第10回 「佐賀弁―言葉の不思議 イスタンブールで聞いた佐賀弁」
佐賀弁はとても味わい深い言葉です。「どんどんどん」「きゅう(今日)のしゃあ(おかず)はきゃあ(貝)」など佐賀弁には独特のリズムがあります。「なんしよっと」など音便が多く、知らない人が聞けば「喧嘩しているように聞こえる」とも言われる佐賀弁ですが、言葉の一つ一つの由来を調べてみると、大きな歴史の流れや世界を感じることができます。
吉田兼好の随筆「徒然草」。佐賀の人が寂しい時に使う「とぜんなか」という言葉は、「徒然なか」で、無聊を意味する古語からきている言葉だと聞いたことがあります。
トルコ共和国のイスタンブールは、東西文化の融合の坩堝ともいうべき場所で、多様で美しい文化に出会える都です。同じ、ウラル・アルタイ語族に属するトルコ語は日本語と文法がとてもよく似ています。共通する言葉がいくつもあります。例えば、トルコ語で「イイ」は「良い」という意味ですし、「濃い」のことを「コユ」といったり、日本語との同音同義語は200ほどあると言われています。
佐賀弁では、「こゆか(濃ゆか)」といいますが、トルコ語と同じですね。天辺(てっぺん)も佐賀弁では「とっぺん」と言いますが、トルコでも「とっぺん」です。遠い都で佐賀弁と同じ言葉を聞いたとき、本当に世界は一つなんだと感激しました。「がばい(とっても)すごか(すごい)」素敵な体験でした。
世界を回ると様々な言葉に出会います。言葉は、相手を受け入れ理解したり、自分を伝えるための道具です。その国の言葉を何一つ知らなくても、自分の知りうる言葉を使い身振り手振りで話せば、通じるから不思議です。人間に共通のものを探し出す力が備わっているのか。言葉そのものに共通のものがあるのか。
民族や宗教、国家の違いを超えて遠くシルクロードを通して伝わった文化。佐賀の言葉の中にも世界と共通するものがたくさんあります。深まる秋、徒然なるままに佐賀弁を味わってみてはいかがでしょうか。
写真上/生活重視の政策を街頭で訴える一コマ。
写真下/地元佐賀市の「高木八幡ねじり浮立」の皆さんと自宅前にて。
2008年2月号掲載