2009年03月15日(日)
原口一博国会通信2009年19号☆

「澄んだ瞳に託したい」
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 政治改革をさらに進めるために

 小沢一郎公設第一秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されました。現時点
で開示されている情報を基に法的検証を試みてみます。

 まず今回の事件が政治資金規正法に定める構成要件のどの犯罪に該当するか
どうか検察側から体系的な説明がありませんので現時点では「西松建設からの
寄附であるのに、政治団体からの寄附であるかのように政治資金収支報告書に
記載した事件であるようだ」としか言えず、正確性を十分に担保できない論証
であることをお断りしておきます。

 仮に上記のような容疑だとすると、まずどういう人間、団体が寄付者になる
のかを考えてみることが必要です。

 構成要件の該当性、犯罪に該当するのかどうかということについての問題点
から考えてみますと、事件は、西松建設から、小沢氏の資金管理団体である陸
山会が寄附を受け取ったのに、それを政治団体の寄附であるように政治資金収
支報告書に虚偽記載をしたという事件のようです。この場合、まず問題になる
のは、この寄附者というのはどういう人間や法人が寄附者になるのか。どうい
う人間、そしてどういう法人団体が寄附者になるのかということです。

 
 ここで一般の方が良く勘違いしてしまうのが、寄付者の定義です。政治資金
収支報告書は、複式簿記ではありません。単式簿記、家計簿のようなものです。
政治資金報告書に寄附を記載するとき、寄附の行為者を記載するようになって
いて、資金を誰がつくったかという意味での出資者を記載することになってい
ません。

 つまり、寄附の行為者がAさんであれば、Aと記載することを定めていて、そ
のお金をAさんがどうして得たかを問うていません。これは虚偽でもなんでもな
く、Aさん自身の出資によるものかどうか、原資がどこか、規正法で記載を義務
付けられていません。仮にBさんという別の人が資金の出資者だということを
認識していたとしても、寄附の行為者がAさんであれば、Aさんの寄附と記載す
ることは虚偽でも何でもありません。
 
 すなわち記載する者は、金銭を交付した外形的な行為を行ったものをいうこ
とになっています。人から借りて自分の名前で政治団体に寄附をした場合も同
じです。借りていようがもらっていようが、自分の名前で寄附をする。あくま
で寄附の行為者は金銭等の移転の外形的行為を行ったものを記載することとな
っています。

 例えば甲社が子会社乙社に資金を出してやって、その子会社乙が政治団体に
寄附をしたという場合、その寄附者というのは子会社の乙社です。ただし、も
し乙という存在がまったくダミーで、団体あるいは企業としての実体が何もな
い場合、名義だけであって実体は単なるトンネルの場合であれば寄附者が甲と
いうことになります。

 ということは、本件で、は西松建設が作っていたという政治団体が実体があ
るのか、単なるダミーなのかが最大のポイントです。どういう場合に実体があ
るのかということですが、世の中的には団体と言うと、それなりに事務所もあ
って、人が事務員として雇われていて、毎日活動しているようなものを想定し
がちですけども、全国に何万とある政治団体の大半はそれほどのものではなく
て、一応会則や規約が定められていて、何らかの活動の実体があって、そして
会計が独立していてということであれば、政治団体として存在していると通常
は言えるのではないかと思います。

 政治団体が特定の企業に支配されていて、言うがままというのが問題ではな
く、あくまでそれなりに活動の実体を持っていて、あくまで政治団体と言える
かどうか争われることとなると推測します。

 アメリカに企業や団体ごとに個人献金をまとめるPACという制度があります。
ひところ、この制度は、個人献金中心のアメリカ政治の透明性の象徴のような
もてはやされかたをしました。しかし、企業団体がとりまとめ、巨額の献金を
集め、あわせてロビーイストがカネと力を背景に政策に強い影響力を行使して
いくことが常態化していました。
 
 日本と比べても桁違いの献金額。医療制度が巨大な保険会社の利害を反映し
て作られたものだという厳しい批判は、マイケル・ムーア監督の映画の中でも
展開されています。
 
 オバマ大統領は、選挙戦においてPACのお金を受け取らないことと、ロビィー
ストを廃止することを公約にして実践しました。一部の巨大な勢力に左右され
る政治ではなく、広く薄くインターネットで多くの国民から小額の献金を受け
ることで、本当の国民代表という姿勢を貫こうとしたのです。

 政治制度が違い、一概にどういう改革がいいか短絡的には言えませんが、公
開性・透明性・国民代表という視点でさらに改革を進めるべきだと私は思いま
す。

 政治資金規正法を所管する総務の責任者として勉強会を開催し、以下の3点
について提言を行いました。
 
1. 民主党としての徹底調査と説明責任・コンプライアンス義務の徹底
2. 新たな政治資金規正法改正を含めた改革の主導と前進
3. 民主主義の絶対条件である国家権力の行使の正統性と公平性の検証