第32回 「大事なものを尊重し育む哲学」
韓国は、かつては「近くて遠い国」とも言われました。
日本文化の解禁も1990年代後半になってからでした。ちょうどソウルを訪れたその日に、日本の人気アーティストのチャゲ&飛鳥さんのコンサートが韓国で行われていて、これが解禁を象徴する大きな出来事でした。2000年代になってからさらに交流は一気に加速しました。共同開催されたサッカーのワールドカップ。韓国ドラマに代表される韓流ブーム。
一旦、良いものに触れたら、それを後戻りさせることはできません。文化やスポーツの交流は、とても盛んになり、近くて遠い国は、本当のお隣の国になりました。言葉や国境の違いを乗り越えて芸術やスポーツは人々をひとつにします。佐賀と韓国との交流は古く、地理的にも近いこともあって多くの友情を育んできました。
メキシコ・オリンピックで初めて銅メダルを獲得した日本。その一員として活躍されたのが現サガン鳥栖GMの松本育夫氏です。松本氏は、選手として一流であるだけでなく指導者としても卓越しておられ、多くの人材を育んでこられました。今回、その功績が高く評価されてサッカー殿堂入りを果たされました。晴れのご受賞の日、私は東京で偶然、松本GMにお祝いを述べる機会を頂きました。今年の祭り鳥栖の激しい山車の上でもご一緒しました。サガン鳥栖の試合の応援は勿論ですが、不思議なご縁を感じずにはいられません。
現在のサガンの躍進の背景には松本GMを中心とした補強と強化があります。
怪我をしてブラジルに帰ったものの、帰り先がなくて途方にくれている選手を英断で獲得するなど「人を生かす」運営に余念がありません。日本人選手と同様に韓国やブラジルの選手たちも活躍できる基盤には、様々な違いを乗り越えて人として大事なものを尊重し育む哲学があると感じました。私たちも松下政経塾でサッカーを世界言語に匹敵する「交流の象徴」として学びました。松本GMを慕って選手が集まる理由が少しわかったような気がします。
寛容と教育
挑戦と友情
サガン鳥栖のJ1昇格もあと一息で達成です。佐賀にJを根付かせてくださった坂田先生の17番のユニフォームを着て、ベアスタで世界から見た佐賀を実感しつつ、懸命の応援を続けます。
写真上/9月13日、母校佐賀市城南中の体育祭を激励訪問。
写真下/9月6日、佐賀市役所前公園にて連合佐賀主催の列島クリーンキャンペーンに参加、市民と一緒にゴミ拾い。
2009年12月号掲載