第29回 「協働するための教育の真髄」
生まれつき全盲で20歳の辻井伸行さんが、米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝なさいました。このコンクールは、世界的演奏家を多く輩出して来たコンクールです。日本人としては初めてです。
演奏後「障がい者というより、一人のピアニストとして聴いてくれた」と喜びを語られたのが、心を打ちました。才能を発掘して、育んでこられたご両親らにも心からの拍手を送りたいと思います。 ひたむきで前向きな姿勢。「できないことが問題じゃない。できることが大事です。僕たちは、自分の中に眠る可能性を信じて頑張ります。」スウェーデンのサムハルという福祉企業体での友人の言葉を思い出しました。
社会システム・教育システムの基礎となるのが共生の哲学です。「学校教育の目的は個人が持つ能力や才能を社会のために育成すること」「常に変容する社会の中で生き延びられる力、自分で答えを見つけ出す力の育成」「デンマークで教育を受けた人たちは、仮に失敗したとしても、その本人をとがめる心性を持っていません。失敗をとがめる以上に、なぜ失敗したか、その過程を分析して対策を練り、新しい方法や制度を生み出していくことに努力していきます。」「とりわけ大学教育は問題に対する解答を教えるのではなく、問題を解決する方法を教える」ケンジ・スズキさんの本は示唆に富んでいます。全ての医療と教育が無料の国。大学入試がない国。数ヶ国語を話し、世界一幸福といわれる国。デンマーク。○×方式で正答を覚えさせる教育は、現状維持をのぞむ政権には都合のいいシステムです。
解決への答えを自らつくり社会を支える人材を育成しなければなりません。
アヘン戦争を見て列強に飲み込まれる危機感を抱いた佐賀藩。反射炉を築きあげた高い技術。そこには教育の大きな成果がありました。佐賀藩が作った四郎島・神ノ島の大砲台場の史跡は、石組みにして12段もの巨大な防衛施設です。独自のものを大事にしながら他の文化を柔軟に取り入れて止揚していく文化のすばらしさ。「問題解決を目指し協働するための教育の真髄」がそこにあります。
写真上/5月10日、大隈重信侯を偲ぶ大隈祭にて玉串奉典。
写真下/6月14日、フリー参観DAYに若楠小と高木瀬小を訪問。
2009年9月号掲載