィン・F・ゲイ・ハーバード・ビジネススクール初代学部長)

見たこともないような信用収縮と経済悪化。ドルの暴落と金融危機。実体経済への計り知れない悪影響。倒産と失業。 現在、起きている未曾有の危機は、紙の上での記号が際限なく膨らんだ結果

 絆を深めることよりも他者を蹴落とすことが優先され、生きる糧を作ることよりも金融の記号の上での利益を上げることに価値が置かれれば1次産業も地域も廃れるのは当然の帰結



教育こそが貧困から人間を救う唯一の手立て
「基礎教育を普及させ、その効力を拡大すれば、人間の安全を脅かすほとんどの危険にたいして、おおむね強力な予防効果を発揮することができます。教育に関する矛盾点や怠慢をなくせば、世界各地で人間の安全を脅かしているものを減らせる」アマルティア・セン博士(人間の安全保障)

労働教育の重要性
人間が中心の公正な社会を目指すためには自らの権利を学び連帯することが必要

1986年―1989年従業員給与の平均増加率は、11%であったのに対し、2001年―2004年の増加率はマイナス6%である。一方、役員給与+賞与は、同じ時期の大企業平均で59%も伸びている。86年―89年の大企業の配当の増加率は、6%であったのに対し、01年-04年では、71%も増加しており、株主天下が生じている。給与所得者、特に非正規労働者の所得は、少ない。給与所得で家計の再生産できなくなっている。
公務部門においても40代で既に給与が頭打ちをして特に現業部門は「身分保障」の誤ったデマゴーグによって家計を支えることさえ困難になっている。

3つの連帯
 政治と労働組合・官と民・正規と非正規労働者の分断と戦うために

公共サービス基本法の目指す「人間の尊厳」の保障
 
主客の逆転・・・保護の客体から権利の主体へ
全ての法律は人間の尊厳の保障があって初めて機能する
公共サービス基本法に明確に示した主権者の権利保障
公共サービスの質を担保するための担い手の権利の保障・・・労働条件の確保


公共サービスの比重が高い国は分権化が進んでいる
公共サービスの大きさと自治体の自主財源の比重
  キータックスが地方にあてがわれている国はうまく言っている
  安定しない税が地方にあてがわれている国は公共サービスが弱い
  安定的財源で強力な公共サービスをまかなう 人々の身近なところでサービスを行う
そのような国は経済も元気で財政収支も安定している
「幸福度の高い国」とは 

地方主権と公共サービス

 三位一体改革の誤謬
 地方自治における3つの原則
行政責任明確化の原則・・・ 地方自治を運営していく前提条件
能率性の原則・・・・ 地方自治を実現していくための原則
 補完性の原則・・・・ 個人でできないことを家族が
  家族でできないことをコミュニティが コミュニティができないことを
 ・・・・地方自治を具体化していくときの基本原則

行政機関のどの単位に責任があるか
国と地方の利益に応じて負担をするという利益を算定する客観的根拠がない
だから概数で決めている  負担の対象や負担の範囲も恣意的に決められてしまっている
中身についても事前に説明されずに強制されている

強制された乗客の悲劇 (forced rider)
地域社会に必要な公共サービスの提供を阻害している
負担対象、負担内容  地域社会が優先度が高いと考えている公共サービスの提供を阻害している  財政力の弱い地方自治体に過重な負担を強いる
負担対象・負担内容について説明・参加なき決定

 地方自治法改正で代表制のミスマッチを解消を
 地方分権とはステークホルダーに実権を返していくこと



新しい社会契約のための公共サービス基本法
誰もが参加できる、がんばれる条件を保障
「一方通行型地域社会」から「交差点型地域社会」へ
コミュニティと家族を支えるまちづくり
  社会的協働の契約
   貪る公共ではなく、協働する公共
官民の「ベストミックス」をどう実現するか
「官」から「民」へと「私」から「公」へ
市民公益とネットワーク


緑の分権改革
 
「今生きてる人間が自分の目先の欲だけを満足させる為、後から来る人間の分まで資源を先食いし不良資産を積み上げることは許されない。」
 集中型巨大エネルギー生産から分散型・小型エネルギー生産へ
 きれいなエネルギーに対する固定価格買取制度・アーヘンモデルとは

消費者としての存在だけでは社会は成り立たない
自ら使うエネルギーに責任を持ち、自ら口に入れる食糧に責任を持てるシステム
きれいなエネルギーを生産する権利
 緑の分権改革は、地域から資源を収奪するシステムとの戦い 


最後にもう一度、教育について
 
 「自由も『個人の尊厳』の原理から直ちに派生する原理である。そうして、国民各人の人格が尊重され、自由が保障されることは、民主政治に欠くとことのできない前提である。民主政治は、国民の各自に、かなり高度の教養と、正しい判断力と、責任ある行動を要請する。民主政治に堪える国民を育成するには、まず、国民を自由にしなければならない。」
(憲法Ⅰ 清宮四郎 有斐閣)

 社会システム・教育システムの基礎となるのが共生の哲学。
「学校教育の目的は個人が持つ能力や才能を社会のために育成すること」
「常に変容する社会の中で生き延びられる力、自分で答えを見つけ出す力の育成」
「仮に失敗したとしても、その本人をとがめる心性を持っていない。失敗をとがめる以上に、なぜ失敗したか、その過程を分析して対策を練り、新しい方法や制度を生み出していくことに努力する。」「とりわけ大学教育は問題に対する解答を教えるのではなく、問題を解決する方法を教える」
全ての医療と教育が無料の国。大学入試がない国。数ヶ国語を話し、世界一幸福といわれる国。デンマーク。
○×方式で正答を覚えさせる教育は、現状維持をのぞむ政権には都合のいいシステムです。
解決への答えを自らつくり社会を支える人材を育成する。

 そのためには共に学ぶ体制を