自衛隊が導入するオスプレイの佐賀空港配備計画に関する質問主意書
平成二十六年七月二十二日、当時の武田良太防衛副大臣(以下「武田前副大臣」という。)は、佐賀県に対し、自衛隊が導入するオスプレイの佐賀空港への配備を要請した。
平成二十七年七月二十一日付の佐賀新聞は、本件の経緯に関する武田前副大臣へのインタビュー記事を掲載した。同記事の中で、武田前副大臣は、佐賀空港選定の経緯について、佐賀県に要請する一年以上前に佐賀県の経済人から、地域振興のため民間と自衛隊による佐賀空港の共同使用を求める打診があった旨述べており、この地元経済人の打診が、沖縄県に集中している在日米軍の基地負担軽減を模索していた政府に、具体的に佐賀空港を選ぶきっかけになった可能性があると報じている。
右を踏まえ、以下質問する。
一 自衛隊のオスプレイ配備の目的の一つは、島嶼部に対する攻撃への対処であると承知しているが、我が国の離島には、安全保障上どのような脅威又は懸念があると考えているのか。また、我が国の離島が他国に占拠されることも想定しているのか、その場合、どの国が我が国離島を占拠する懸念があると考えているのか。
二 前記佐賀新聞の武田前副大臣へのインタビュー記事における佐賀県の経済人からの佐賀空港の民間と自衛隊による共同使用を求める打診はあったのか。
三 佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備のため新たに取得する又は借り上げる予定の土地の場所及び面積、整備する予定の施設の種類及び規模並びに配備後常駐する予定の人員数について、示されたい。
四 国有提供施設等所在市町村助成交付金(以下「基地交付金」という。)の交付基準を具体的に明らかにされたい。
五 仮に、佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備に伴い施設が整備されたとして、当該施設は、基地交付金の交付基準を満たすか。
六 前記五において、当該施設が基地交付金の交付基準を満たしたとして、国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律の解釈等に照らし、基地交付金は実際に交付されることとなるか。交付されることとなる場合、その法令解釈上の根拠及びその額を示されたい。
七 基地交付金以外に、自衛隊の施設に関連して、当該施設が所在し、又は当該施設の周辺に位置する地方公共団体に対して交付される交付金・補助金等にはどのようなものがあるか。それぞれの名称及び根拠法令を示されたい。
八 仮に、佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備に伴い施設が整備されたとして、前記七の交付金・補助金等のうち対象となり得るものとしてどのようなものがあるか。
九 平成二十八年度の概算要求において、前記七の交付金・補助金等(基地交付金を含む。)の額の積算において、佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備は考慮に入れられているか。
十 佐賀空港を自衛隊と民間が共同使用することにより、米軍が訓練等のため佐賀空港を利用することはあるのか、米軍が保有するオスプレイが佐賀空港を利用することはあるのか、在沖縄米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設までの間の暫定的な拠点又は訓練移転の拠点として、米軍が保有するオスプレイが佐賀空港を利用することはあるのか、伺いたい。
十一 普天間飛行場への米海兵隊のオスプレイ配備に当たって、オスプレイの運用について、沖縄県を含め地元地方公共団体から、どのような要望があり、政府はこの要望を踏まえ、米側とどのような内容の合意を行ったのか、具体的に伺いたい。また、その中には、低空飛行訓練の実施、人口密集地域上空(学校、病院の上空を含む。)及び夜間における飛行等に関する事項も含まれているのか。これらのオスプレイの飛行に関する合意事項が遵守されていないと沖縄県民から指摘されているのではないのか。
十二 佐賀空港配備後のオスプレイの運用計画について、離着陸時を含む飛行経路、離着陸回数、滑走路使用時間帯、訓練空域及び低空飛行訓練の有無等について、具体的に説明されたい。また、米軍が保有するオスプレイが訓練等で佐賀空港を利用することを想定しているのであれば、米軍のオスプレイの運用計画についても、同様に具体的に説明されたい。
十三 自衛隊のオスプレイの佐賀空港配備後、前記運用の状況について公表するのか、また、公表を含め地元の要望を踏まえたオスプレイの運用に関する協定を佐賀空港周辺の地方公共団体と結ぶのか、伺いたい。
十四 佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備が、佐賀市で毎年開催されている佐賀インターナショナルバルーンフェスタに与える影響については、どのように考えているのか。
右質問する。
衆議院議員原ロ一博君提出自衛隊が導入するオスプレイの佐賀空港配備計画に関する質問に対する答弁書
一について
政府としては、我が国を取り巻く安全保障環窺が一層厳しさを増していることを踏まえ、島嶼部に対する攻撃に対しては、侵攻阻止に必要な部隊を速やかに機動展開するなどして侵略を阻止・排除することとしているが、我が国の防衛力整備は特定の国を対象として行っているものではない。
二について
御指摘の報道のような事実はない。
三について
お尋ねの「取得する又は借り上げる予定の土地の場所及び面積」や「整備する予定の施設の種類」については、検討中であり、お答えすることは困難であるが、防衛省では、佐賀空港に隣接する土地を陸上自衛隊に導入する垂直離着陸機V二二オスプレイ(以下「V二二」という。)等の配備のための最適な候補地として選定し、現在、七百人から八百人の隊員を配置することを前提として、当該候補地において約三十ヘクタールの施設整備等を念頭に置いた具体的な検討を進めているところである。
四について
国有提供施設等所在市町村助成交付金は、国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律(昭和三十二年法律第百四号)第一項の規定に基づき、国が所有する固定資産のうち、米軍に使用させている固定資産並びに自衛隊が使用する飛行場及び演習場並びに弾薬庫、燃料庫及び通信施設の用に供する固定資産で一定のものが所在する市町村に対し、毎年度、予算で定める金額の範囲内において、当該固定資産の価格、当該市町村の財政の状況等を考慮して交付するものである。
五及び六について
現時点において、佐賀空港へのV二二の配備のために整備する予定の施設が明らかでないことから、お答えすることは困難である。
七について
お尋ねの「地方公共団体に対して交付される交付金・補助金等」の意味するところが必ずしも明らかではないことから、一概にお答えすることは困難であるが、国有提供施設等所在市町村助成交付金以外に、防衛省が設置・管理している自衛隊の施設の周辺に位置する地方公共団体に対して交付される交付金・補助金には、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)に基づく障害防止工事の助成、住宅の防音工事の助成、移転の補償等、民生安定施設の助成及び特定防衛施設周辺整備調整交付金、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法(平成十九年法律第六十七号)に基づく再編交付金並びに国有資産等所在市町村交付金法(昭和三十一年法律第八十二号)に基づく国有資産等所在市町村交付金がある。
八及び九について
現時点において、佐賀空港へのV二二等の配備については調整中であり、自衛隊等の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の実態等が明らかでなく、また、当該配備のために整備する予定の施設が明らかでないことから、七について、で述べた交付金・補助金及び国有提供施設等所在市町村助成交.付金の対象となり得るかについてお答えすることは困難であり、また、これらの交付金・補助金についての平成二十人年度予算の概算要求においては、同空港へのV二二等の配備は考慮していない。
十について
お尋ねの「佐賀空港を自衛隊と民間が共同使用することにより」の意味するところが必ずしも明らかではないが、防衛省としては、陸上自衛隊に導入するV二二等の佐賀空港への配備が実現した場合、沖縄の負担軽減を日本全体で分かち合っていく観点から、米海兵隊による同空港の利用が行われることが望ましいと考えている。
当該利用については、主として、普天間飛行場に配備されている垂直離着陸機MV二二オスプレイ(以下「MV二二」という。)の訓練移転を想定しているが、いずれにせよ、同飛行場のキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣緩する水域への移設が同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるという考えに変わりはない。
十一について
政府としては、MV二二の普天間飛行揚への配備に際し、沖縄県をはじめとする地元の地方公共団体等からMV二二の安全性の証明等について要望されるなど、MV二二の安全性等に関して地元の皆様に強い懸念があったことを踏まえ、MV二二が実際に日本で飛行運用を行うに当たっても、その安全性を最大限に確保し、地元の皆様の懸念を可能な限り払拭できるよう、日米合同委員会(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)第二十五条1の規定に基づき設置された合同委員会をいう。)等の揚において様々な議論を行ってきた。
その結果、平成二十四年九月十九日の同委員会において、MV二二の運用に係る様々な事項について、安全性を最大限確保し、地元に与える影響を最小限にとどめる観点からの具体的な措置を定めた「日本国における新たな航空機(MV22)に関する日米合同委員会合意」を作成している。また、同合意には、MV二二を飛行運用する際の進入及び出発経路は、できる限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定すること、夜間訓練飛行は、在日米軍に与えられた任務を達成し、又は飛行要員の練度を維持するために必要な最小限に制限されること、低空飛行訓練に関しMV二二は、訓練航法経路を飛行する間、地上から五百フィート以上の高度を飛行することなどの内容が含まれている。
なお、MV二二の飛行状況については、政府として、防衛省の職員の目視による確認などにより把握に努めているところであるが、これまでのところ、同合意に違反しているものがあるとの確証は得られていない。
十二について
陸上自衛隊に導入するV二二等の佐賀空港への配備を実施した場合における離着陸時を含む飛行経路については、有視界飛行方式で飛行する場合はあらかじめ設定された場周経路を飛行し、計器飛行方式で飛行する場合は国土交通省が定めている航空路誌で示された経路に従い飛行することとなる。離着陸回数については、年間約一万七千回の離発着が行われるものと見積もっている。
なお、滑走路使用時問帯、訓練空域及び低空飛行訓練の有無等については、V二二等の運用の詳細が決まっておらず、現在検討中であるため、具体的なお答えをすることは困難である。
また、普天間飛行場に配備されているMV二二の訓練移転等については、現在、米側と相談しているところであり、お尋ねについてお答えすることは困難である。
十三について
お尋ねの「運用の状況」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。また、「地元の要望を踏まえたオスプレイの運用に関する協定」は、現時点では何ら決定されておらず、お答えできる段階にないが、関係地方公共団体の要望を踏まえつつ、適切に対応してまいりたい。
十四について
陸上自衛隊に導入するV二二等の佐賀空港への配備を実施した後においても、陸上自衛隊目達原駐屯地に配備されているヘリコプターの飛行と同様に、バルーン飛行エリア近傍における飛行を自粛し、佐賀インターナショナルバルーンフェスタの開催に影響を与えないようにしてまいりたい。