第49回 「マイケル・サンデル先生との出会い」
「これからの『正義』の話をしよう」(早川書房)ハーバード大学のマイケル・サンデル先生から署名入りの本を戴きました。ハーバード大学でも最多の履修者数。先生の白熱の講義は、世界でも大きな共感の渦を巻き起こしています。
昨年、私も日本各地で講演を行いアメリカやアジアでたくさんの話をする機会をいただきましたが、そこで数人の方々にあなたの講演はサンデル先生に似ているねと言われました。不明にして私は、当時サンデル先生ご自身を知りませんでしたので似ているといわれても曖昧な返答をするばかりでした。
それが全くの偶然ですが、日本テレビの北野たけしさんの番組でご本人の模擬授業を受けることになったのです。テレビ局に入るなりに入り口でお会いしたのがサンデル先生でした。簡単な自己紹介をすましていろいろな話をしましたが、古くからの友人のようにとても気さくで話しやすい方でした。
哲学をする喜びを思い出すのに時間はかかりませんでした。学ぶ喜び、考える楽しさを改めて教えてくださいました。私たちが常識と考えているものにも陥穽があります。哲学を確立することで政治の座標軸も強固になります。
漠然と日々の生活で考えている疑問。自分は何処から来て何処へ行くのか?何故、生まれてきたのか? 生きるとはどういうことか?
いつしか佐賀の高校時代の倫理の教室の風景が蘇ってきました。
降り注ぐ神の愛アガペー、求める愛エロス。考えて考え抜いても答えは出てきません。倫理を教えてくださった小野先生は、自らも学生時代に大きな魂の飢えを感じてつらい嵐の時代を過ごした経験をお話しくださいました。生きるとは何か?葉隠・・・。狂い死なんばかりにつきつめて、その先にあるものは?
心の中に吹きすさぶ嵐に耐えながら思考の荒野を歩いても幾晩もの闇は晴れません。疲れ果てて訪れた石揖斐のほとり。新緑を縫って爽やかな風が吹いていました。有明の海を渡ってふく風です。楠の青葉から漏れてくる月の光の滑らかさを今でも忘れません。
写真上/2月7日、日本TVにて、マイケル・サンデル先生との2ショット。
写真下/1月23日、上峰町の消防出初式に出席。
2011年5月号掲載