第8回 「アジアの祈り」
この夏、ミャンマーとカンボジアを訪れました。戦禍から立ち上がろうと懸命に努力を続けている人々を支えるNGO活動の支援・視察が目的でした。
地雷で傷を負った人たちに仕事を。食べるものも健康な生活にも恵まれない人たちに教育と医療を。農業と助け合いを学ぶことにより生活の安定を。日本のNGO活動はとても活発で感謝と感動に満ちていました。佐賀の地球市民の会の皆さんの活動も多くの輪を広げています。
ポルポト派による大量虐殺の傷跡は凄まじく、伝統の文化さえ破壊されています。日本の仏教会の有志が、失われた仏教文化研究の復興を支援しています。カンボジアのシュムリアップでは、早稲田大学と上智大学のチームがアンコール遺跡の修復を主導しています。
宗派や民族、国家の違いが多くの争いを招きたくさんの人たちが傷ついてきた歴史。バミアンの遺跡は、宗教の対立ではなく宥和を表象していて、祈りと感動に満ちていました。争うことではなく、調和すること。傷つけることではなく赦しあうこと。その表象を私たち日本人が復刻している姿には多くの感謝が捧げられています。
第2次世界大戦では、たくさんの人々が命を失いました。訪れたミャンマーのパゴタでは、この地で亡くなった全ての人を祀って慰霊を捧げています。佐賀出身の兵士の名前もありました。国籍を問わずに慰霊を捧げているのです。今でも日本から多くの人たちが肉親の消息をたずね慰霊を行なうために訪れておられます。
その傍らに日の丸を掲げた給水施設がありました。佐賀の溝上さんが作ってくださった給水施設です。飲み水に不自由する地域です。私が佐賀出身だと言うと尊敬と感謝の言葉を伝えて欲しいと言われました。
世界を回ると故郷佐賀の人たちの温かな活動に出会います。戦争と暴力。憎しみと怒りの連鎖。そこから抜けるために何をすればいいのか?武器ではなく教育を。地雷ではなく花を。連帯の絆と祈りを。祈りを捧げる同じ口で人を傷つけてはなりません。
写真上/農業についての集会にて、農業政策について語る会の一コマ
写真下/ミャンマーとカンボジアに視察に行った際の一枚。これは、パゴタの給水施設。
2007年12月号掲載