第88回 太陽の国で佐賀の人たちに出会う
サッカーとカーニバルの国。ブラジルで行われたワールドカップは、世界中の人達を感動の渦に巻き込みました。ザック・ジャパンにサガン鳥栖の得点王の豊田選手らも選ばれるかと期待していましたが、それは次回の楽しみになりました。
ブラジルは、かつて日本からも開拓の夢をみて渡った人達を受け入れた国でもあります。今では自動車産業を中心にブラジルから働きに来ている人たちも少なくありません。「首都ブラジリアで建築の勉強をしたい。」一級建築士だった父は、小さな私にこんな夢を語っていました。
言葉の少ない父。私に語った夢らしい夢と言えば、これが唯一だったと思います。佐賀工業で学んだ友人の中にもブラジルに渡った人がいたようでした。
BRICSと呼ばれる台頭目覚しい新興諸国。Bはブラジルです。
私は総務大臣時代にペルーのリマでブラジルやペルー、チリなど6カ国の大臣らとリマ宣言の締結にこぎつけることができました。世界のTVの方式は、欧州と米国の二つの方式が支配的で科学技術先進国である日本方式を採用している国は、ごく僅かでした。
まだこれからTVが普及していく地域、すなわち南米やアフリカ、アジアを中心に日本方式を広げていこう。そのためには、まずはブラジルと共通方式をつくり世界にうってでるのだと私たちは努力を重ねてきました。
日伯方式・ISDB-T方式は、携帯ワンセグが使え、テレビ受信機がなくても携帯さえあれば、どこにいても安価で誰でもがテレビを見ることができる利点を持っています。
「太陽の国。美しい国。全ての人々に平等に降り注ぐ太陽の光のように情報と教育を行き渡らせたい。」
私がリマで多くの友人たちに発した言葉です。
リマ宣言をともに発したペルーのガルシア大統領は、松下幸之助さんの信奉者と言ってもいい方で、松下政経塾のこともよくご存知でした。初めてあったにもかかわらず意気投合。巨躯(きょく)を折り曲げるようにして頬ずりするような挨拶をされました。
リマでは、ペルー佐賀県人会を表敬訪問しましたが佐賀からきた大臣ということでとても喜んでくださいました。地球の裏側と言っていいほど遠い国です。その遠い国で大きな信頼を築いてくださっている方々がいらっしゃったから、リマ宣言のような画期的な協力関係が結べたのだと思います。
熱い国の熱い友情と遠く佐賀を離れてご活躍くださっている皆さんに心から感謝を捧げ帰国いたしました。
写真上)地上デジタル放送に関する国際会議
写真下1)リマ宣言締結
写真下2)サガン鳥栖観戦
2014年8月号掲載