第24回 「もやいの心」
アフリカの中部に位置する国、ベナンは植民地だった国で、今でも公用語はフランス語です。自らの国の言葉が話せず、文化や教育が継承しないと貧しさが拡大してしまいます。識字率が極端に低く貧困の連鎖から抜けられません。
ビートたけしさんとその弟子ゾマホンさんは、ベナンに複数の「たけし学校」をつくって子どもたちの教育に力を注いでいます。私も日本から文房具をもって実際に学校を訪問しましたが、そこで出会ったのは同じ佐賀から日本語を教えに来ている若い青年でした。若い人たちが貧困との戦いに汗を流している尊い姿に大きな感動を覚えました。
急激な市場競争の激化と金融危機が新たな貧困層を生んでいます。その皺寄せはもっとも社会的に弱い立場の人を直撃しています。佐賀には「もやいもんにする」という言葉があります。これはみんなで分け合うという意味です。派遣切りや解雇によって職も住居も奪われた人たちが年を越せるようにと「派遣村」が作られましたが、その中心となったのはNPO「もやい」の皆さんでした。わざわざ遠く茨城からも歩いてきた方も。派遣村があることを知って自殺を思いとどまった方もおられます。
日本は世界の経済大国ですが、OECD加盟の先進国の中で貧困率がアメリカについで高い国でもあります。生活保護水準以下の生活をしているにもかかわらず、その8割の人は生活保護が受けられていないのが実態と言います。特に子どもの貧困の問題は深刻です。子どもは自分がどこに生まれるか選べません。子どもたちの未来を奪っている貧困の問題とも真正面から取り組まなければなりません。貧困は貧困の連鎖を生むからです。
豊かな穀倉地帯、玄海と有明という二つの宝の海、脊振山地など豊かな森林資源。その佐賀をも貧困の問題が直撃しています。人間が人間としての尊厳を持って安心して生きていけるセーフティネットが今こそ大切です。「もやい」の理想をもって再構築したいと思います。
写真上/2004年12月15日、ベナンにて。子供達の教育に力を注ぐゾマホンさんと。
写真下/日本から運んだ文房具で学ぶベナンの子供達。
2009年4月号掲載