第55回 「絶望を乗り越える希望の融資(グラミン銀行) ノーベル平和賞とムハマド・ユヌス博士」
ミャンマー(旧ビルマ)の寺院に佐賀の溝上さん寄付をされた井戸のお話を『世界から見た佐賀』でご紹介しました。戦争で傷つき亡くなった方々。日本兵。たとえ敵兵であろうとも丁寧に弔い祀り続けてくださる人々への感謝の気持ちのこもった寄付のお話しでした。
戦火に見舞われたミャンマー、カンボジアを回る中で私は、小さな社会的融資が人々の生きる希望を作っていることをみて感激しました。青々とした水田の緑。小さな商店。豚などの肥育。それを支える人々の祈りのようなものを感じました。「グラミン銀行」の試みです。このマイクロクレジット事業は、働き口のない人々に少額の融資を補償することで雇用を生み出す社会的試みでもあります。
目先の利益だけを目的とした投機のお金が世界を覆いつくし貧富の格差や紛争を生み出す原因を作っているのに対して、この試みは絆と生きる希望を作り出す仕組みです。この発案者であるバングラデシュ出身のムハマド・ユヌス博士と先日、お会いしました。世界的平和学者でもある博士は、ノーベル平和賞の受賞者としてもとても有名です。
博士は、九州大学などと連携して大震災に見舞われた東日本の復興・雇用と再生にこのグラミン銀行の仕組みを導入しようと考えて行動に移されています。博士の生まれ故郷、バングラデシュ。戦争と貧困、暴力と飢餓を乗り越えてきた国です。
2009年には、スマトラ沖地震による津波で大きな被害を受けました。私たちは水の浄化システムをバングラデシュ入れるなどして支援を行いました。佐賀の皆さんもたくさんご協力をいただきました。
延々と絶望と言う闇が続くように見える現実を変えてきたものは何か?平和の理想を実現するための原動力は何か?博士とお話をしていると暖かな愛の光に包まれていくのを感じます。
憎しみや恐怖の連鎖を断ち切り人々の希望を紡ぎだすものの本質を心に刻みたいと思います。
写真上/7月23日、九州大学で行われたモハメド・ユヌスさんの講演。
写真中/7月24日、鳥栖山笠会場にて。
写真下/7月31日、グランデはがくれで行われた「民主さが政治スクール」にて。
2011年11月号掲載